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スピーカーあれこれ U

前回に引き続きスピーカーあれこれの第2弾です。スピーカーはオーディオ製品の中で最も完成度が低い製品で、改良しようとしても、「あちら立てればこちらが立たぬ」、いわゆるトレードオフの関係にある要素が多く議論がつきません。今回もあえてまとめないことにします。最後に補足事項としてACE(Acoustic Compliance Enhancement)型スピーカーメタルコーンスピーカーに関する話題を取り上げています。

話題ふたつ 投稿者:MO 投稿日:2009年 3月30日(月)03時05分25秒
 
以前iPodを話題にした者です。二つ、先生とお話したくて、戻ってきました。

一つは製品の「完成度」についてです。先生のサイトでも、おそらく現代の技術水準としては、アンプは十分に完成度が高いが、スピーカーは比較的完成度が低い、という考え方をされているのではないかな、と思います。

私自身も、ずっとそう思っていました。しかし10年くらい前でしょうか、雑誌のインタビューでB&W社の社長が、「アンプに比べて完成度の低いスピーカーだが、この先どのような技術開発を考えているか?」という質問に対して、彼は「私はそうは思わない。完成度が低いというが、あなたはそのスピーカーで、アンプの違いを聞き分けているではないか?」と答えたのです。

これは、とてもおもしろい答えだなと思って印象深く覚えています。(一理ありますよね)

ぼく自身は、一番完成度の高い機械はCDプレーヤーで、次がアンプ。スピーカーは完成度が最も低いと思っていましたが、その根拠はどこにあったのだろうと、考えると、よくわからないのです。

なんとなく、品質のバラツキかな、という気がしています。CDは安いものでもいい音がしますし、高い機械とあまり音が変わりません。スピーカーは値段に応じて、随分品質が違います。STAXのヘッドフォンは非常に完成度が高いと感じる(高級スピーカーど同様の描写性、音のバランスを持っている)のですが、一番安い製品と一番高い製品では、ほとんど音が変わりません。

しかし、価格の高い製品群で比べたら、アンプにしろスピーカーにしろ、どれも完成度は十分高いということかもしれません。すると、もしかしたら、同一価格帯での品質のバラツキが大きいほうが、完成度が低い(A社の製品はすぐれているが、B社はダメだという場合)という感じかもしれません。

先生は、「完成度」という場合、何をもってアンプとスピーカーの完成度の違いと感じていらっしゃるのでしょうか?

Re 話題ふたつ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 3月30日(月)11時03分29秒    
MO さん

>一つは製品の「完成度」についてです。先生のサイトでも、おそらく現代の技術水準としては、アンプは十分に完成度が高いが、スピーカーは比較的完成度が低い、という考え方をされているのではないかな、と思います。

>・・・・、雑誌のインタビューでB&W社の社長が、「アンプに比べて完成度の低いスピーカーだが、この先どのような技術開発を考えているか?」という質問に対して、彼は「私はそうは思わない。完成度が低いというが、あなたはそのスピーカーで、アンプの違いを聞き分けているではないか?」と答えたのです。これは、とてもおもしろい答えだなと思って印象深く覚えています。(一理ありますよね)

確かに論理的には一理ありますね。しかし、本当にアンプの違いを聴き分けているのかどうかあやしいですよ。

>・・・、もしかしたら、同一価格帯での品質のバラツキが大きいほうが、完成度が低い(A社の製品はすぐれているが、B社はダメだという場合)という感じかもしれません。

>先生は、「完成度」という場合、何をもってアンプとスピーカーの完成度の違いと感じていらっしゃるのでしょうか?

これについては私なりにはっきりした基準を持っています。その装置の忠実度が人間の聴覚の弁別域を十分上回っているということです。具体的には、

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/distortion.htm#feeling

に書いた基準に比べ、1桁よければ十分完成度は高いといっていいと思います。私の知る限り、このような基準を満たしている限りブラインドテストで有意差が認められた例はありません。その意味で、差が認められないならバラツキもないわけですから「バラツキ」が大きい方が「完成度が低い」といっていいかもしれません。ただし、この基準に照らし完成度が高い製品が必ずしもマニアの満足度が高いと限らないことはご存じの通りです。
スピーカーに関しては、この基準に照らして完成度が高いとはいえません。ただ、現在主流のダイナミックスピーカーについては原理的に限界があり、その範囲内ではかなり限界に近い近いところまで行っている製品はあると思います。

この限界を突破するには、新しい原理に基ずくスピーカーの開発に待たねばならないと思います。


>STAXのヘッドフォンは非常に完成度が高いと感じる(高級スピーカーど同様の描写性、音のバランスを持っている)のですが、一番安い製品と一番高い製品では、ほとんど音が変わりません。

コンデンサー型は、かなり理想に近いものですが

http://shigaarch.web.fc2.com/electrostaticSP.html

に書いたように、かなり致命的な欠陥があり普及しませんが、ヘッドフォンにするとその欠陥の多くが解消されるのでかなり「完成度」は高いと言っていいと思います。ただ、私自身は臨場感という点でヘッドフォンでは「満足」できません。忠実度が高い点を利用して音質のチェックなどに使います。「森を見る」より「木を見る」のに適した道具ではないかと思っています。

MO さん 投稿者:BM 投稿日:2009年 3月30日(月)11時57分49秒    

数100万のアンプを使ってた人でも数10万のアンプに取り替える人も居ますよ、私もですが・・・矢張り完成度の目安は機器によっての違いが少ない方が完成度が高いと思います

