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時計とオーディオ製品(機器の選び方)

以下はAFの掲示板に投稿した一文です。

時計とオーディオ製品 投稿者:志賀 投稿日: 2006年 1月16日(月)06時16分57秒

よくオーディオ製品をワインや車に例えて議論されることが多いのですが、ちょっと趣向を変えて(腕)時計に例えてみましょう。

私の知る限り、初期の腕時計の時間管理はひげゼンマイの振動周期を利用していました。材料はエリンバー合金という鉄とニッケルの合金で、弾性率の温度依存性が小さいからです。残念ながらこれは磁性合金で磁場に弱く磁石を近づけると狂ってくるのを記憶しておられる方もいると思います。(年がわかりますね)。その後水晶時計になりました。水晶の弾性率が温度のよってほとんど変わらないからです。このような製品が出来るようになったのはエレクトロニクスの進歩の成果で初期の製品は日本製が他を圧倒していました。精度は実用上は満足すべきものですがそれでも月差数秒が普通であり一般に精度が高いものほど高価ですね。その原因は主に水晶素子の時間精度のばらつき幅をどこまで小さくするかという品質管理上のコストが原因だと思います。さらに2個の水晶素子を用いるツインクォーツというのが開発され精度が1桁近く上がり年差数秒になりました。そして最近では、腕時計にも電波時計が採用され誤差は実用的には0と言っていいまでになりました。

この場合価格はどうかというと、新技術が取り入れられた直後は少し高くなり、また、ごく低価格の普及品は精度も価格に比例する面もあります。これは主に品質管理上のコストの違いだと思います。しかし、中級品以上となると価格と精度はほとんど相関がないように思います。ゼンマイ式で精度はお話しにならないものも宝石付きとかでうん百万するのもあるやに聞いています。

さてそこで、皆さんはどういう基準で自分の時計を購入するでしょうか? 私は商売柄精度と耐久性重視で国産S社のツインクォーツを使っています。ガラスがサファイアガラスで腕輪はSUS310ステンレス製で20年ほど前に購入し毎日使っているんですが現在も年差数秒で新品同様です
(最近は国産C社の電子式方位針や高度計機能がついたデジタル電波時計を使っています。これはもう一つの趣味であるウォーキングに大いに威力を発揮し気に入っています)。家内はゼンマイ時代のノスタルジーが強くスイス製 L 社の水晶時計を使っていましたが、良く故障をし、私の薦めで最近では国産に切り替えています。

一方オーディオ機器はどうでしょう。こちらの発達と現状は皆さまの方が詳しいので書きませんが価格と「性能」は必ずしも比例しないのはよくご存知だと思います。

さて、オーディオ製品の「性能」とはなんでしょう? 一つの基準は「高忠実度」ですね。多くの製品は「高忠実度」を売り物にしています。これは、測定である程度数値化することが出来ますが最近ではあまり公表しなくなりましたね(なぜでしょうか?)測定値など当てにならないという意見もあります。

オーディオ製品が時計と決定的に違うのは客観的評価が極めて難しいということです。時計ならアナログTVの時報と比べれば精度は一目瞭然です。しかし、オーディオ製品は「聴いてなんぼ」というのがオーディオマニアの基準のようですね。私に言わせればこれほど当てにならないものは無いということです。先入観の影響を受けやすく主観的感想にすぎません。それでもスピーカーは原理的に理想にほど遠く各種の歪みも人間の検知限を上回りベテランが聴いて判断するのが最もいいかもしれません。しかし、CDPのクロックを電波時計で修正すれば音が良くなるなどという話はちょっと考えれば先入観の影響以外の何者でもないということはすぐわかります。ケーブルの銅の純度を4Nから6N にすれば音が澄んで来るといった感想は専門知識のある私にはそんなことはあり得ないといえますが、これには量子力学をちゃんと理解していないと納得してもらえないかもしれません。これを実験的に確かめるのは厳密なブラインドテスト以外にないのですがご存知のようにこれは「タブー」ですね。もし素人のブラインドテストで差が出たとしたらこれはテストの方法に問題があると断ぜざるを得ません。
(これについては ここを参考にして下さい)

さて、私の考えですが、まずオーディオの目的を「家庭で演奏会の雰囲気を出来るだけ忠実に再現する」とします。この目的に沿うよう装置を選択する場合、最も効果的なのは時計の選択のように、使われている技術の原理を出来るだけ正確に知るということです。そして、少なくとも理屈の上ではこの程度の性能があれば十分と思われるレベルより、もう1ランク上の製品をねらえば良いのではないでしょうか?オーディオには心理効果は避けられません。だとしたら正確な知識に基づく心理効果を利用するのが最も賢明な方法でしょう。結構難しい面もありますが、少なくとも後で馬鹿な買い物をしたと後悔することは避けられるのではないでしょうか?
また、電源の極性の選択のように特にお金のかからない場合は理屈で良いと言われている方を選択するのが精神衛生上好ましいのは言うまでもありません。ただし、本文のあちこちで述べているようにスピーカーは例外です。なぜなら、これは元々不完全な装置でこれで十分という基準には届きません。いくら物理特性が良くても好みに合わないかもしれません。これだけは聴いて決めるより仕方がないでしょう。(この節一部改訂)

私のHPはすこし大げさですが専門知識を社会に還元するという目的で開示しています。もっとも、迷惑をしている人も多々あるとは承知していますが。

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