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音響計測

オーディオを科学するには測定が不可欠である。特にスピーカーの特性、部屋を含めた音響特性は完全でなくとも是非一度はチェックしておきたいものである。この問題は以前にも取り上げたが、ここでは最近比較的安価に入手可能になった無圧縮録音が可能なICレコーダーをマイク代わりに使う方法、FreeSoft WaveSpectraでスイープ信号を使って解析するときの注意点、さらにMLS信号を使ってインパルス応答と同等の情報を得る方法を採り上げる。

ICレコーダーの活用

Re: Re 完成度 投稿者:KZM 投稿日:2009年 4月 1日(水)00時07分49秒  
志賀さん

>最近売り出されているPCM録音対応の高性能ICレコーダーは素人でも安心して使えるのでお薦めです。入力レベルは液晶のレベルメーターが付属しており、データーを直接USBケーブルまたはSDカードから読み取れるのでマイクの性能さえよければ信頼性の高い計測用マイクとして「安心して!」使えます

これはあくまで"マイクの性能がよければ"の話ですが、通常ICレコーダはそのまま測定用途には使いません。内蔵マイクは音楽録音あるいは取材用に適した周波数特性をつけていることが多く、補正係数を割り出すのも困難ですから周波数特性はあてになりません。歪み率だけなら多分大丈夫でしょう。まともに測定しようとすると外部に測定用マイクを用意することになります。

群遅延特性や累積スペクトラム応答などの基本特性を見ようとすると発信部と受信部をリンクさせる必要があることから、個人的には少々の投資(新品なら〜3万円)をして測定用マイク+良質なファンタム電源付きIF+PCソフトの使い方を理解して使いこなすことをお勧めしています。

> 過渡特性も、いわゆるインパルス信号の解析で可能で、そのためのPCソフトもあるようですが、ちょっと素人では難しそうですね。

道具を入手するのは難しくない以上、あとは勉強次第でしょう

測定用マイク 投稿者:志賀 投稿日:2009年 4月 1日(水)06時30分2秒  
KZM さん

>>最近売り出されているPCM録音対応の高性能ICレコーダーは素人でも安心して使えるのでお薦めです。・・・

>これはあくまで"マイクの性能がよければ"の話ですが、通常ICレコーダはそのまま測定用途には使いません。内蔵マイクは音楽録音あるいは取材用に適した周波数特性をつけていることが多く、補正係数を割り出すのも困難ですから周波数特性はあてになりません。歪み率だけなら多分大丈夫でしょう。まともに測定しようとすると外部に測定用マイクを用意することになります。

はい。それはおっしゃる通りで最も気になるところです。マイク感度の周波数特性を公表していることや、フィルターレスの録音モードがあることが条件になりますが、これが殆ど無いですね。Sony のPCM-D50 というのは借用した物ですが、ちょっと低音感度に難がありました。

http://www.roland.co.jp/products/jp/R-09/index.html

これならかなり行けそうですが、ちょっとお高いですね。今狙っているのは

http://www.kenwood.co.jp/j/products/home_audio/personal/mgr_a7/recoding.html

これで、かなりいい線行っているように思います。もちろん必要なら、外部マイクも使えます。

いずれにせよ、初心者が手軽にという条件での話です。通常の方法では、少なくともレベルをモニターする必要があると思います。私は、現在オシロで波形をモニターしていますが、その経験から、モニタリング無しで、初心者がまともなデータが出せるか少々心許ないですね。特に、歪み率の測定などはレベル調整がかなり重要のようです。

ともかく、「科学的」オーディオを目指すなら、定在波の検出、ベストポジション探し、サブウーファーの設定などは是非やってほしいところですね。

Re: 測定用マイク 投稿者:KZM 投稿日:2009年 4月 1日(水)18時52分2秒  
志賀さん

>マイク感度の周波数特性を公表していることや、フィルターレスの録音モードがあることが条件になりますが、これが殆ど無いですね。

ICレコーダにも用途があり、取材用のものはあまり中身が見えませんが音楽録音用のものはマイクの性能を公表しているものが多いでしょう。

>Roland R-09

これは値段の割りにノイズが多いという欠点があり、あまり評価していません。(R-09HRはまし)利点は本体が小さいところ。

>MGR-A7  これで、かなりいい線行っているように思います。もちろん必要なら、外部マイクも使えます。

内蔵マイクを使うならこれも及第点と思います。(50Hz〜16kHzで)

ここで言う外部マイクというのはファンタム電源に対応した測定用マイクのことです。これはプラグインパワーマイクのみ対応です。実はプラグインパワーマイクでも測定用途に使えるものを用意することはでき、ECM8000等よりも優れたパフォーマンスを発揮します。これはかなり工夫が必要なのであまり一般向けとは言えないのが残念なところです。

