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位相歪みは検知できる? U

グラフィックイコライザーの話題からの続きです。
なお、この話題は以前にもとりあげ過去録に収録してあります。こちらもお読み下さい。
私も、位相をずらした音源を作りました。ここです。これを体験してから以下を読んでもらうと内容がよく分かると思います。
このページの後半ではFIR型、IIR型 デジタルチャネルデバイダーでの位相歪みを議論しています。この辺りからです。

Re: グライコの接続位置位相歪み(タイトル変更)  投稿者:OM 投稿日:2011年 4月17日(日)22時33分30秒 ASさん

>グライコ使用による位相回転の問題なんて

私は、位相を合わせる必要が無いと思ってます(これも、マヤカシだと思ってます。)。

1.人間の耳が、位相を検出できる構造になっていないこと。

2.リスニングルームでは、反射による遅れが生じるため、スピーカーで位相が揃っていても意味がないこと。

が理由です(当然ですが、隣の素子からの信号と干渉して周波数特性が乱れる場合には、位相も大事です。しかし、周波数特性が思った通りになるので有れば、位相は関係無いと思ってます。)。

試しに、440Hzの矩形波を、合成してみました。

sin(ωt)+1/3*sin(3ωt)+1/5*sin(5ωt)+1/7*sin(7ωt)

の3ωt(1320Hz)の位相を、90度と180度回転した波形を合成して有ります。
全く違う波形ですが、同じ音に聞こえます。なお、掲示板が受け付ける形式にしたため、相当に圧縮されています。

それでも元の波形の特徴は保っていますので、目で見て全く異なる波形なのに、耳で聴いて同じ音になります。

もし、綺麗な波形で実験をしてみるなら、Audacity等で4つのオーディオトラックを作成して、各々のトラックに、

440Hz 0.5
1320Hz 0.166666666
2200Hz 0.1
3080Hz 0.07142857
の正弦波を作成します。
そのままミックスダウンすれば、矩形波に近い波形になります。
1320Hzの最初の90度分を削り取ってミックスダウン。
さらに90度分を削り取ってミックスダウンとすれば、3種類の波形が得られます。
ファイル1(3gp:14.0KB)
ファイル2(3gp:14.0KB)
ファイル3(3gp:14.0KB)

Re: 位相歪み 投稿者:AS 投稿日:2011年 4月18日(月)10時09分2秒 OMさん、どうもありがとうございます。

>>グライコ使用による位相回転の問題なんて、 私は、位相を合わせる必要が無いと思ってます(これも、マヤカシだと思ってます。)。

> 1.人間の耳が、位相を検出できる構造になっていないこと。


リスニングルームにグライコを導入する意義を述べたSS誌の特集「いい音のためのベストツール イコライザーのすすめ」での鼎談の中で、柳沢功力氏も『位相の回転が聴き取れるのかね?』との趣旨を語っていました。

> 2.リスニングルームでは、反射による遅れが生じるため、スピーカーで位相が揃っていても意味がないこと。

そうです!それです!無響室じゃないのですから、耳に届いているのは様々な方角からの反射波が複合した音ですからね。

Re: 位相歪み 投稿者:RS 投稿日:2011年 4月18日(月)11時33分11秒 RSです。
OMさん

>> 2.リスニングルームでは、反射による遅れが生じるため、スピーカーで位相が揃っていても意味がないこと。

ASさん

> そうです!それです!
> 無響室じゃないのですから、耳に届いているのは様々な方角からの反射波が複合した音ですからね。

そうですよね。そのことについては、私も

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/16phasedist.html

で、「耳元に 届く音は反射音と直接音の合成になりますから、様々な位相(特に高調波について)の音の合成ということになり、波形はかなり崩れているのではないかと推測されます。ということは、スピーカまでの波形をいくら正確にしてもあまり意味が無いと考えられます。」と書きました。少なくともスピーカで音を空中に放射する方法を使う限り、スピーカまでの波形をいくら正確にしてもほとんど意味が無い
ですね。

Re: 位相歪み 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月18日(月)22時55分23秒 皆さん

