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負帰還による音質劣化とディジタルアンプのDF


アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について 投稿者:SR 投稿日:2006年1月28日(土)00時36分7秒

アンプは、”負帰還を多くすると音質が悪く成る”と言われているのを聞きますがなぜ負帰還によって音質が悪く成るのか、どなたかお教え頂けないでしょうか?宜しくお願いします。

Re アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について 投稿者:志賀 投稿日: 1月28日(土)07時04分34秒
SR さん

あまり詳しくないんですが、これは昔ある外国の高名な技術者が言い出したことで現在も真空管アンプの製作者の間で信奉する人がいるようです。

一言でいうと、負帰還は忠実な再生を目指す場合は極めて有効な手段で、半導体アンプの場合は不可欠だと思います。ただし、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」で過剰にかけると発振するまでに至らなくてもリンギング(HP のスピーカの過渡特性の項にある図のような過渡歪み)を起こしたりする可能性があるので適正な量の負帰還をかける必要があります。

負帰還をかけないアンプは高調波歪みが多く、またダンピングファクターも小さく、忠実度という点では劣っていますが適当な量の高調波歪みがある方が「いい音」だと感じる人がいるかもしれません。これは主観の問題なので人それぞれと言うことだと思います。



Re: Re アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について 投稿者:SR 投稿日: 1月28日(土)17時10分6秒
志賀様

有り難う御座います。
私は、負帰還をした方がアンプの性能は良くなると考えていますが、最近発表に成ったデジタルアンプ(ソニーのTA-DR1)においても、無帰還で有ることが高性能の理由の1つである様な表現をしている例が有りますので、何らかの原因で、負帰還がアンプの特性を悪くする事が有るのか、考えています。

デジタルアンプにおいても、付加変動に対応する為には、負帰還を行った方が良いと思っています。
ソニーのTA-DR1に関して、無帰還とした事が全ての原因では無いかも知れませんが、全高調波ひずみ率が”0.15%”と、最新のアンプとは思えない様な悪い値に成っており、それを容認してまで、無帰還にした理由が知りたく成りました。

何か思いついたら、また書き込みを致します。
http://www.ecat.sony.co.jp/products/catalog/TA-DR1.pdf


Re2 アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について 投稿者:志賀 投稿日: 1月28日(土)18時25分18秒
SR さん

<デジタルアンプにおいても、付加変動に対応する為には、負帰還を行った方が良いと思っています。
ソニーのTA-DR1に関して、無帰還とした事が全ての原因では無いかも知れませんが、全高調波ひずみ率が”0.15%”と、最新のアンプとは思えない様な悪い値に成っており、それを容認してまで、無帰還にした理由が知りたく成りました。>


それは多分こういうことではないでしょうか

ご存知と思いますがいわゆる「ディジタル・アンプ」は大きく分けて2種類あり、一つはフルディジタルと称する1bit アンプであり、もう一つは PWM (パルス幅変調)方式のD級アンプです。後者は多くの場合入り口と出口はアナログなので、アナログアンプと同じように容易に負帰還がかけられるのに対し、前者はフルディジタルという看板をはずさないように負荷変動を吸収する負帰還をかけるのは技術的に難しいんではないかと思います。代表的なPWM アンプであるF社の製品のスペックを見ると全高調波歪み0.02% DF 200 となっておりアナログアンプとほぼ同じになっています。それに対しフルディジタルアンプにはDFのデータは載せていないと思います。私は高調波歪みよりこちらの方が気になります。


Re: Re2 アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について 投稿者:HD 投稿日: 1月29日(日)11時48分50秒

ちょっと外れるかも知れませんが、1bit アンプの場合スピーカに入力する前のD−A変換はどうなっているのでしょうか。 簡単なローパスフィルターだけではないと思うのですが。
このあたりが歪率やDFもこれに関係するのではないでしょうか?

Re3 アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について 投稿者:志賀 投稿日: 1月29日(日)13時54分29秒
HD さん

公表された資料だけでは詳しいことはわかりませんが、PWM 方式のF社の技術資料を読む限りLCフィルターのようですね。ただし、無負荷時のLC共鳴発振を抑えるために15kΩの抵抗がパラレルに入れてあるようです。コンデンサーは特に低損失のを使っているとのことです。ディジタルアンプの場合、歪みの最大の原因は信号と相関した電源電圧の変動だそうで、この対策も含め、LPFの前後からアナログフィードバックをかけて低歪み高DFを実現しているんだそうです。フルディジタルの場合はこの辺をどうしているのか知りたいものです。

デジタルフィードバック 投稿者:志賀 投稿日: 1月30日(月)18時21分9秒   引用
NSさん

<フルデジタルといっても、ΔΣはデジタル負帰還。ダンピングファクターとの関連はわかりません。TA-DR1は電力増幅段は無帰還でしょうが、電圧増幅段は無帰還ではありません。>

具体的になりますが、こちらの1bit デジタルアンプについては比較的詳しく説明してありますね。

http://www.sharp.co.jp/products/smsx300/text/p02.html

やはり、電源電圧変動に起因する歪みをデジタル負帰還で抑えるようです。
ローパスフィルターの後はオープンのようなのでダンピングファクターはあまり大きくできないと思いますが?



アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について(その2) 投稿者:SR 投稿日: 1月31日(火)23時51分19秒
”アンプが、負帰還を多くすると音質が悪く成る”理由を、考えて見ました。音質が悪くなる理由として、以下の3つが有ると思います。(トランジスタ・アンプに対しての考察です。)

(1)アンプの増幅度の変化
増幅度が変動しても、負帰還によってアンプの増幅度は一定に保たれますが、アンプの元の増幅度が変化すると、信号の位相が動いてしまい、歪みが発生すると思います。増幅度が変化する要因として、バイアスの変動と電源電圧の変動が考えられます。ほとんどのアンプは、最終段の電源を安定化していませんので、負荷電流が変動する事で、電源電圧が変動します。(A級アンプの場合はB級にくらべ変動がずっと少なく成ります。)

変動幅は、使用しているトランスによりますが、普通の音量(設計者が想定した音量)で再生して居る場合に、10%ほどに押さえる設計をしていると思われます。しかし、バイアスの電源には安定化された電源が使われる事が多く、高性能を狙ったアンプでは、定電流回路を付加しているので、負荷変動は、バイアスにほとんど影響を与えないと思われます。

電源電圧の変動による、増幅度の変動も信号の位相を変動させますが、バイアスの変動に比べて影響が少ないので、それほど大きな歪みは発生しないと思われます。

全体として、アンプの増幅度の変化による歪みは、敏感な人のみに解る程度(−60db)から、全く解らない程度(−80db)の歪みに成る様に設計しているのではないかと思います。
(−60db=0.1%、−80db=0.01%)

(2)高増幅度に伴う誤動作
多量の負帰還を行う為には、元の増幅度も大きくする必要が有りますが、アンプの増幅度が、30dbを超えた辺りから、GNDや電源の共通インピーダンスによって、歪みが発生しやすく成ると思われます。 ここで発生する歪みは、負帰還そのものを歪ませるため、負帰還での改善が望めません。発生する歪みは、信号にジッタを与える場合も有りそうです。この場合、測定方法によっては、高調波歪みには、ほとんど現れない可能性が有ります。

回路パターン等、実装の設計如何によって、大量の歪みが発生する可能性も有り、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」とは、この影響の事ではないかと思います。

(3)スピーカーの起電力による誤動作
B級及び、AB級アンプでの話に成りますが、B級領域で動作している場合に、スピーカーからの起電力を、押さえる事が出来ない事が有りそうです。例えば、出力±3VまではA級動作をし、それ以上の電圧領域ではB級動作をするアンプを考えた場合、仮に出力電圧が、サイン波、ピーク値5Vとします。このサイン波がスピーカーに与えられると、信号電圧よりもすこし遅れてスピーカーの振動板が動作すると考えられます。

サイン波が、ピークを過ぎた後も、スピーカーの振動板はオーバーシュートする為、5Vよりも高い電圧がアンプの出力に掛かります。この時に、負帰還は出力電圧を下げる方向に作用しますが、実際には、+側のトランジスタのベース電圧が少し下がるのみで、出力電圧は下がりません。
スピーカーの振動板はオーバーシュートを終えて、元に戻り初めると、今度は、負の電圧を発生してアンプの出力を下げようとします。この時に、負帰還によって、+側のトランジスタのベース電圧が下がっていますので、そのベース電圧で決まる出力電圧まで下がり、その後、負帰還により正しい電圧に戻されます。このようにして、信号とは異なった電圧がスピーカーに与えられる事になると思います。

スピーカーの発生する起電力は、それほど大きく無いと思いますが、可能性として、このような動作をすると思います。

また、ほとんどアンプはAB級ですので、通常の音量では、A級動作をしていて、このような現象は起きていないと思います。

最近の設計では、パワーアンプは、電圧増幅と電力増幅の2段構成として、電力増幅段の元の増幅度を10db程度にして、負帰還によって増幅度”1”程度にする事で、スピーカーからの、起電力の影響を少なくしているのではないかと思います。

以上の考察から、A級アンプは歪みに対して大変有利で有ると思いましたが、スピーカーの設計者が、B級アンプを前提に設計している場合には、そのスピーカーは、B級アンプで動作させた方が、設計者の意図に沿った音を出すと思われるので、A級アンプが全てのスピーカーに対して、最善のアンプとは成らないのかも知れません。

Re アンプの音質が負帰還によって悪くなる理由について(その2) 投稿者:志賀 投稿日: 2月 1日(水)09時44分7秒
SP さん

正直アンプの実際の回路についてはあまり詳しくないので私からはあまりコメントすることはありません。おっしゃっていることはそうかもしれませんが私には量的に確かめる知識も手段も持ち合わせていませんので詳しい方に譲ります。

ただ最後のサイン波を出力したとき、スピーカーの逆起電力によって本来の出力電圧より大きな電圧が出力端子にかかるというのはちょっとうなずけませんね。振動板の慣性力による逆起電力は電気的には要するにスピーカーのインピーダンスの上昇として現れるわけで、これによる電圧変動を抑える(定電圧駆動にする)ためにこそオーバーオールの負帰還(高ダンピングファクター)が必要なんではないでしょうか?

この問題は負帰還を掛けるとスピーカーの逆起電力? によりアンプの動特性が悪くなるという理論があり一部の真空管アンプの使用者には信奉されているようだがはっきりしたデータがあるわけでもなさそうで、最近はあまり問題にされなくなっているようだ。少なくとも忠実度という点では負帰還アンプが有利であるが、実際の音となると主観の問題なので何とも言えない。

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