> いずれにせよ、初心者が手軽にという条件での話です。

お手軽に、しかも測定用マイクでということならば ZOOM H4 + BEHRINGER ECM8000(直挿し)とするとMGR-A7と同等の値段で済みます。IFとしても使えますから、少し知識をつければループ測定ができます。 まったく無知ではどうしようもないでしょうが、志賀さんの言うところの「初心者、素人」とはどの程度の技術力を想定していますか?これらの言葉がたまに出てきますので、この際ある程度はっきりした見解を示して頂いた方がいいと思います。

>通常の方法では、少なくともレベルをモニターする必要があると思います。私は、現在オシロで波形をモニターしていますが、その経験から、モニタリング無しで、初心者がまともなデータが出せるか少々心許ないですね。特に、歪み率の測定などはレベル調整がかなり重要のようです。

ADCに過大入力があると壊れるまで行かなくても多大なスプリアスを発生します。マイク、アナログ回路にも適切なレンジがあります。測定(録音)時には測定系のダイナミックレンジを確保してクリップしないレベルを事前に確かめることは必須です。
そういう意味では、16bitフルを測定したければ測定系は24bitであるべきです。

Re2: 測定用マイク 投稿者:志賀 投稿日:2009年 4月 1日(水)23時20分21秒  
KZM さん

>お手軽に、しかも測定用マイクでということならば ZOOM H4 + BEHRINGER ECM8000(直挿し)とするとMGR-A7と同等の値段で済みます。IFとしても使えますから、少し知識をつければループ測定ができます。

なるほど、これはいいかもしれませんね。検討してみます。有難うございます。

それから、ICレコーダーにこだわる理由は近々外で録音したいイベントがあるからです。この際、計測用にも使えるものを手に入れようかと考えているところです。


>まったく無知ではどうしようもないでしょうが、志賀さんの言うところの「初心者、素人」とはどの程度の技術力を想定していますか?これらの言葉がたまに出てきますので、この際ある程度はっきりした見解を示して頂いた方がいいと思います。

いえ、それほど深く考えているわけではありません。むしろ、このやりとりを見て自分に適当な方法を選ばれたらいいんでないでしょうか? 強いて言えば、オシロでモニターできる環境でないとマイクだけではちょっと心許ないですね。

スイープ信号の問題点

スイープ 投稿者:HD 投稿日:2009年 4月22日(水)16時02分43秒    

PCの諸性能にもよると思いますが、FFTで(同じ窓関数で)分解能を上げるためにサンプル数を増やすと周波数が上がるのにつれてスペクトルの高さが減って行きます。 例えば44.1KHz/16bitの正弦波を20Hz〜8KHzを窓関数ハニングで3分間スイープした場合、レベルメータはこの間-10dBで一定(振幅は変らない)ですが、
サンプル数 32768では 8KHzは20Hzの時の約-15dB、 (-3dB/Oct, 但し500Hz以上で)
サンプル数 65536                  約-21dB (-3dB/Oct, 但し200Hz以上で)
サンプル数 131072                   約-28dB (-3dB/Oct、最初から)

と言う事で、正弦波スイープで妥当な時間でほぼ正確なデータを得る為には、それなりの信号のファイルなりCD−Rを作る必要があるのではないでしょうか?

ピンクノイズやホワイトノイズの方が使いやすいとも思うのですが、いかがでしょうか?

RE: スイープ 投稿者:TS 投稿日:2009年 5月 1日(金)00時32分20秒 HDさん

正弦波スイープをFFT分析するとフラットな特性にはならない気がします。 3分間のスイープでの波形の変化全てが周期関数として解析されますので...

正弦波スイープで測定する場合は、トラッキングフィルタを通し各周波数点でのレベルを見ていけば良いのでは?

音響計測の場合はoct分析が一般的ですが、これを正弦波スイープで測ることはあまりありません。普通ピンクノイズが低域から高域までのSNを維持するのに有利ですので、これを使うようです。

ただ、ピンクノイズは定常信号ですのでFFT分析に適していますが、あくまでもノイズですので、スペクトルも振幅もランダムに出現します。その為精度を上げるには、アベレージングを行い、値を収束させる必要があります。ですのでその分時間がかかります。

RE: スイープ 投稿者:HD 投稿日:2009年 5月 1日(金)08時35分51秒  
TS さん:

> 正弦波スイープをFFT分析するとフラットな特性にはならない気がします。 3分間のスイープでの波形の変化全てが周期関数として解析されますので... 正弦波スイープで測定する場合は、トラッキングフィルタを通し各周波数点でのレベルを見ていけば良いのでは?