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/16phasedist.html

こちらの方で、位相が認識できるとの意見が有りましたので、やってみました。

【条件】
【疑似矩形波】
sin(ωt)+1/3*sin(3ωt)+1/5*sin(5ωt)+1/7*sin(7ωt)
【周波数】
基底波として、150Hz、440Hz、1000Hzを用いた。
【位相】
基底波であるsin(ωt)、および、第3、第5、第7高調波の位相を進めた。
連続音の途中で、同じレベルで折り返す様に波形を切り取ってリスニングを行った(*1:説明しにくいので、別途記載)。
連続音の途中で位相を変更することで、思い込みなどの影響をできる限り排除し、正確な測定を目指した。
また、左右を同時に進めた場合と、右側だけ進めた場合を比較した。
【リスニング】
左右の干渉を防ぐため、ヘッドフォンを用いた。

(*1)
各波形のピークを挟んで左右同じ幅を削り取ってます。
例えば、0.7〜1〜0.7の部分を切り取れば、90度進めたことになります。
これにより、「プチ!」を防ぐことができます(少しは鳴るんですけどね、、、)。

【結果】
左右を同じだけ位相を変更しても、認識は不可能でした。

右だけ進めると、ぼんやり聴いていると音量の差として知覚され、少し真面目に聴くと同じ音が2個所から聞こえるための音量差として知覚されます。

さらに真面目に聴くと、「中央(矩形波)+右耳(位相を変更した純音)」、ないしは、「左耳(矩形波)+右耳(矩形波+位相を変更した純音)」と知覚されます。

結果を以下の表にまとめます。

似た音を連続して聞いて差を聞き取るテストですので、通常よりは、相当に感度が高いと思います。しかし、良い方法を思い浮かぶまで、何度も繰り返して(嫌な)矩形波の音ばかりを聞いていたので、疲れて感度が落ちてます。

差し引きすると、ヘッドフォンによる通常のリスニングでは、下のテーブルより若干大きくずれないと聞き取れないと予想されます。

テーブルは、差を聞き取ることができた最小の位相進みで、「×」は180度進めても、聞き取れなかったことを示しています。

   150Hz 440Hz 1000Hz
1ω  45度   45度   90度
3ω  45度  180度    ×
5ω  45度  180度    ×
7ω  90度  180度    ×

【結論】
両チャンネルで同じだけ位相がずれても、何の問題も無い。

方チャンネルだけ位相がずれた場合には、聴感上の問題が生じる。

私の発言
>1.人間の耳が、位相を検出できる構造になっていないこと。
は、誤り。
m( 彡 )m
もし、片チャンネルだけ位相が大きくずれるシステムが有ったとしても、スピーカーで聴く場合には、反射波の影響で、ここまで大きな差は出ないと思われる。それよりも、左右の打ち消しによる周波数特性の乱れの方が、聴感に与える影響は大きいと予想される。

定位に関連が有るとは思われますが、純音、ないしは、純音に近い音に対する人間の定位が甘いこと、ヘッドフォンの定位はよくわからないことの2点が障害になって、はっきりとした結論は出せませんでした。

片チャンネルだけ位相がここまでずれるシステムが有ったら、その時点で欠陥商品ですね。ってことで、やっぱり、「位相が音に影響が有る」と言って高く売りつけている商品は、「マヤカシ」ですね。

聴覚の位相認識 投稿者:MK 投稿日:2011年 4月19日(火)00時47分28秒  
皆さん、こんにちは。

逆瀬川皓一朗さんのHPにも、人間の聴覚の位相認識の面白い実験があります。面白い回路もたくさんあります。

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kochan/workshop/welcome.htm

ご参考まで。

Re: 位相歪み 投稿者:志賀 投稿日:2011年 4月19日(火)12時00分42秒 OMさん

いつも面白い実験結果の紹介有難うございます。大旨理解出来ますが少し質問とコメントです。

>http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/16phasedist.html
> こちらの方で、位相が認識できるとの意見が有りましたので、やってみました。

http://www.jaist.ac.jp/library/thesis/is-master-2000/paper/mnishiza/paper.pdf

この論文の件でしょうか?