一番低いのはスピーカーだと思っていますが。完成度が低いから粗悪か?と言う物でも有りませんよね、個性として楽しめる好みのスピーカーが使えるのは良いことだと思います

Re: 話題ふたつ 投稿者:NJ 投稿日:2009年 3月30日(月)14時57分29秒    
MOさん ヨコから失礼します。

>現代の技術水準としては、アンプは十分に完成度が高いが、スピーカーは比較的完成度が低い" 

これは誰が見てもその通り、否定できません。

>雑誌のインタビューでB&W社の社長が、「アンプに比べて完成度の低いスピーカーだが、この先どのような技術開発を考えているか?」という質問に対して、彼は「私はそうは思わない。完成度が低いというが、あなたはそのスピーカーで、アンプの違いを聞き分けているではないか?」と答えたのです。これは、とてもおもしろい答えだなと思って印象深く覚えています。(一理ありますよね)”

これはアングロサクソン特有の厚かましい論法で、志賀さんは一理あると仰いましたが、私は一理あるどころか、これは「詭弁」だと思います。もっと厳しい質問をすれば良かったのです。例えば、「スピーカの持つ性質を必要十分に表すことの出来る特性項目は何か。またその項目は、スピーカ業界ではどういう認識をされ、どのように扱われているのか。f特や歪みだけでは全く不十分であると思うが。」とか、「普通のスピーカは数十ヘルツ以下では歪率が数パーセントから、悪いのは十パーセントを超え、明らかに人間に感知されるが、30ヘルツ以下でも1%以下(検知限以下)に抑える方法はないのか」とか。現在でもスピーカはこれらのことが不十分であると言えば良かったのです。スピーカ以外ではこれらのことは楽勝ですからね。

>ぼく自身は、一番完成度の高い機械はCDプレーヤーで、次がアンプ。スピーカーは完成度が最も低いと思っていましたが、その根拠はどこにあったのだろうと、考えると、よくわからないのです。なんとなく、品質のバラツキかな、という気がしています。”

私の経験から、スピーカは基本性能すら所謂特性表で判断すると判断を誤ることがあります。つまりスピーカは基本性能すら特性表で表すことが出来ないのです。これは製品のバラツキとは別次元のことで、技術の成熟度が未だ足りないと言うことです。ある高名なスピーカについて、私はその音質に違和感を持ちましたが、f特、歪率を見ても特に問題は有りません。ところが、或る雑誌の企画でスピーカの過渡特性の測定結果が掲載され、何故かが分かりました。

アンプなどはむしろ不必要なくらいオーバースペックですが、特性表でほぼ見当がつき、回路や素子のスペックは好みによって選択できますから、十分成熟した技術と言えるでしょう。少なくとも、一番忌むべき歪率については、どんなアンプでも人間の検知限以下に抑えられています。

>しかし、価格の高い製品群で比べたら、アンプにしろスピーカーにしろ、どれも完成度は十分高いということかもしれません。もしかしたら、同一価格帯での品質のバラツキが大きいほうが、完成度が低い(A社の製品はすぐれているが、B社はダメだという場合)という感じかもしれません。”

「完成度」という言葉を、技術的完成度、と解釈すると、これは完成度の問題でなく、メーカーの製造技術、品質管理の問題です。品質にバラツキが多いのは、設計か製造技術に改善すべき点があるのです。

>「完成度」という場合、何をもってアンプとスピーカーの完成度の違いと感じていらっしゃるのでしょうか?"

私の場合は、こう考えております。

即ち、ユーザーからは、品質を表す特性を見れば間違いなくものの性質を把握できること。逆に造る立場からは、諸特性をコントロールすれば狙った性質の製品が間違いなく出来ること。スピーカは、アンプなどに比べてこういう事が遅れており、未だ出来ておりません。これはユーザー側にも問題が有り、音について、「まあこんなもんだろう」で済ませてきたことも一因です。私が5.1CHに拘るのも、マルチチャンネルをやると2CHでは気付かなかったスピーカのスペック項目が重要となり(例えばスピーカの群遅延特性)、音に大きく影響し、その特性をコントロールすることが出来ればスピーカの技術は一段と進歩するだろうと思うからです。

完成度 投稿者:MO 投稿日:2009年 3月31日(火)03時50分45秒    

完成度については、参照ページの説明で、だいたいわかりました。

志賀さんのご説明は、いつもぼく個人の経験するところとほぼ一致しますので、だいたい信じて(!)ます。

一部、経験と一致しない部分だけ質問させていただいております。

生活用語的に変換すると、「値段の高いものと安いものとを比較して品質差が少ないものが、機器としての完成度が高い」とムリヤリ言って、当たらずとも遠からずでしょうか。

なるほど、スピーカーは原理的にも歪みを発生する要因をいっぱい抱えた構造とわかりました。

さて、アンプの場合、入力信号と出力信号はどちらも電流なので、比較して歪みを測定できるとわかるのですが、スピーカーの場合、歪みの測定は、どのようにやるんでしょう。

スピーカーは、入力は電気信号で、出力が空気の振動。この歪みを測定するとは、空気振動をマイクで拾って電流に直してから、電流どうしで比較するんでしょうか。そうするとマイクでも変換してるので、スピーカーだけを測定してるわけじゃなくなりますよね。(この辺の方法論は、きっと確立してるんですよね?)