矢張りそうですか。 今までサンプル数をそれほど高く取らなかったのでほぼフラットと思ってましたが、最近の話題でサンプル数を増やすと「あれれ」と思ったわけです。

> 音響計測の場合はoct分析が一般的ですが、これを正弦波スイープで測ることはあまりありません。普通ピンクノイズが低域から高域までのSNを維持するのに有利ですので、これを使うようです。

> ただ、ピンクノイズは定常信号ですのでFFT分析に適していますが、あくまでもノイズですので、スペクトルも振幅もランダムに出現します。その為精度を上げるには、アベレージングを行い、値を収束させる必要があります。ですのでその分時間がかかります。

今の所ホワイトノイズを使う方が多いのですが、収束させるのに3分位かけてます。以前にも書きましたがピンクノイズの方がTWには安全でしょう。

Re: スイープ 投稿者:TSS 投稿日:2009年 5月 1日(金)22時32分33秒 HDさん

自分も周波数特性を取るのに苦労した経験があるので書かせていただきます。

WaveSpectraなどでサイン波をスイープする際は「Logスイープ」(対数的に高域ほどスィープする速度が上がり、対数目盛りでは一定の速度でスィープしているように見える)ではなく、「リニアスィープ」というリニアに周波数を上昇させてスィープさせる方法だと-3dB/octとならずに良好に観測出来るようです。

HDさんの測定でも明らかなように、FFTでは完全にランダムな信号は扱い辛くピンクノイズでは長時間の測定が必要という問題があると思います。
ですので最近の測定ツールでは、周期性を持ち完全に決定的であるけれども広いパワースペクトラムを持つ、MLSという信号を使って短時間に周波数特性と位相特性を同時に測定してしまう方法が流行っているようです。実際ほんの数秒で測定できてしまいます。

有名な測定ツールとしてはARTA(ソフト)、CLIO(ソフト+ハード込み)などがあるようです。

RE2: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 3日(日)05時47分16秒    
HD さん、皆さん:

>PCの諸性能にもよると思いますが、FFTで(同じ窓関数で)分解能を上げるためにサンプル数を増やすと周波数が上がるのにつれてスペクトルの高さが減って行きます。・・・・・

私も確かめてみました。WaveSpectraで解析するとその通りですね。

勾配はサンプル数が多いほど大きくスイープ時間にはあまり依らないようですね。ただ、サンプル数8192 では1kHzくらいまではフラット、それ以上で落ちてくるようですが長時間スイープだとその折れ曲がり周波数が少し上昇するようです。(添付図参照)

Audacity のFFTでもやってみましたが、やはり勾配がつきますが、こちらの方はサンプル数を十分小さくしてもほぼ同じ勾配がつくようです。

原因はFFTソフトのアルゴリズムの違いにあるようですが素人にはよく分かりません。

それから、以前WaveSpectraでホワイトノイズを解析すると超低域でレベルが持ち上がる傾向があると言いましたが、直接 テストCDからホワイトノイズを解析するとそのような傾向は見られず、スピーカーの音をマイクで拾って解析する時見られた傾向は別の原因によるもののようです。

Wave Spectra,Wave Gen
投稿者:IA 投稿日:2009年 5月 5日(火)23時47分51秒

既にご存じの方がいらっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが、作者のefuさんがWAVEGENおよびWAVESPECTRAの使い方についてまとめてくださいました。

http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/soft/ws/fresp/meas_fresp.html
http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/soft/wg/fresp/meas_fresp.html

これから測定される方は参考にされると良いと思います。

Re Wave Spectra,Wave Gen
投稿者:TSS 投稿日:2009年 5月 6日(水)09時50分37秒    
IAさん、みなさん

FFTのスイープ時間の目安については、リンク先のように作者の方がきちんと書かれていたんですね・・・

スイープ時間 = スイープ周波数幅*N*N/Fs/Fs

最近こちらの話題になっている、天井〜床間の70Hz付近の低周波の定在波などを観察するために、仮に測定したい帯域を1Hz〜200Hzの概ね200Hz程度、周波数分解能を確保するためN=32768(分解能1.46Hz)としてみると

スイープ時間 = 200Hz*32768*32768/48000/48000=93.207sec

と、概ね100秒掛けてスイープしないといけないのかな?・・と判断できるように思います。

Re: Wave Spectra,Wave Gen 投稿者:HD 投稿日:2009年 5月 7日(木)09時06分55秒
TSS さん:

外国の例ですが、1Hz毎に上昇する正弦波のテストファイル(MP3)がダウンロードできます。

http://web.archive.org/web/20160804014952/http://realtraps.com/test-cd.htm

1Hz(10秒)毎に上昇する信号で、10Hz〜300Hzまで計るのに30分かかるでしょう。

一方、最近の自動補正のDSPなどで使われるM系列ノイズ(含むMLS)はインパルスと言われる位短時間で測定できるとの事なんですが、理論は兎も角、実際の測定精度の比較データはあるのでしょうか?