残念ながらリンク切れしていますが、さる科学技術大学の修士論文です。たしか、基音が250Hz 以下の場合、検知できるという内容だったと記憶しています。あくまで修士論文で定説となってわけではないと思います。

> 連続音の途中で、同じレベルで折り返す様に波形を切り取ってリスニングを行った(*1:説明しにくいので、別途記載)
> (*1)
> 各波形のピークを挟んで左右同じ幅を削り取ってます。例えば、0.7〜1〜0.7の部分を切り取れば、90度進めたことになります。これにより、「プチ!」を防ぐことができます(少しは鳴るんですけどね、、、)。

ちょっとこの意味が分からないのですが? 切り替えの瞬間の電圧が等しくなるように時間方向に切り取るという意味ですか?

なお、ご存じだと思いますが、3つの周波数までなら フリーソフトのwavegen

http://www.vector.co.jp/soft/win95/art/se097634.html

を使えば簡単にいろんな波形を作ることが出来ますよ。


>1.人間の耳が、位相を検出できる構造になっていないこと。は、誤り。

ちょっと整理しますと、いろんな形での位相遅れがありますが、検知出来ないと言われているのはモノラル信号や左右の位相は揃っている一定強度の連続音の場合だと思います。これは、聴覚の構造からうなずける話です。

一方、左右の位相差(時間差)は方向の検知の一部に使われているようで、連続音の場合でも方向感の違いとして検知されるようです。ただし、純音では難しいようです。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/soundimage.htm#realsound

次に、非定常音の場合はちょっと異なります。

互いに周波数が近い波束のような場合は、周波数に依存する位相遅れは群遅延として検知される可能性があります。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/groupdelay.htm

どの程度の遅延が検知されるかについては

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/distortion.htm#feeling

ここに書いたデータが参考になるでしょう。

また、周波数の離れた高調波を含む音の強度が時間的に変動している場合(衝撃音など)、高調波成分の位相が遅れるとスペクトル強度比も影響を受ける可能性があるので検知されるかもしれません。ただし、これについてはデータなど知りません。

> ・・・、左右の打ち消しによる周波数特性の乱れの方が、聴感に与える影響は大きいと予想される。

そうですね。ある雑誌でさる音響学者が変名で、3ウエイスピーカーのネットワークフィルターは、クロスオーバー付近でのディップの発生より波形が崩れないことを優先し同位相にすべきだと言う記事を見たことがありますが検証は全て主観に基づいておりはなはだ疑問に感じました。

Re: 聴覚の位相認識 投稿者:志賀 投稿日:2011年 4月19日(火)12時26分56秒 MKさん

>逆瀬川皓一朗さんのHPにも、人間の聴覚の位相認識の面白い実験があります。・・・

面白いサイトの紹介有難うございます。なかなか高度な内容ですね。

内容が多いので、該当するページがよく分からないのですが、

http://web.archive.org/web/20020602002255/www.omninet.co.jp/workshop/labortry/EL9510B.HTM

この辺りでしょうか?

Re: 位相歪み 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月19日(火)18時26分39秒 志賀さん

>切り替えの瞬間の電圧が等しくなるように時間方向に切り取るという意味ですか?

説明が悪くて、申し訳無い。その通りです。電圧の急変を防いで、ポップノイズを抑えています。

1kHzだけをやり直してみましたが、やっぱり、昨日は疲れてました。

   1000Hz
1ω  15度(2Sample)
3ω  50度(2Sample)
5ω  80度(2Sample)
7ω 100度(2Sample)

と、かなり高感度です。

しかし、似た音を連続して聞いて差を見つける実験ですので、通常よりも、相当に感度が高いと予想されます。

まあ、左右で位相が違うアンプが存在するとも思えませんので、問題は無いでしょう。後、どなたか、追実験をやって頂けませんでしょうか?

これまでの歪みの実験や、限界bitの実験は、一般に言われている事実や他の実験と整合性が有りますので問題無いと思います。

しかし、「右だけ進めると、ぼんやり聴いていると音量の差として知覚され、少し真面目に聴くと同じ音が2個所から聞こえるための音量差として知覚されます。」は、一般的とは言えませんので、証拠としては弱いです。追実験で同じ結果になれば、強い証拠となります。

>周波数の離れた高調波を含む音の強度が時間的に変動している場合(衝撃音など)、高調波成分の位相が遅れるとスペクトル強度比も影響を受ける可能性があるので検知されるかもしれません。ただし、これについてはデータなど知りません。