Re 完成度 投稿者:志賀 投稿日:2009年 3月31日(火)09時38分49秒    
MO さん

>生活用語的に変換すると、「値段の高いものと安いものとを比較して品質差が少ないものが、機器としての完成度が高い」とムリヤリ言って、当たらずとも遠からずでしょうか。

う〜ん、「ムリヤリ」言うということならそんなところですかね。この件に関しては、

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/09watch.html

こんな風に考えています。ある限度以下の製品は品質管理で手を抜いている可能性があるのであまりお薦めできないですね。

>なるほど、スピーカーは原理的にも歪みを発生する要因をいっぱい抱えた構造とわかりました。

最近、時間に余裕が出来たので、スピーカーの物理学のページの作成に取りかかろうとしています。なにぶん素人なのでなかなか難しいですね。

>さて、・・、スピーカーの場合、歪みの測定は、どのようにやるんでしょう。スピーカーは、入力は電気信号で、出力が空気の振動。この歪みを測定するとは、空気振動をマイクで拾って電流に直してから、電流どうしで比較するんでしょうか。そうするとマイクでも変換してるので、スピーカーだけを測定してるわけじゃなくなりますよね。(この辺の方法論は、きっと確立してるんですよね?)

波形を比較して評価するのは難しいですね。

通常は音圧レベル(f特)、高調波歪率(第2、第3高調波、全高調波(THD))、相互変調歪などの周波数特性を、過渡特性に関しては、ステップ応答特性、群遅延時間、時間依存f特、などの要素に分け測定します。

この内f特と高調波歪みは素人でも簡単に測定出来るので実行することをお勧めします。
音源はWaveGeneというフリーソフトで、ホワイトノイズ、ピンクノイズ、周波数スイープ信号、各周波数の単純サイン波などを入れた計測用CDを作っておきCDプレーヤーで再生するとほとんど無料でできます。

その音をマイクで拾い、パソコンに入れてWaveSpectra というフリーソフトを使うと、最近のバージョンではTHDも計算してくれます。このとき、おっしゃるようにマイクの性能は重要ですが、計測用のマイクも1万円前後で手に入るようです。最近のマイクはコンデンサー(エレクトレット)型なので、f特も、歪み率もスピーカーに比べ一桁以上低歪みです。

ただ、注意する必要があるのは出力電圧が小さくプリアンプを使わないとS/Nが悪く使い物にならないものがあること、逆に感度を上げすぎると、クリッピングをおこし歪みが生じることです。また、パソコンのマイク入力や内部のアナログ回路やA/Dコンバータに手抜きがあり信用できません。USBオーディオプロセッサーを使う必要があります。こういうことを考えると、最近売り出されているPCM録音対応の高性能ICレコーダーは素人でも安心して使えるのでお薦めです。入力レベルは液晶のレベルメーターが付属しており、データーを直接USBケーブルまたはSDカードから読み取れるのでマイクの性能さえよければ信頼性の高い計測用マイクとして「安心して!」使えます。

実際、これ(Sony PCM-D50)を使って私のシステムを計測したところ、日常聴く音圧レベルでは全周波数帯に渡ってTHDは1% 以下でした。さすがに、旧M社の製品の物理特性は凄いと実感しました。

過渡特性も、いわゆるインパルス信号の解析で可能で、そのためのPCソフトもあるようですが、ちょっと素人では難しそうですね。

スピーカーと完成度 投稿者:TY 投稿日:2009年 3月31日(火)15時49分51秒
   
現在のスピーカーはいかにオーディオ業界が腐敗しているかを象徴する、半世紀以上も前のガラクタで、完成度を云々する代物ではありません。アンプの違いがわかることをもって完成度が高いとは言えません。それは全然別な話です。現在のスピーカーは誰にでも簡単に、「これが理想的なスピーカーだ」といえる条件をほとんど満たしていません。おそらく、コンデンサースピーカーだけがこのような中でいくらかましなスピーカであるかもしれません。他の分野の我々の道具は、新しい技術でどんどんよくなっている中で、これほど何十年にも渡って停滞している道具も珍しいと思います。革新的な、かつ断絶的な改革がスピーカーの分野でない限り、いわゆるハイエンド製品を狙っているオーディオ業界も我々の趣味も遠からず過去のものになってしまうのかもしれません。

Re:スピーカーと完成度 投稿者:MK 投稿日:2009年 3月31日(火)17時19分36秒 皆さん、こんにちは。

>これほど何十年にも渡って停滞している道具とのことですが、初期の着想が意外と良かったと考えることは出来ませんか?

CD関連も、初期の段階で完成に近かったのではないかと思っています。

と言うことで十分、音楽を楽しんでいますが、これが気に食わないと言うことであれば、趣味としてやっていくには大変ですね。

考えようでは、完成に向けやりがいがあって大変楽しいのでしょうね

Re: スピーカーと完成度 投稿者:NJ 投稿日:2009年 3月31日(火)18時25分30秒 TY さん、MKさん

> 現在のスピーカーはいかにオーディオ業界が腐敗しているかを象徴する、半世紀以上も前のガラクタで、完成度を云々する代物ではありません。アンプの違いがわかることをもって完成度が高いとは言えません。それは全然別な話です。<

その通りと思います。旧来のメーカーは姑息な改良に明け暮れ、新しいシステム技術など眼中にない。私はクボテックのhaniwaは評価していますが、クボテックはオーディオメーカーでなく他業種からの新規参入で、このことは今のオーディオ界を象徴しているように思います。

ところでB&Wの社長氏の発言、あの通りの問答であったら、B&Wの社長氏はインタビュアーを小馬鹿にした態度だとお思いになりませんか。意識して「今後の技術開発の方向」の話題を避け、すれ違いの回答をしています。尤も、私はその記事を知りませんので、一連のやりとりの中でその問題の解答をしているのかも知れませんが、あの答えはB&W社長の強弁だと敢えて言いたいです。今のスピーカ、例えばB&WのSignature800、40年前のTANNOY MONITOR15に比べ、能率は10dB失い、得た物は低域が8Hz下がっただけ。それだけTANNOYが優秀だったと言えるかも知れませんが。

