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LPレコード、カセットテープのプリ・ポストエコー

AudioBBSで話題となったLPレコードやテープのプリエコー、ポストエコーの音源を解説付きで掲載しておく。ファイルはWAVファイルで掲示板の投稿者から提供されたものです。

ここでのエコー時間の測定はフリーソフトAudacity (ここからダウンロード可能)により再生音を聴きながら特徴のはっきりした音を見つけ、該当個所の時間窓を狭めてゆき決定したものである。この方法だと比較する音の性質(継続時間など)にもよるが ±0.1秒から 0.05秒の精度で測定可能である。 残念ながらいずれの場合もエコー部のS/N 比が悪く波形を見て比較して決定するのは不可能であった。

カセットテープのプリ・ポストエコー(HDさん提供)

PC付属のスピーカーではエコー部は聴こえにくい。イアフォンまたはヘッドフォンで音量を上げて聴いてください。

カセットテープのプリエコー Pre-echo.wav ←ここをクリック

冒頭のピアノ音が真音の約1.3〜1.4秒前にかすかに聴こえます。曲の開始部が内側になって状態で長期間保存されていたテープ。エコー部の直径が正確に分からないがリールの径2.1cm として、テープ速度4.75 cm/sec から計算すると1.39秒となるはずでほぼ合っている。

カセットテープのポストエコー Post-Echo.wav  ←ここをクリック

最後のピアノ音が真音の約2.4 秒後に聴こえます。こちらは曲の始まりが最外周に保存されていたので(巻き戻さない状態)ポストエコーとして聴こえる。外周の径は3.6 cm ということで計算値は 3.6×3.14/4.75=2.38秒となり測定値と一致する。

LPのプリエコー(NGさんの提供)

ヘルムートヴァルヒャ/平均律クラビーア曲集vol 5 東芝EMI EAC-70196の冒頭部
pre-echoLP.WAV ←ここをクリック

不思議なことにプリエコーが2度聴こえる。つまり本来無音のはずの最外周の2本の溝にプリエコーが入っている。プリエコー部は32dB の増幅がかかっており、かなり大きく聴こえる。ノイズを低減するためローパスフィルターも掛けたあるそうだがやはり波形比較は無理であった。

測定法は冒頭の2連音(ソ、レ音?)に着目し、まずこの特徴がでるプリエコー部を探し出し大まかな位置を決め、次に2連音の第一音に照準を定め、時間窓を絞って決定した。このようにして時間差を±0.05秒程度の精度で測定できた。

その結果、最初のプリエコー:1.45秒、2つめのエコー:3.25秒、真音 5.05 秒

となり、かなり正確に1.8秒差(LP1周の回転時間 60/33.33=1.80)であった。間違いなくLP製作時に内周の溝からの影響で導入された音と考えて良い。NGさんによるとこのシリーズのLPの全てにこのようなプリエコーが観測されるそうです。

LPのプリエコー(BMさん提供)

プリエコーが話題となったきっかけのLPです。曲名は「カンターテドミノ」です。このLPには何カ所かプリエコーが観測されますが時間差はちょっと複雑です。それぞれの個所のWAVファイルをUpし私の解析結果を示しておきます。

冒頭部:preechoLPBM0001.wav  数値はこの部分の音が現れる時間を表わす。0001は0分01秒
オルガンの2連音で始まるが、よく聴くとやはりプリエコーが2度聴こえる。この場合は、最初のエコーの音はかなり小さい。
私の測定では、第1音の開始時間 0.6,-(1.7)-2.3- (1.8)-4.1 (数値はこの部分のファイルの開始からの時間(秒) ( )内は間隔)、第2音 1.4-(1.7)-3.1-(1.8)-4.9
2度目のエコーの方がはっきりしているので正確。つまりこの部分のエコー時間は1.8±0.1 秒 従って原因は溝間干渉と考えるのが妥当。

しかし、途中で現れるプリエコーはそうでない。
preechoLPBM1127.wav : 0.82-(1.05)-1.87 明らかに1.8秒より短く溝間干渉とは考えにくい
preechoLPBM1458.wav: 何回かプリエコーらしきものが聴こえるが時間測定は困難
preechoLP1549.wav: 0.20-(1.37)-1.57

このようにいずれも1.8秒とはかなり離れておりLP製作時に生じる溝間干渉によるエコーとは考えにくい。マスターテープでの磁気転写の可能性が高い。

といったところです。

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