また、自作スピーカのサイトなどではMLSノイズ測定は普通の部屋を「擬似無響室」測定に出来るとかの記述もありますが、定在波の立ち上がる時間以内の短時間でユニットやクロスオーバの特性がどの程度の精度で測定できるのでしょうか?

MLS(Maximum Length Sequence )信号によるインパルス解析

RE3: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 3日(日)06時13分20秒  
TSS さん:

>WaveSpectraなどでサイン波をスイープする際は「Logスイープ」(対数的に高域ほどスィープする速度が上がり、対数目盛りでは一定の速度でスィープしているように見える)ではなく、「リニアスィープ」というリニアに周波数を上昇させてスィープさせる方法だと-3dB/octとならずに良好に観測出来るようです。

なるほど、そうですか。あり得ますね。

ただ、下のHDさんへのレスに書いたように、中間のサンプル数では、折れ曲がりが生じ、その周波数がスイープ速度に依存するようです。直線スイープの場合、スイープ時間の長短に係わらずフラットになるのでしょうか?

>・・・・ですので最近の測定ツールでは、周期性を持ち完全に決定的であるけれども広いパワースペクトラムを持つ、MLSという信号を使って短時間に周波数特性と位相特性を同時に測定してしまう方法が流行っているようです。

>有名な測定ツールとしてはARTA(ソフト)、CLIO(ソフト+ハード込み)などがあるようです。


確か、結構高価なソフトでしたね。フリーソフトはないんでしょうか? MSLというのは、原理的にはインパルス信号解析を効率的に実行するときの手法ですね? スピーカーの特性解析では、いわば万能の方法なんでしょうが、部屋の特性を含めた測定には向かないんではないでしょうか?

Re: RE3: スイープ 投稿者:HD 投稿日:2009年 5月 3日(日)10時03分3秒  
志賀 さん、TSS さん:

WaveSpectraのヘルプを読み直して見ましたら、サンプル数を増やした時の高域の表示の低下に関する事が書いてあります。 「リニアスィープ」も対策の1つとあります。

結局は、入力信号に対する測定結果の較正を測定機器(PC、ソフト)に応じて正しくやっておく事が大切と改めて認識しました。3dB/Octと言いましても、ピンクノイズとホワイトノイズであれだけ「音色」が違いますから

Re: RE3: スイープ 投稿者:TSS 投稿日:2009年 5月 3日(日)11時13分50秒
志賀さん:HDさん:

> ただ、下のHDさんへのレスに書いたように、中間のサンプル数では、折れ曲がりが生じ、その周波数がスイープ速度に依存するようです。直線スイープの場合、スイープ時間の長短に係わらずフラットになるのでしょうか?

極端に短い場合は(例えば5秒でスイープ等)は、リニアスイープでは低域が低下してしまうようです。(低下の量は「-3dB」といった甚だしい量では無いようにはみえますけれど。)リニアスイープの場合、30秒程度でスイープすれば、ほぼ十分な精度なのではないかな・・・と思っております。

一方Logスイープの場合フラットな特性を得るためには、とても非現実的な測定時間になってしまいそうに見えます。

> 確か、結構高価なソフトでしたね。フリーソフトはないんでしょうか?

自分も過去に探したのですが、完全なフリーソフトは自分は見つけられませんでした。しかしながら、測定結果のグラフの画像キャプチャを保存出来ればそれで良し、という方は無料のデモ版のARTAでも十分かとも思います。(ライセンス版との違いはデータのセーブ/ロードが出来ない点のみです。)

> スピーカーの特性解析では、いわば万能の方法なんでしょうが、部屋の特性を含めた測定には向かないんではないでしょうか?

部屋の特性を含めた測定には向かない、というのはどんな点から思われたことでしょうか・・・ 適切な時間分(例えばインパルスの起点から200mmsec分等)インパルス応答を観測すれば、部屋の反射の影響も観測できるのでは、と思っているのですけれど・・これは間違いでしょうか。

HDさん:

自分もヘルプを見て気付いたクチです。Wavegeneの「スイープ」のチェックボックス辺りを右クリックするとメニューが出てくるんですが・・・ちょっと気付きにくいとこですよねw


RE4: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 3日(日)13時44分32秒  
TSS さん:

>極端に短い場合は(例えば5秒でスイープ等)は、リニアスイープでは低域が低下してしまうようです。添付の画像をご参照ください。

これは最低域ではサンプリング時間内に入る波数が不足するからではないでしょうか?もしそうなら、この現象はサンプリング数を減らせばもっと激しくなり、最大にすれば消えるはずですが如何でしょう?