>コンデンサースピーカーだけがこのような中でいくらかましなスピーカであるかもしれません。

コンデンサスピーカは、歪みが少なく良いスピーカですが、低域の音圧レベルに限界があると思います。大音量が欲しい場合は使えません。

>>他の分野の我々の道具は、新しい技術でどんどんよくなっている中で、これほど何十年にも渡って停滞している道具も珍しいと思います。革新的な、かつ断絶的な改革がスピーカーの分野でない限り、いわゆるハイエンド製品を狙っているオーディオ業界も我々の趣味も遠からず過去のものになってしまうのかもしれません。

>初期の着想が意外と良かったと考えることは出来ませんか?と言うことで十分、音楽を楽しんでいますが、これが気に食わないと言うことであれば、趣味としてやっていくには大変ですね。

モーショナルフィードバックという手があるのですが、中々ポピュラーになりません。そこで私は、アマチュアには難しいスピーカそのものの改良でなく、DSP等で音場の改善を図るようにしております。一番問題の歪率は、3次歪みは困るが、2次歪みは低域では数%もやむを得ないと妥協しております。ともかくトータルハーモニックスが1%以下になっていればOK、それがなかなか難しい。まあ50Hz以下ならば3%程度はやむを得ないか?

Re: スピーカーと完成度 投稿者:TY   投稿日:2009年 3月31日(火)19時39分11秒 NJさん

> 今のスピーカ、例えばB&WのSignature800、40年前のTANNOY MONITOR15に比べ、能率は10dB失い、得た物は低域が8Hz下がっただけ。それだけTANNOYが優秀だったと言えるかも知れませんが。

まさにこの証言が、いかにスピーカーに技術革新がなかったかを如実に証明していますね。

>コンデンサスピーカは、歪みが少なく良いスピーカですが、低域の音圧レベルに限界があると思います。大音量が欲しい場合は使えません。

私もそう思いますが、ひずみだけではなく、打楽器に対する応答はコーンスピーカーの比ではありません。

>初期の着想が意外と良かったと考えることは出来ませんか?

そうかもしれませんが、あとが続きません。たとえばイオンスピーカの発想は50年以上前のことですが、50年後の今だに何も起こっていません。

>と言うことで十分、音楽を楽しんでいますが、これが気に食わないと言うことであれば、趣味としてやっていくには大変ですね。

そのとおりです。

>モーショナルフィードバックという手があるのですが、中々ポピュラーになりません。

私はモショナルフィードバックを1960年頃に、私が中学生の頃実験してみました。著者は忘れましたが、熱心な研究者が何ヶ月にわたってラジオ技術誌上で実験の記事を掲載していました。ティンパニーの音があまりに生々しかったので、驚きました。それからしばらくして、ナショナル(松下電器)からモショナルフィードバックのスピーカーが発売になりました。

>そこで私は、アマチュアには難しいスピーカそのものの改良でなく、DSP等で音場の改善を図るようにしております。一番問題の歪率は、3次歪みは困るが、2次歪みは低域では数%もやむを得ないと妥協しております。ともかくトータルハーモニックスが1%以下になっていればOK、それがなかなか難しい。まあ50Hz以下ならば3%程度はやむを得ないか?

スピーカーのひずみを何かで解決するというお話なのでしょうか?

Re: スピーカーと完成度 投稿者:NJ 投稿日:2009年 3月31日(火)20時41分28秒 TY  さん

>現在のスピーカーはいかにオーディオ業界が腐敗しているかを象徴する、半世紀以上も前のガラクタ、新しい技術でどんどんよくなっている中で、これほど何十年にも渡って停滞している道具も珍しい<

停滞どころか退歩しています。住宅事情に影響されてか、ハイエンドスピーカも小口径ウーファーのこぢんまりしたものが主流となり、音のスケール感もささやかで、そのくせ高価である。先ほど話題になったB&Wなど、Signature800でも室内楽か小編成管弦楽ぐらいが良いところ、私の好きなブルックナーなどを実演大の音量で聴くわけには行きますまい。唯一Avantgardeだけ(メタプリモなど)がスケール感溢れる音を聴かせてくれる存在ですが、それにしてもポルシェ並の値段は慮外です。技術内容にそれほどの価値は認められないと思います。腐敗とは、そのようなものをお金の価値の感覚の麻痺した人間に売りつけることが罷り通っていると言う思いで、メーカー、コンシューマー共に腐敗していると感じております

 30年ほど前、EVの30Wというウーファーがありました。f0=18Hz、歪率はデータは発表されていなかったと思いますが、76cm口径のため最小でも800リットルの密閉箱が必要でした。現在では、KEFの新技術、ACEを利用すれば800リットルは400リットルに縮小され、十分実用の域に達すると思います。この様な大口径にしてf0の低いウーファーは現在存在せず、僅かにフォステックスが80cmのものを販売するのみ、フォステックスはf0=25Hzで、低域の量感は大きいでしょうが低域再生限界はさほど下がりません。(私の所は古いアルテックの515Bダブルで、f0=25Hz、業務用ですから能率も高く、敢えてフォステックスの80cmとしたいとは思いません。EV30Wは別格です)

>革新的な、かつ断絶的な改革がスピーカーの分野でない限り、いわゆるハイエンド製品を狙っているオーディオ業界も我々の趣味も遠からず過去のものになってしまうのかもしれません。

私もピュアオーディオ界の行方を心配しております。ハイエンドと称するスピーカまでが、売りやすさを第一義に考えたとしか思えない小型の物が幅をきかせ、本来追求すべき低域再生限界20Hz以下への挑戦は全く顧みられない。料理に例えれば、低域は本物の材料を使っているかどうかという料理の基本事項で、高域は香辛料でしょう。現代の大部分のスピーカは、30Hzがまともに再生出来ない。低域を投げてしまっている。これでよいのでしょうか。B&Wの社長に問い詰めてみたいです。高域をこれ以上伸ばしても、今やさほど値打ちがないのに、大多数の「ハイエンドスピーカメーカー」は、やりやすいことをやっているのみではないか。「堕落」であらずして何か。この点、Avantgardeには大いに感心させられましたが。