以前なら「おやすい御用」だったんですが、今のシステムだと少し工夫が必要です。ちょっとペンディングにさせて下さい。

MKさん

>下記に、このアーカイブがあります。

オリジナルを見つけました。

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kochan/workshop/welcome.htm

位相の実験

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kochan/workshop/labortry/el9510b.htm

も面白いですが、他にも色々と面白い記事が有りますね。

リスニングルームの設計は、かなり参考になります。

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kochan/workshop/labortry/design.htm

>もっとも重要な条件のひとつは、オーディオルームの音響容積をなるべく広く取りたい
真っ当にオーディオをやっている方は、ここに行き着くんですね。

知り合いで、筋金入りの真空管使いがいます。70年代にオーディオに関係の有る仕事をしていて、以後は別の職業なのに、未だに真空管アンプの注文が来るほどの筋金入りです。その方も、「最終的に音を決めるのは、部屋の空気容量だ」と仰ってました。

Re: 位相歪み 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月20日(水)01時57分18秒 志賀さん

>周波数の離れた高調波を含む音の強度が時間的に変動している場合(衝撃音など)、高調波成分の位相が遅れるとスペクトル強度比も影響を受ける可能性があるので検知されるかもしれません。ただし、これについてはデータなど知りません。

ヘッドフォンで実験してみました。用いたのは、音数が多く歪みも多く含むホテルカリフォルニアと、定位を見るのに都合の良いYesterdayです。

上手くセッティングしたシステムだと、両スピーカーの中央・若干後方の虚空にポールの声が定位します。

【実験条件】
【フィルター】
カットオフ周波数1kHzでロールオフが6db/Octのフィルターを用いて、各曲を低音と高音に分ける。
なお、分離した音を足してから元の音を引くと、ほぼ無音(下位1〜2bitが残るだけ)になることは、確認してあります。
【遅延】
高音側の曲の頭の部分を切り取ることで、相対的に低音が遅延した音にする。
【リスニング】
ヘッドフォン

【結果】
【ホテルカリフォルニア】
両方
10ms  幾つかの音が消えて聞こえなくなる。
50ms  ボイスにエコーがかかる(高音がきつくなる場面と、高音が無くなる場面有り)
100ms 明らかな遅延として知覚される。イーグルスがコミックバンドに落ちて、まるでチンドン屋。

右側だけ
10ms  ギターが右側に定位する。
50ms  ギターが左右2本に分離する。ボイスにエコーがかかる。
100ms 明らかな遅延として知覚される。

Yesterday
0ms   ポールの声は、額の上で定位する(これだから、ヘッドフォンは嫌い。)。
2〜10Sample 純音に近い連続音の場合には知覚可能だったが、定位も音質も、全く問題なし。
5ms   tやsの音が濁っている様な気がする(自信無し)。定位はしているが、ふらつく。
10ms  ポールの声は、定位せず。強いて言うなら、頭のど真ん中で歌うポールと、右耳に小声のポールの二人がいてる。
20ms  左耳と右耳から、別々にポールの声が聞こえる。右耳が若干小さな声に聞こえる。集中すると、右側が遅延していることがわかる。
50ms  明らかな遅延として知覚される。当然、定位はせずに、左耳と右耳は別の音が聞こえる。

純音や純音に近い音と自然音で、定位の認知様式が異なる可能性が有ります。しかし、関わる要素が多いため、どう考察すれば良いのかすら見えません。

Re: 位相歪み 投稿者:MK 投稿日:2011年 4月20日(水)05時35分37秒  

>グライコ使用による位相回転の問題なんて

流れをぶった切って済みませんが、パソコンでは直線位相FIRフィルタでイコライザーを実現しているようです

FIRフィルターの場合、原理的に位相回転が起きないので、そういうのを使ってるイコライザーを買うかプレイヤー付属のイコライザーを使うという手があります

http://pioneer.jp/carrozzeria/carrozzeria_x/lineup/rs-a9x_a7x/function_1.html
RS-A9X

http://www.realsoundlab.jp/professional/apeqproseries/
APEQ-2pro

Re: 位相歪み 投稿者:AS 投稿日:2011年 4月20日(水)12時18分59秒 MKさん

PCを使わない、従来のアンプを中心にしたオーディオシステムでは、接続する単体デジタルイコライザーの多くはIIRフィルターですからね。

dbx DriveRack シリーズ、Behringer DEQ シリーズ、Accuphase DG-48、RAMSA WZ-DE45/WZ-DM35 などをはじめ、ほとんどの製品がIIR。