>> スピーカーの特性解析では、いわば万能の方法なんでしょうが、部屋の特性を含めた測定には向かないんではないでしょうか?

>・・・部屋の特性を含めた測定には向かない、というのはどんな点から思われたことでしょうか・・・

>適切な時間分(例えばパルスの起点から200mmsec分等)インパルス応答を観測すれば、部屋の反射の影響も観測できるのでは、と思っているのですけれど・・これは間違いでしょうか。

おっしゃる通で反射波は容易に区別できると思いますが、例えば定在波の有無を調べたい場合、実際に定在波が立つためには数波のコヒーレント(位相の揃った)な、その周波数の音が必要なので、音源がインパルス信号の場合難しいと思います。

http://www.bekkoame.ne.jp/~k-kara/ht/tran-sw150.htm

このサイトの63Hz のデータを参考にして下さい。

Re: RE3: スイープ 投稿者:HC 投稿日:2009年 5月 3日(日)14時12分22秒  

MLSはthe quasi-anechoic acoustical test programとも呼ばれるそうです。部屋の反響の影響を受けないでスピーカの特性測定に使われますが低域周波数では部屋の反射の影響受けるために使えなかった様に思います。このソフトが搭載された測定器はオーディオプレシジョンを思い出しますね。

S/N良く測る方法としてTSP(time stretched puls)を使って行う方法があります。TSPデータをその時間軸をひっくり返したデータと畳み込んでインパルス応答を得た物をFFTで解析する方法です。某のメーカーが之を使って自動補正するパラメトリックEQを発売していました

Re: RE4: スイープ 投稿者:TSS 投稿日:2009年 5月 3日(日)18時47分22秒 志賀さん:

> これは最低域ではサンプリング時間内に入る波数が不足するからではないでしょうか? もしそうなら、この現象はサンプリング数を減らせばもっと激しくなり、最大にすれば消えるはずですが如何でしょう?

おっしゃるその通りです。スイープしているところを見てると、5秒などだと明らかに低域のスイープが早すぎです。

> 有り難うございます。ちょっと調べてみます。

すみみません。自分不親切でした。下記URLからダウンロードできます。(なんだかARTAの回し者みたいで気が引けていたこともあります。)

http://web.archive.org/web/20120119021359/http://www.fesb.hr/~mateljan/arta/download/ARTA-user-manual.pdf

> おっしゃる通で反射波は容易に区別できると思いますが、例えば定在波の有無を調べたい場合、実際に定在波が立つためには数波のコヒーレント(位相の揃った)な、その周波数の音が必要なので、音源がインパルス信号の場合難しいと思います。

8波バースト面白いです。これは見た目で非常に分かりやすく試してみたくなりました。

本当にMLSで定在波の有無がわからないのかどうか。自分は良く分かっていません。実際試していただけると明らかなのですが、MLSはインパルス信号そのものではなく、擬似ノイズのようでありホワイトノイズのような音が数秒間連続したものです。ということはもしかしたら波数は十分あるのではないでしょうか?

実際に自分の小さな密閉型SP(ウーハの口径8cm)について、50cmほどの距離でWavespectaraの30秒スイープと、ARTAのMLSで測定した周波数応答のグラフを採ってみました。(添付のグラフご参照ください。たびたびお目汚しすみません。)(なお、定在波が出来るだけ出てほしいと考え、スピーカーの背面と、正面1mほどの位置に120cm×50cmの大きめイラストボードを置いて測定してみました。MLS信号は1300msec程度出力しています。)

これを見る限り自分には「殆ど同じ」ように見えてしまうのです。正直なところ仕組みがなんだか分からず、どなたか詳しい方に解説していただきたい気分です。

RE5: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 4日(月)15時16分12秒  
TSS さん:

>・・・MLSはインパルス信号そのものではなく、擬似ノイズのようでありホワイトノイズのような音が数秒間連続したものです。ということはもしかしたら波数は十分あるのではないでしょうか?