20Hz以下を目指すなら、サブウーファーもありますが歪みの点でやはり大口径ウーファーでしょう。100Hz以下でクロスすれば問題ないと思います。100Hz以下のクロスは昔は困難でしたが、今やデジタルフィルタで急峻なカットオフ特性が可能ですから、以前のように2oct以上に亘ってウーファーの音がミッドバスに被さって来ることもなく、素質の良い大口径ウーファーさえあれば優秀なスピーカシステムが出来ると思うのに、です

Re: スピーカーと完成度 投稿者:NJ 投稿日:2009年 3月31日(火)21時57分25秒 TY さん

>>コンデンサスピーカは、歪みが少なく良いスピーカですが、低域の音圧レベルに限界があると思います。大音量が欲しい場合は使えません。

> 私もそう思いますが、ひずみだけではなく、打楽器に対する応答はコーンスピーカーの比ではありません。<

私はご同様にトランジェントを重視しています。ただ、方法としては音圧が欲しいのでホーンを使っております。40年前のシステム、アルテックA-4ですが、100Hz以上はホーンロードが掛かります。スピーカの応答性だけについて言えば現代の数あるスピーカと比べても抜群だと思っております。

>私はモショナルフィードバックを1960年頃に、私が中学生の頃実験してみました。 著者は忘れましたが、熱心な研究者が何ヶ月にわたってラジオ技術誌上で実験の記事を掲載していました。ティンパニーの音があまりに生々しかったので、驚きました。それからしばらくして、ナショナル(松下電器)からモショナルフィードバックのスピーカーが発売になりました。<

そう言う技術が今では忘れ去られており、残念です。

>>そこで私は、アマチュアには難しいスピーカそのものの改良でなく、DSP等で音場の改善を図るようにしております。一番問題の歪率は、3次歪みは困るが、2次歪みは低域では数%もやむを得ないと妥協しております。ともかくトータルハーモニックスが1%以下になっていればOK、それがなかなか難しい。まあ50Hz以下ならば3%程度はやむを得ないか?”

> スピーカーのひずみを何かで解決するというお話なのでしょうか?

そうではありません。”トータルハーモニックスが1%以下”の意味は、f特、歪みなど、使おうとするスピーカ単体の特性を吟味する場合の話で、全周波数帯域に亘ってトータルハーモニクスは1%以下のスピーカであることが望ましい、と言うことです。即ち、耳の良い人が認知可能な歪率は1%、普通の人は3%、というデータがあるそうです。スピーカの歪みは、例外なく低域になるほど増加し、酷い物は10%を超えます。(40年前のデータでタンノイモニター15は40Hzで2次歪みが2%一寸、3次歪みは1%以下と優秀でした。それを先ほどご紹介したわけです。)

スピーカそのものの改良でなく、DSP等で音場の改善を図る”とは、スピーカのデータをチェックしたうえで、優れたスピーカを使って、DSPなどを利用してルームアコースティックもひっくるめたトータルの音場調整をしようと言うのがこの趣旨です。

私の経験では、スピーカの歪みは低域に至り顕著となりますが、同一ウーファーでの改善はハコをバスレフまたはホーンにすれば若干は可能と思います。が、バスレフは難しく、まともな物は見たことがありません。バスレフの欠点を露呈しない物は密閉箱に近い音です。ホーンは低域では実態として無理でしょう。それだけにAvantgardeのメタプリモを評価しています。

スピーカ談義 投稿者:志賀 投稿日:2009年 4月 1日(水)15時37分20秒    
が賑わっていますが、以前にも議論したことがあります。

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/63cylinderSP.html

このの冒頭に問題点をまとめてありますが、遠い将来はともかく、まだしばらく動電型の時代が続くでしょう。

皆さんがおっしゃるように、皆一長一短で、着実な進歩というものが見えてこないですね。

ここからは、我田引水の観がありますが、動電型に限るなら、煎じ詰めれば、振動板の材料に活路を見いだす他はないだろうと言うのが私の意見です。要するに、比重が小さく、剛性率が高く、かつ内部摩擦係数も適度に大きい材料の開発です。この観点から行くと、私の知る限り、いわゆるピュアボロン?と呼ばれるB4C がベストではないかと思います。

最近、下で記したICレコーダーを使って自分のシステムのTHDを測定してみましたが、これが受け持つ中音域(1000Hz)辺りでは、ほとんど0.1% に近い値でした。低音はアラミッドハニカム製ですが、これでもほぼ1%以下です。


http://shigaarch.web.fc2.com/electrostaticSP.html

ここにも一例を示しますがいわゆるハイエンドスピーカーでもこれに匹敵するものはほとんどありません。(それしてもコンデンサー型の低歪みは際だっています)

また、復活したダイアのDS-MA1 を試聴したことがありますが、価格は雲泥の差がありますが、低音の迫力を除いて、音質はそっくりでした。このことからも、材料が音質の決めてであることを実感しました。


Re: スピーカーと完成度 投稿者:TY 投稿日:2009年 4月 2日(木)16時03分2秒 NJさん

>停滞どころか退歩しています。住宅事情に影響されてか、ハイエンドスピーカも小口径ウーファーのこぢんまりしたものが主流となり、音のスケール感もささやかで、そのくせ高価である。先ほど話題になったB&Wなど、Signature800でも室内楽か小編成管弦楽ぐらいが良いところ、私の好きなブルックナーなどを実演大の音量で聴くわけには行きますまい。唯一Avantgardeだけ(メタプリモなど)がスケール感溢れる音を聴かせてくれる存在ですが、それにしてもポルシェ並の値段は慮外です。技術内容にそれほどの価値は認められないと思います。腐敗とは、そのようなものをお金の価値の感覚の麻痺した人間に売りつけることが罷り通っていると言う思いで、メーカー、コンシューマー共に腐敗していると感じております。