それらのメーカーでは、コスト面での理由ではなく、IIRフィルターによる位相回転は通常の音楽鑑賞に影響しないと考えているからかもしれません。

Re: 位相歪み 投稿者:TSG 投稿日:2011年 4月20日(水)13時17分30秒
   
>接続する単体デジタルイコライザーの多くはIIRフィルターですからね

FIRタイプのデジタルイコライザは、ヤマハ、ソニーが製品化していましたな。ソニーはどの様にしたのかは知りませんが、ヤマハは専用のコンボルバLSIを起こしていたそうです。何でも4500MIPSだそうですが。確かAMQ−1という商品名でしたね。汎用LSIで構成する場合だとDSP56000辺りを複数個パラってタップ数を稼ぐ方法が有ります。その場合数十個から100個以上のDSP56000が要りますわなあ。

IIRは構成方法を考えても判りますがアナログ回路のシミュレートです。

其れと古い話ですがEQの挿入位置はPA等ではミキサーの出力に介挿します。イコライザのノイズフロアとイコライザ後段の利得配分のトレードオフになります。

FIR
投稿者:KZM 投稿日:2011年 4月20日(水)17時47分37秒  
ASさん

> それらのメーカーでは、コスト面での理由ではなく、IIRフィルターによる位相回転は通常の音楽鑑賞に影響しないと考えているからかもしれません。

いいえ、主にコストの問題です。

DEQ2496などでIIRで実現している機能をすべてFIRでやると、価格を10倍にしてもできるかわかりません。

インパルス逆特性によるFIR自動補正で十分なtap数は精精512~1024/chですから、これだけならまだ実現可能ですが、組み込みDSPでDEQのような多機能EQをすべてFIRでやるのは非現実的です。

どおりで 投稿者:MK 投稿日:2011年 4月21日(木)04時05分56秒  

>いいえ、主にコストの問題です。

RS-A9Xで25万、APEQ-2proで19万近くするのを見てびっくりしたんですが、IIRよりもコストがかかるんですね…

RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月23日(土)01時49分19秒  

以前、FIRは嫌いだと発言しました。

FIRが嫌いな理由は、

1.微分が取れない。

2.自然界に無い挙動(勿論、自然界の挙動をマネるFIRも設計可能ですが、普通はそんな設計にはしません。)。

の2つです。

ステップ入力に対する応答が、タップ数のSample後に跳ねます。この挙動が気にくわない。

>8192タップ/cHぐらいのタップ数を取れば、最後の跳ねも小さいので、聴感に影響は無いとは思います。でも、気にくわない(笑)。

IIRフィルターの挙動は自然界に存在するので、聞き慣れた音になります。

これに対して、FIRは自然界に無い挙動をさせますので、聞き慣れない音になると思われます。

見かけの数字が良くなっても、聞き慣れない(人工的なと言い換えても良いかと思います)音にするのが良いことなのかどうかが、疑問です。

さらに、反射のあるリスニングルームで、IIRフィルターの位相の回転が聴感に影響を与えるかどうかは、甚だ疑問です。

もし、IIRフィルターとFIRフィルターで聴感に差が無いのであれば、FIRフィルターを用いることは、金の無駄遣いとなってしまいます。

ただ、FIRフィルターに関しては、Jitterの様に露骨にユーザーを欺すための物だとは思ってません。

FIRが好きな方はFIRを使って、IIRが好きな人はIIRを使えば良いと思います。

>いいえ、主にコストの問題です。

ちょいと計算してみました。

10年ちょっと前に発売されたPowerMacG4が、ピークで約16GFlopsです。

16G ÷ 8096 (tap) ÷ 2(1tap当たりかけ算1回と足し算1回) ÷ 44100 ÷ 2(Stereo) ≒ 11.3 片チャンネル当たり、11Bandのグライコができる計算になります。

しかし、G4のレジスター構成から考えて8096tap分の係数を持ちきれないので、実際には、2〜3Bandが限界だと思います(既にG4のプログラムを忘れていて、きちんとした値を出せなくて申し訳無い。)。

今なら、数十ドル程度のCPUで、十分なバンド数のFIRフィルターを構成することができると思います(開発費を含めると、10万円近くするかな?)。

RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月23日(土)11時33分49秒  

失礼。96kHzで論じないといけなかったですね。16GFlopsの能力を全くロス無くつぎ込むことができたとして、5Bandが限界でした。

でも、位相直線性って、必要ですか?