そのようですね。私もちゃんと理解しているわけではないですが、信号としてはホワイトノイズを用い、それをマイクで拾い、差分を解析することにより、インパルス信号と同等の情報が得られるということのようです。これで定在波の影響がわかるかどうかですが、ホワイトノイズを通常のFFTで解析してもある程度定在波の影響がわかるようなので、あるいは可能なのかもしれません。

>・・・(なお、定在波が出来るだけ出てほしいと考え、スピーカーの背面と、正面1mほどの位置に120cm×50cmの大きめイラストボードを置いて測定してみました。MLS信号は1300msec程度出力しています。)

背面と表面の距離がわかりませんが借りに30cmとすると、1次定在波の周波数は130Hz ほどなので、その辺りの凹凸が影響を受けているかどうかですが、f0のピークのようにも見え微妙なところですね。

>これを見る限り自分には「殆ど同じ」ように見えてしまうのです。

ソースが同じホワイトノイズなら解析方法の違いだけなので殆ど同じかもしれません。

ピークやディップが定在波によるものかを区別するにはマイクの位置を反射面の直前(定在波の腹)に置いた場合と、中間(1次定在波の節)に置いた場合の差を調べると可能だと思います。

Re: RE5: スイープ 投稿者:TS 投稿日:2009年 5月 4日(月)18時53分35秒 志賀さん、皆さん

> そのようですね。私もちゃんと理解しているわけではないですが、信号としてはホワイトノイズを用い、それをマイクで拾い、差分を解析することにより、インパルス信号と同等の情報が得られるということのようです。これで定在波の影響がわかるかどうかですが、ホワイトノイズを通常のFFTで解析してもある程度定在波の影響がわかるようなので、あるいは可能なのかもしれません。

MLSで使う信号はホワイトノイズのように聴こえても、ノイズではないようです。FFTでインパルス応答を演算するには位相情報が必要なのですが、ランダムなノイズには位相情報がありませんので。恐らくマルチサインとか、位相情報を持った合成波だと思います。また、直接インパルス信号を使わないのは、インパルスのシグナル電力が非常に小さいため、計測SNを確保しにくいからです。

定在波を調べるには、計測上は振幅情報だけで十分なので、ノイズで計測可能です。低域のSNを確保するために、音響計測ではピンクノイズが一般的です。

RE6: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 4日(月)20時52分7秒  
TS さん

>MLSで使う信号はホワイトノイズのように聴こえても、ノイズではないようです。FFTでインパルス応答を演算するには位相情報が必要なのですが、ランダムなノイズには位相情報がありませんので。恐らくマルチサインとか、位相情報を持った合成波だと思います。また、

正直私もこの分野余りよくわかっていません。MLSをWikiPedia などで調べると、デジタルコンピュータで乱数を発生する手法の1つのようですね。デジタル演算で乱数を発生させると不可避的に周期が発生するということのようですね。周期が無限であれば完全ランダムでそれから作られた波形は完全ホワイトノイズということでしょう。MLSは比較的周期の長い乱数を発生させるアルゴリズムということではないでしょうか?

>直接インパルス信号を使わないのは、インパルスのシグナル電力が非常に小さいため、計測SNを確保しにくいからです。

はい。それは十分承知しています。ただ、先のMLS法で発生させた信号をどう解析してインパルス応答を導き出すのかなどはまだ理解していません。ご存じでしょうか?

>定在波を調べるには、計測上は振幅情報だけで十分なので、ノイズで計測可能です。低域のSNを確保するために、音響計測ではピンクノイズが一般的です。

計測上はそうでしょうが実際に定在波が成長するには数波長のコヒーレントなサイン波が必要で完全ランダムな信号だと少なくとも定在波の影響を過小評価することになると思うんですが如何でしょう? 実際にこんなデータがあるんですが?

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/subwoofer.html#70Hz

http://www.bekkoame.ne.jp/~k-kara/ht/tran-sw150.htm
(このサイトの63Hz のデータ)

Re: RE6: スイープ 投稿者:TS 投稿日:2009年 5月 5日(火)00時31分55秒 志賀さん、皆さん

> 正直私もこの分野余りよくわかっていません。MLSをWikiPedia などで調べると、デジタルコンピュータで乱数を発生する手法の1つのようですね。デジタル演算で乱数を発生させると不可避的に周期が発生するということのようですね。周期が無限であれば完全ランダムでそれから作られた波形は完全ホワイトノイズということでしょう。MLSは比較的周期の長い乱数を発生させるアルゴリズムということではないでしょうか?