数年前そのホーンシステムを聞いたことがありますが、金属の音がしました。

>20Hz以下を目指すなら、サブウーファーもありますが歪みの点でやはり大口径ウーファーでしょう。100Hz以下でクロスすれば問題ないと思います。100Hz以下のクロスは昔は困難でしたが、今やデジタルフィルタで急峻なカットオフ特性が可能ですから、以前のように2oct以上に亘ってウーファーの音がミッドバスに被さって来ることもなく、素質の良い大口径ウーファーさえあれば優秀なスピーカシステムが出来ると思うのに、です。

ずいぶん低域の周波数特性にこだわりますね。10KHzと同様に、さっぱりとあきらめたほうが、他の音域に害を与えなくてよいのではないですか。一度ウーハが箱を振動させたらもう終わりです。制御のしようがありません。ウーハー自体も重たくて制御できないですね。

Re: スピーカーと完成度 投稿者:TY 投稿日:2009年 4月 2日(木)16時44分51秒 NJさん

>私はご同様にトランジェントを重視しています。ただ、方法としては音圧が欲しいのでホーンを使っております。40年前のシステム、アルテックA-4ですが、100Hz以上はホーンロードが掛かります。スピーカの応答性だけについて言えば現代の数あるスピーカと比べても抜群だと思っております。

本当にトランジェントのことを考えると、ボイスコイルを巻いてピストン運動をさせる今のスピーカーは全く希望がありません。

>私はモショナルフィードバックを1960年頃に、私が中学生の頃実験してみました。>著者は忘れましたが、熱心な研究者が何ヶ月にわたってラジオ技術誌上で実験の記事を掲載していました。ティンパニーの音があまりに生々しかったので、驚きました。それからしばらくして、ナショナル(松下電器)からモショナルフィードバックのスピーカーが発売になりました。モショナルフィードバック技術が今では忘れ去られており、残念です。

これはいくらやってもたかが知れているから、先に進まなかったのだと思います。やはり同じコーンスピーカーですから。

Re: スピーカーと完成度 投稿者:NJ 投稿日:2009年 4月 2日(木)20時28分16秒 TY  さん

 いやまあ、随分冷やかされますねえ。しかし、私のスタンス(このBBSに何回も述べたことですが)から、こうせざるを得ないと言うことです。つまり、さながら演奏会場にいるような雰囲気を求めてやってきましたが、結局実演大の音量で聴くようになったので、それなりのスピーカを選ぶことが必要です。耳の等ラウドネス特性のため実演大の音量が必要なのです。だから我が家のDVDなどには、一つ一つ再生時のボリュームの量が記入してあり、それで実演大の音量を得ています。バロックくらいならコンデンサースピーカが良いでしょうが、ブルックナー、ワグナーと来ては。スピーカ1mの位置で120dBの音圧が必要であると、このBBSに投稿したら一騒ぎ有りました。

> 本当にトランジェントのことを考えると、ボイスコイルを巻いてピストン運動をさせる今のスピーカーは全く希望がありません。<

まあ、120dB出そうというわけですから、そんじょそこらのスピーカでは無理です。音圧を第一義に考えて、後は現時点で可能な範囲で良品を選定し、妥協するしか有りません。つまり理想は理想として、現実を踏まえて歩み寄るわけです。

>>モショナルフィードバック技術が今では忘れ去られており、残念です。

> これはいくらやってもたかが知れているから、先に進まなかったのだと思います。やはり同じコーンスピーカーですから。<

とはいえ、定説では低域再生限界を1オクターブ下げることが出来るとされています。現在では、普通のスピーカが35Hzくらいは出せるので、それなら18Hzはイケルことになります。人間の耳の歪み検知限度を1%と考えれば、真面目に開発すればその位は出来そうに思いますが。

>数年前そのホーンシステムを聞いたことがありますが、金属の音がしました。

私はヤマギワ(店の名は忘れましたが、神田、明下近くのハイエンド専門店)で聴きました。低域がバスレフのもの(Duo以下のクラス)は駄目です。オールホーンの音がお気に召さないとすれば機器の組み合わせとか、部屋が悪かったのでは?
 ヤマギワの部屋は、特にチューニングしたわけではなさそうなのに、音にクセがなかった。広い部屋だったからでしょう。

>ずいぶん低域の周波数特性にこだわりますね。10KHzと同様に、さっぱりとあきらめたほうが、他の音域に害を与えなくてよいのではないですか。<

20kHz以上にレスポンスを伸ばしても、肝心のCDに録音されていないのだからしょうがないじゃないですか。ところが低域は、30Hzが出るのと出ないのでは雲泥の差です。特にこのような低域は、耳に聞こえるというより体に感じるという方が的を得ています。その感じが再生出来たら良いなあと思っています。

>一度ウーハが箱を振動させたらもう終わりです。制御のしようがありません。ウーハー自体も重たくて制御できないですね。<

そうですね。ところが現実は、ハコどころか部屋も振動しています。さすがに音楽ではそうはなりませんが、測定のため低周波をスピーカから出すと、書棚やサイドボードの什器、果てはベランダのガラス戸などが思いっきり振動しますよ。しかし、コンサートホールでも、二階席最前列に座っていて、チュ−ニング時に手すりに触ったら、盛大に震えていました。スピーカそのものは一本200kgあり、混変調を発生させないようハコはガチガチにしましたが、部屋が震えるのはなかなか止められず、滅法子です。