「ミキシングの時には、必要かも」と思いますが、リスニング時には、さほど重要では無いと思うのですが。

Re: RE:FIR 投稿者:志賀 投稿日:2011年 4月26日(火)12時18分32秒  
OMさん

> でも、位相直線性って、必要ですか

位相直線性が失われると群遅延が生じるわけですが、実際に検知できるのかどうかよく分かりません。IIRとFIR フィルターを使ってブラインドテストをするとはっきりすると思いますが、見たことないですね。

自分では使ってないこともあり、恥ずかしながら、IIR型だとアナログフィルターと同じ位相のズレが生じることを知りませんでした。

よく雑誌や掲示板などでチャネルデバイダーやグライコなどに「デジタルフィルターを使っているので位相がずれず音像定位が格段によくなる」といったような記事を見かけることがありますが、こういう事実を知った上での発言なのかどうか疑わしいですね。 もし何も知らずIIR型を使っているなら期せずして思い込みが音質を支配することの証拠になりますね。


Re: RE:FIR 投稿者:AS 投稿日:2011年 4月26日(火)17時29分37秒    
志賀さん、OMさん、皆さん

> よく雑誌や掲示板などでチャネルデバイダーやグライコなどに「デジタルフィルターを使っているので位相がずれず音像定位が格段によくなる」といったような記事を見かけることがありますが、こういう事実を知った上での発言なのかどうか疑わしいですね。 もし何も知らずIIR型を使っているなら期せずして思い込みが音質を支配することの証拠になりますね。

本当にそうですね。

トーンコントロールやアナロググライコには「位相が〜」と難癖をつけながら、IIRフィルターのデジタルグライコの位相のズレには全く気づかずに「デジタルだから位相がいい!」と書いてある例も。

オーディオ評論界は既に堕落していますから、IIRの位相ズレに気づかない、あるいはそれを意図的に無視して評論している評論家は多いでしょうね。

まったく、オーディオというものは、思い込みの強い趣味ですね。そこから迷信や妄言が生まれる。だからこそ、科学的に客観性を持って判断・思考すること「も」重要になるのですが。

私の「位相歪み」の書き込みからここまで話題を発展させていただいて、大変嬉しく感謝します。

Re: RE:FIR 投稿者:KZM 投稿日:2011年 4月26日(火)21時03分5秒  
ASさん

> トーンコントロールやアナロググライコには「位相が〜」と難癖をつけながら、IIRフィルターのデジタルグライコの位相のズレには全く気づかずに「デジタルだから位相がいい!」と書いてある例も。

実際にそんな記述がありますか?

普段雑誌はまったく読まないもので、具体例を知りたいところです。

Re: RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月26日(火)23時41分37秒  
皆さん

以前、MKさんよりご紹介の有った、位相の実験

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kochan/workshop/labortry/el9510b.htm

ですが、ゲイン一定で位相だけ変化する回路をデジタルでシミュレートしてみました。なお、CDPlayerで言うところの10倍オーバーサンプリングで、シミュレート精度を上げています。

あまりの面白さに、一頻り遊んでしまいました(笑)。

処理前と処理後で、波形は全く違うのに、同じにしか聞こえません。

ヘッドフォンでの結果ですが、定位もちゃんと取れています。

今日はシステムを鳴らすことができる時間ではないので、明日、ちゃんとしたスピーカーで聴いてみます

Re: RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月27日(水)22時53分32秒  
皆さん

スピーカーで聴いてみましたが、定位も含めて、元の曲と区別が付きません。

是非とも、位相を回した曲を「評論家」を標榜する連中に聞かせて、意見を聞きたいものです(笑)。

Re: RE:FIR 投稿者:NS 投稿日:2011年 4月29日(金)00時32分23秒  
OMさん

> スピーカーで聴いてみましたが、定位も含めて、元の曲と区別が付きません。

定位について書きますが、何に比べての位相ですか。

位相とは基準があって、その基準との差(相対)があってこそ試験の意味があるので、両Chとも同じ条件で位相を変えてしまったら、位相ゼロではないですか。そうだったら定位は変わりませんよ。