 自分も勘違いしていました。計測対象が伝達関数ですので入力信号の種類には関係ありませんね。信号がランダムでもなんだろうが、系の伝達関数が1であれば入出力の関係はコヒーレント1ですね。嘘言ってすみませんでした。必要な周波数帯域を持っていれば計測できますね。言い換えるとノイズに含まれるある周波数の信号が入力されたとして、出力との差を、振幅、位相という観点で比較するだけですから。そしてM系列信号を使う利点は、やはりSNを重視するからではないでしょうか。

> はい。それは十分承知しています。ただ、先のMLS法で発生させた信号をどう解析してインパルス応答を導き出すのかなどはまだ理解していません。ご存じでしょうか?

私も算術的な難しいことは分かりませんが、上述のような観点で伝達関数がわかればインパルス応答は一義的に求まるものだと思っていました。具体的に言うと、計測した振幅と位相データで、初期位相ずれゼロとして逆FFTを行えばインパルス応答になるのでは....

> 計測上はそうでしょうが実際に定在波が成長するには数波長のコヒーレントなサイン波が必要で完全ランダムな信号だと少なくとも定在波の影響を過小評価することになると思うんですが如何でしょう?

 計測するのは線形な場ですよね。十分に場が定常状態になれば、各周波数でエネルギーの均等性も十分ありますし、定在波の成長といっても共振ではないので最大6dBの足し算と理解し、ランダム性の誤差程度の問題と認識しています。

>実際にこんなデータがあるんですが?

 過小評価のないデーターが計測できるかどうかということですか?


Re: RE6: スイープ 投稿者:TSS 投稿日:2009年 5月 5日(火)05時21分10秒 TS さんこんにちは。

自分もMLSで刺激した応答からどうやってインパルス応答が導かれるのかわかりません。ARTAのマニュアル(P68)を見ると、以下のような記載あり、

When system excitation has a white spectrum then cross-correlation of an output signal with an input signal is proportional to the system impulse response

これは結局のところ、マイクで得られたMLS信号を刺激として出力された信号と、MLS(入力)を畳み込むと、なぜかしらインパルス応答が得られてしまう・・・というようなイメージで合ってるでしょうか?

<以下追記編集>
自分でちょっと調べました。結果自分は今のところこんな感じの理解です。

(1) http://www.kyushu-id.ac.jp/~samejima/aip/impulse_response.pdf
 の3ページ目を参考にしましたところ以下の様な記述あり。

「入力信号x(t) と出力信号y(t) の相互相関関数Rxy(τ ) は,入力信号の自己相関関数Rx(τ )とシステムのインパルス応答h(τ ) の畳み込みで表される。」
「Rxy(τ)= h(τ ) ? Rx(τ)」
「入力信号として自己相関関数がデルタ関数であるような信号を用いれば,自己相関関数を求めることでそのままシステムのインパルス応答が求められることになる。つまり,Rx(τ) = δ(τ ) である関数を用いればよいわけである。」
(ここは「・・自己相関関数を求めることで・・」の部分は「・・相互相関関数を求めることで・・」の誤記?)

(2)ウィーナー=ヒンチンの定理から
信号の自己相関関数のフーリエ変換=信号のパワースペクトル

(3)デルタ関数のフーリエ変換ということはパワーが一定である信号のことでホワイトノイズ等。

(4)ARTAのマニュアル68ページに以下の如き記載あり。
MLS信号の特徴として(mを次数として、信号の長さN = 2^m−1の時)
τ=0の時:Rx(τ)=1
τ≠0の時:Rx(τ)=-1/N
・・・
(なので、Nが十分大きければデルタ関数とほぼ同じ?)

(5)(1)と(4)からRxy(τ)= h(τ )で、
結局インパルス応答は、入力信号x(t) と出力信号y(t) の相互相関関数Rxy(τ )を畳み込みで計算すればよし?

RE7: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 5日(火)06時34分15秒    TS さん

>・・・そしてM系列信号を使う利点は、やはりSNを重視するからではないでしょうか。

はい。おっしゃる通りだと思います。

>・・・伝達関数がわかればインパルス応答は一義的に求まるものだと思っていました。具体的に言うと、計測した振幅と位相データで、初期位相ずれゼロとして逆FFTを行えばインパルス応答になるのでは....

私もそのような理解です。以前TSSさんへのレスで「・・・・信号としてはホワイトノイズを用い、それをマイクで拾い、差分を解析することにより、インパルス信号と同等の情報が得られる」と書いたのはそのことです。確かに、門外漢にはこの程度の理解で十分かもしれません。

>計測するのは線形な場ですよね。十分に場が定常状態になれば、各周波数でエネルギーの均等性も十分ありますし、定在波の成長といっても共振ではないので最大6dBの足し算と理解し、ランダム性の誤差程度の問題と認識しています。

十分に定常状態になるかどうかという問題です。共振ではないというのはどういう意味でしょうか? 定在波は減衰のある強制単振動系だと思いますが? つまり、L-C-R等価回路で書けると言うことです。それに、Q値はかなり大きいようですよ。

>過小評価のないデーターが計測できるかどうかということですか?