Re: スピーカーと完成度 投稿者:KZM  投稿日:2009年 4月 2日(木)21時26分25秒 TY  さん

> ずいぶん低域の周波数特性にこだわりますね。10KHzと同様に、さっぱりとあきらめたほうが、他の音域に害を与えなくてよいのではないですか。

なかなかそういう知見が広まらないのでは。30cmや38cm程度の小さいウーファーの直接輻射で超低域までカバーしたところで、音が出ているだけで満足してしまい、色々な問題を起こしていても気付けないものです。

>一度ウーハが箱を振動させたらもう終わりです。制御のしようがありません。ウーハー自体も重たくて制御できないですね。

1トン以上の鉄塊で実験した人もいますが、結局箱鳴りはなくならないようです。その程度の鉄や木材の質量と内部損失係数では反動を殺しきれないということです。例えば電流正帰還方式のMFBをかけても、キャンセルできるのはボイスコイルのDCR成分だけで機械インピーダンスのその他の制動因子は変わりませんから、特に重いウーファーの扱いには限界があります。

>本当にトランジェントのことを考えると、ボイスコイルを巻いてピストン運動をさせる今のスピーカーは全く希望がありません。

真に理想的なスピーカーを追及するならコーン型やホーン型では到底無理で、静電型構造を基本として材料と構造の研究を続けるべきでしょう

Re2: スピーカーと完成度 投稿者:志賀 投稿日:2009年 4月 2日(木)22時21分44秒 KZM  さん

ちょっと割り込ませて下さい。

>1トン以上の鉄塊で実験した人もいますが、結局箱鳴りはなくならないようです。その程度の鉄や木材の質量と内部損失係数では反動を殺しきれないということです。

要するに程度問題ですが、何か具体的なデータはあるんでしょうか? 検出方法はどうするんでしょうか?

>例えば電流正帰還方式のMFBをかけても、キャンセルできるのはボイスコイルのDCR成分だけで機械インピーダンスのその他の制動因子は変わりませんから、特に重いウーファーの扱いには限界があります。

これは本当ですか?

機械的制動因子は変わりませんが、電流正帰還の場合、かける電圧(=力)を増大させるので、臨界制動条件での立ち上がり時間勾配 F/M は原理的にはいくらでも大きくすることが出来ると思いますが? もちろん、帰還をかけすぎると発振してしまうので限界はありますが。


Re: Re2: スピーカーと完成度 投稿者:KZM  投稿日:2009年 4月 2日(木)23時15分0秒    
志賀さん

> 要するに程度問題ですが、何か具体的なデータはあるんでしょうか? 検出方法はどうするんでしょうか?

残念ながら定量的な値としては聞いていません。その個人試作ではやっていないでしょうが、本格的に箱鳴りの速度特性を調べるならレーザードップラー振動計で可視化できます。

> 機械的制動因子は変わりませんが、電流正帰還の場合、かける電圧(=力)を増大させるので、臨界制動条件での立ち上がり時間勾配 F/M は原理的にはいくらでも大きくすることが出来ると思いますが? もちろん、帰還をかけすぎると発振してしまうので限界はありますが。

以前電流正帰還の実験をしたとき、市販のYSTシステムと違って発振ギリギリまで詰めたことがありました。それでもインパルス応答が完全になったわけではありませんでした。これも程度問題でしょうが、発振しない帰還量で完璧に制動するのはまず無理だろうと思います。

Re: スピーカーと完成度 投稿者:TY 投稿日:2009年 4月 3日(金)16時38分58秒 KZM さん

>> ずいぶん低域の周波数特性にこだわりますね。10KHzと同様に、さっぱりとあきらめたほうが、他の音域に害を与えなくてよいのではないですか。

> なかなかそういう知見が広まらないのでは。 30cmや38cm程度の小さいウーファーの直接輻射で超低域までカバーしたところで、音が出ているだけで満足してしまい、色々な問題を起こしていても気付けないものです。

そう思います。どういうわけか、世の中はワイドバンド思考で、とにかく20Hzから20KHzまで、あるいはそれ以上出さないと気がすまないというムードです。半世紀ほど前にハイもロウもまともに出なかった時代の、後遺症と言うべきでしょう。

ナロウバンドでも高品質な再生ができると私は思っています。ワイドバンド(低域)は映画館の効果音だけで結構です。

>本当にトランジェントのことを考えると、ボイスコイルを巻いてピストン運動をさせる今のスピーカーは全く希望がありません。 真に理想的なスピーカーを追及するならコーン型やホーン型では到底無理で、静電型構造を基本として材料と構造の研究を続けるべきでしょう。

コンデンサースピーカーは一番その可能性があると思っています。ところが、Peter Wakerの2代目は技術的なことに全く興味はないし、米国のメーカーも、貧弱な零細企業で、新しい技術の開発に投資をできる資金的な余裕もないというのが現状だと思います。

Re: Re2: スピーカーと完成度 投稿者:TY 投稿日:2009年 4月 3日(金)17時55分1秒 志賀さん

>>例えば電流正帰還方式のMFBをかけても、キャンセルできるのはボイスコイルのDCR成分だけで機械インピーダンスのその他の制動因子は変わりませんから、特に重いウーファーの扱いには限界があります。
>
> これは本当ですか? 機械的制動因子は変わりませんが、電流正帰還の場合、かける電圧(=力)を増大させるので、臨界制動条件での立ち上がり時間勾配 F/M は原理的にはいくらでも大きくすることが出来ると思いますが? もちろん、帰還をかけすぎると発振してしまうので限界はありますが。