以下に401Hz0dB、片チャンネルだけ0から360度位相をシフトさせた信号を用意しました。

http://www.filebank.co.jp/guest/norisuki/fp/5

パスワードはisooです。

みなさんもお聞きになってください。面白いですよ。

昔を思い出せば、カートリッジの結線を間違えてしまったり、SPケーブルのプラスマイナスを間違えたりしてあわてたことがよくありました。

Re: RE:FIR 投稿者:志賀 投稿日:2011年 4月29日(金)06時19分19秒    
OMさん

> スピーカーで聴いてみましたが、定位も含めて、元の曲と区別が付きません。

位相の回転について誤解している人もいるようなので確認と質問です。

確認

(1) 位相回転はもちろん周波数の関数としてですね?

(2) ステレオで聴いており左右の回転角は同じですね?

であるとして質問です。

回転角の周波数依存性はどうなっているんでしょう?

もし、dφ/df が一定なら、波形が変ってもオーム・ヘルムホルツの法則より音質変化としては検知できないはずね。問題は群遅延が検知できるかどうかです。


http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/groupdelay.htm#t-burst

ここの最後の部分に書いてある、「また、(5)式の与える群遅延時間は絶対値であり、全周波数範囲にわたってΔt が一定(即ち、位相遅れが周波数に比例して変化する場合)であれば、そこを時間の原点ととればよいわけで、聴感上は時間遅れとして感じない。」の通りです。

問題となるのは、dφ/df が一定でない(位相直線性がない)回転の場合です。この場合は、その大きさにもよりますが、群遅延時間が周波数により異なってくるので聴感に影響を与える可能性があります。

この件について、以前議論したことがあります。

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/16phasedist.html

NSさん、

この過去録の冒頭の投稿は確かNSさんのはずですよ!

ここにある「初期の権威ある文献には、この種の歪みは無視できる,と書いてある。」は多分オーム・ヘルムホルツの法則のことだと思います。


Re: RE:FIR 投稿者:NS 投稿日:2011年 4月29日(金)06時27分27秒  
志賀さん

>> この過去録の冒頭の投稿は確かNSさんのはずですよ!

定位に限定します。

Re: RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月29日(金)15時53分25秒  
志賀さん

>(1) 位相回転はもちろん周波数の関数としてですね?
>(2) ステレオで聴いており左右の回転角は同じですね?

はい、その通りです。

>回転角の周波数依存性はどうなっているんでしょう?

http://www7b.biglobe.ne.jp/~kochan/workshop/labortry/el9510b.htm

の「Phase Shifter」のCaptionが付いた図の回路のシミュレーションです。

上記サイトでは、

e0 = { (1 - jωCR) / (1 + jωCR) } e1

となっていますが、これはPhase Shifter図のオペアンプ1個分(62kと0.022μの部分だけ)の回路の伝達関数です。

カスケードにつないだPhase Shifter図全体の伝達関数は、

e0 = [ (1 - jωC1R1)(1 - jωC2R2) / { (1 + jωC1R1)(1 + jωC2R2) } ] e1 (式1)

となります。

C1R1をτ1、C2R2をτ2と置き換えて、指数を「^」で表記して、位相遅れΦを周波数の関数として書くと、

Φ = 2arccos( ω^2τ1τ2 / sqrt( (1 + ω^2τ1^2)(1 + ω^2τ2^2) ) )    (式2)

となります。

上記サイトの「Phase Shift characteristicsのCaption」の図の左側のグラフに示されている位相の遅れが生じます。

Phase Shift characteristics図のグラフは実測値ですが、式2から計算した値と非常に良好に一致しています。

>問題は群遅延が検知できるかどうかです。

残念ながら、群遅延をターゲットにした実験ではありません。

>波形が変ってもオーム・ヘルムホルツの法則より音質変化としては検知できないはずなのに、「デジタルフィルターを使っているので位相がずれず音像定位が格段によくなる」と変なことを言う人がいるらしいので、そちらをターゲットにした実験です。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/groupdelay.htm#t-burst