いいたかったことは、昔のように低周波発振器で一定周波数のサイン波で1点1点データを取り定在波周辺のf特を調べた場合と、ホワイトノイズ系の信号で計測した結果が一致するかどうかということです。私の経験では、例えば部屋の中心で測った定在波のディップは前者の結果の方がずっと深かったと記憶しているんですが?

Re: RE7: スイープ 投稿者:TS 投稿日:2009年 5月 5日(火)10時35分5秒 志賀さん

> 十分に定常状態になるかどうかという問題です。共振ではないというのはどういう意味でしょうか? 定在波は減衰のある強制単振動系だと思いますが? つまり、L-C-R等価回路で書けると言うことです。それに、Q値はかなり大きいようですよ。

ランダムな信号でも、持続的に入力があり一定時間経過すれば、定常とみなせるのではないでしょうか? 逆に定常とみなせない理由を知りたいです。もし定常でないならノイズによる計測そのものが成り立たないと理解していました。 また定在波を生ずる部屋の伝達関数をLCR等価回路で表すとどうなりますか?

> いいたかったことは、昔のように低周波発振器で一定周波数のサイン波で1点1点データを取り定在波周辺のf特を調べた場合と、ホワイトノイズ系の信号で計測した結果が一致するかどうかということです。私の経験では、例えば部屋の中心で測った定在波のディップは前者の結果の方がずっと深かったと記憶しているんですが?

定在波のディップとは音圧ゼロの点ですね。これは正弦波による計測のレベルでも、ノイズ計測によるレベルでも音圧がなければゼロになるのではないですか? FFTの精度の問題はあるかもしれません。

RE8: スイープ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 5日(火)15時47分53秒  
TS さん

>ランダムな信号でも、持続的に入力があり一定時間経過すれば、定常とみなせるのではないでしょうか?

それはそうですね。さきの表現は間違いでした。共鳴周波数の位相がランダムなので定在波のモードにエネルギーが十分注入されないのではないかということです。

>また定在波を生ずる部屋の伝達関数をLCR等価回路で表すとどうなりますか?

減衰のある単振動系なので直列 L-C-R 回路だと思います。

>> いいたかったことは、昔のように低周波発振器で一定周波数のサイン波で1点1点データを取り定在波周辺のf特を調べた場合と、ホワイトノイズ系の信号で計測した結果が一致するかどうかということです。私の経験では、例えば部屋の中心で測った定在波のディップは前者の結果の方がずっと深かったと記憶しているんですが?

>定在波のディップとは音圧ゼロの点ですね。これは正弦波による計測のレベルでも、ノイズ計測によるレベルでも音圧がなければゼロになるのではないですか? FFTの精度の問題はあるかもしれません。

それもそうですね。上の理屈では、ディップの深さよりピークの高さに影響が出るはずですね。もう一度確かめてみます。はっきり記憶しているのは、正弦波で定在波を起こし、マイク信号をオシロで見ながらマイクを移動して振幅最小の位置に持ってくると確かに振幅が殆んどゼロになることでした。ノイズではこういうことが出来ないので、あるいはノイズ計測の場合、位置の設定が悪かったのかもしれません。あるは、おっしゃるようにFFT測定と定常法測定の違いかもしれません。

上で紹介されたARTAという解析ソフトのマニュアルはここからダウンロード出来る。

http://web.archive.org/web/20120119021359/http://www.fesb.hr/~mateljan/arta/download/ARTA-user-manual.pdf

これを見ると、大変多機能なソフトで使いこなすはなかなか大変そうである。まだ十分読んでいないが、ソース信号もMLSのみでなく色々な信号が使えるようになっている。

これを使うと、いわゆるインパルス信号で可能な反射の影響をカットする疑似無響室測定や残響時間の測定も可能のようである。

なお、室内音響特性を測定する場合はMLS信号でなく、巾を持たせたインパルス信号である、TSP
(Time Stretched Pulse)信号を用いるようである。
これについての解説としては、

http://web.archive.org/web/20130624003347/http://www.shasej.org/gakkaishi/0305/0305-koza-04.html

このサイトの、4ページ目 4.3節

あるいは、TSSさんが紹介された、

http://www.kyushu-id.ac.jp/~samejima/aip/impulse_response.pdf (消失)

の5.3節などがわかりやすい。ただし、この方法でわかるのは、残響時間までであり、定在波の影響を正しく見積もることは出来ないようだ。



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