こちらで例として挙げてらっしゃる100Hzの近傍でΔΦを計算したところ、-0.000042Rad/Hzですので、群遅延の検証には使えません。

ここで、群遅延の検証ができる実験を考えてみました、、、、、【が】
CCIRの基準から、ラフに計算すると
   Hz  ms Rad/Hz Rad/Oct
   40  55  0.35   10.4
   75  24  0.15    8.5
14000   8  0.05  527
15000  12  0.08  848

となります。

なお、【Rad/Oct】の値の計算は、以下の通りです(40Hzを例に取ってます。)。
(0.35*20+0.35*40)/2

最後の1行が、オクトーバー当たりの許容位相遅れですが、一番値が悪い75Hzでも、2.7π/Octです。

これに対し、6db/Octの1次遅れフィルターの一番激しく位相の回転が起こる点(ポール)で、約0.11π/Octです。

つまり、25次のフィルターに相当するだけ位相が回ることになります(実際のフィルターだともう少し小さい値になると思いますが、何れにしても、非常識な次数になると思います。)。

「群遅延を起こしてやるんだ!」と強い意志を持って設計した場合でなければ、問題無いと思います。なお、強い意志を持ってチェビシェフとバターワースでチャレンジしましたが、2.7π/Octは達成できませんでした(笑)

Re: RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 4月29日(金)16時42分55秒  

少し訂正です。

>なお、強い意志を持ってチェビシェフとバターワースでチャレンジしましたが、2.7π/Octは達成できませんでした。

もっと強い意志を持って2.7π/Octを達成するだけのローパスフィルターを設計できたとしても、群遅延は観測できません。

なぜなら、それだけ位相が回転するローパスフィルターだと、群遅延を起こす周波数域は数百dbの減衰を起こしているはずなので、聞こえません。

Re: RE:FIR 投稿者:志賀 投稿日:2011年 4月29日(金)22時36分45秒  
OMさん

>「群遅延を起こしてやるんだ!」と強い意志を持って設計した場合でなければ、問題無いと思います。

> なお、強い意志を持ってチェビシェフとバターワースでチャレンジしましたが、2.7π/Octは達成できませんでした(笑)。

そのようですね。いわゆるアナログフィルターの場合かなり高次のフィルターでも知覚できるような群遅延は生じないようですね。

群遅延が問題になるのはやはりスピーカーシステムの場合のみで、特にバスレフの反共振周波数近傍での群遅延だけかもしれません。そうだとしても、スピーカーはいろんな歪みが存在するので群遅延だけ取り出して実験的に検証するのはむつかしそうですね。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/groupdelay.htm#SP

いろいろ面白い実験有難うございます。

Re: RE:FIR 投稿者:OM 投稿日:2011年 5月 1日(日)22時08分28秒  
申し訳無い、訂正です。

>ここで、群遅延の検証ができる実験を考えてみました、、、、、【が】

以降の文章を置き換えて下さい。
−−−−−ここから
CCIRの基準から、計算すると
   Hz  ms Rad/Hz Rad/Oct
   40  55  0.35    13.8
   75  24  0.15    11.3
14000   8  0.05   704
15000  12  0.08  1131
となります。

最後の1行が、オクトーブ当たりの許容位相遅れですが、一番値が悪い75Hzでも、3.6π/Octです。

これに対し、6db/Octの1次遅れフィルターの一番激しく位相の回転が起こる点(ポール)で、約0.11π/Octです。

つまり、34次のフィルターに相当するだけ位相が回ることになります(実際のフィルターだともう少し小さい値になると思いますが、何れにしても、非常識な次数になると思います。)。
−−−−−ここまで

さらに、

>なぜなら、それだけ位相が回転するローパスフィルターだと、群遅延を起こす周波数域は数百dbの減衰を起こしているはずなので、聞こえません



−−−−−ここから

なぜなら、それだけ位相が回転するローパスフィルターだと、群遅延を起こす周波数域は100db近い減衰を起こしているはずなので、聞こえません。
−−−−−ここまで
に訂正させて頂きます。

何れにしても、結論には変化は無いです。

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