MFBの多くの問題は、当時のコーン紙の構造にあったようで、もし三菱のハニカムがあったならば、いくらかその発展が違ってきたかもしれません。それほど、検出される電圧と、コーン全体のたわみがかけ離れていたように記憶しています。ハニカムコーンを使った場合は、おそらく高域の遮断はシャープなものが必要だと、言われていたように記憶しています

Re: スピーカーと完成度 投稿者:KZM 投稿日:2009年 4月 3日(金)18時02分4秒 TY さん

> ナロウバンドでも高品質な再生ができると私は思っています。ワイドバンド(低域)は映画館の効果音だけで結構です。

超低周波に関しては、理想的環境(物理的に無理のない構成で超低周波まで大音量で出すことができ、しかも近所に迷惑をかけない)であれば意味がありますが、そうはいかないことがほとんどです。それならむしろ、ボディソニック(これまた発想が古い)を導入した方がずっと目的実現に近いでしょう。どうしようもなく狭い部屋なら静電型イヤースピーカ+ボディソニックが一番理想的ではないでしょうか。

> コンデンサースピーカーは一番その可能性があると思っています。 ところが、Peter Wakerの2代目は技術的なことに全く興味はないし、米国のメーカーも、貧弱な零細企業で、新しい技術の開発に投資をできる資金的な余裕もないというのが現状だと思います。

静電型は動作原理は確立しているので、単純に進化させようとすると材料の進歩しかありません。ただし、早稲田大のフレキシブルスピーカとNHK技研/FOSTEXの導電性エラストマートランスデューサには未来があるかもしれないと思い応援しています。

MFB サブウーファー 投稿者:志賀 投稿日:2009年 4月 3日(金)22時40分42秒 TY  さん

>MFBの多くの問題は、当時のコーン紙の構造にあったようで、もし三菱のハニカムがあったならば、いくらかその発展が違ってきたかもしれません。それほど、検出される電圧と、コーン全体のたわみがかけ離れていたように記憶しています。ハニカムコーンを使った場合は、おそらく高域の遮断はシャープなものが必要だと、言われていたように記憶しています。

そうですね。MFBは高音域では位相がずれて発振するので無理ですね。低音域では十分実用になるのでサブウーファーにはよく使われているようです。私が使っているYST(電流正帰還)方式もボイスコイルが検出コイルを兼ねる一種のMFBです。

ACEスピーカー

3月4日投稿の訂正 投稿者:NJ 投稿日:2009年 3月23日(月)22時09分1秒    

3月4日投稿、「Re.Reダブルウーファーを使う理由」の中で、「今資料が見あたりませんので記憶だけで申しますが、英国の某社では(たしかモニターオーディオだったか)大口径でもハコを1/2に出来る技術が有るそうで、活性炭をハコに封入した密閉箱だそうですが、ペアで2000万円だそうです。」と記しましたが、モニターオーディオでなくKEFでした。

ACE(Acoustic Compliance Enhancement)と言う技術だそうで、要は活性炭を密閉箱に封入し、空気圧が増すと吸引させ、空気圧が減少すると放出させることにより、密閉箱の容積が従来の半分になるというもの。ミソは活性炭の種類、粒の大きさ、封入方法にあるらしい

Re 3月4日投稿の訂正 投稿者:志賀 投稿日:2009年 3月24日(火)06時27分42秒 NJ さん

http://www.audiounion.jp/products/kef_ace.html

これですね。普及機にも採用されているようですよ。この場合は、箱の容積が実質1.7倍に相当と書いてあります。なかなか面白いアイデアですね。吸着・脱着に伴う時間遅れや、空気バネの非直線性が気になるところです。

http://www.kef.com/technology/acoustic/acoustic.html

これをざっと見ると、100Hz以下の低音では空気バネのコンプライアンスを2〜4倍にすることが可能なようですが、実際にスピーカーボックスの充填剤として使ったとき、例えば群遅延時間や高調波歪みをそれほど大きく損なわずに、どこまで実現可能かどうか分りません。宣伝文に書いてある1.7倍というのは何に対して1.7倍なのか、また、どのようにして評価したしたのか、よく分かりません。どうもコンプライアンスが1.7倍といっているわけではなさそうですね。実製品に即したもう少し詳しい技術資料が見たいものです。

比較的良心的なメーカーでもそうですが、原理的なことでは間違いがないが、実製品の宣伝文となると、注意して読まないと、どこかにごまかしがあることが多いですからね。

ところで、箱の中に大量の吸音材を詰めると、吸音だけでなく吸熱効果が効き、等温圧縮(膨張)に近づき空気バネ定数が減少し(コンプライアンスが増加し)、箱の実効体積が増加するという話もあるようです。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/helmholtz.htm

このページの中程の注釈(緑字)に書いた通りです

Re: Re 3月4日投稿の訂正 投稿者:NJ 投稿日:2009年 3月25日(水)12時10分34秒 志賀さん

日本語の資料は知りませんでした。普及品についてはKEFのHPにもあります。AV用のスピーカの様です。

http://www.kef.com/technology/acoustic/acoustic.html

私も、これとは違いますがKEFのHPで見つけました。元々は、MJ誌本年2月号"ジンガリ"の製品紹介記事にACEという名称だけが出ていたのをネット検索したものです。ほぼ同様の内容で、これ以上詳しいことは分かりません。1.7倍は、所謂密閉箱の計算式で求められる通常の容積の1/1.7になると解釈しました。

> ところで、箱の中に大量の吸音材を詰めると、吸音だけでなく吸熱効果が効き、等温圧縮(膨張)に近づき空気バネ定数が減少し(コンプライアンスが増加し)、箱の実効体積が増加するという話もあるようです。

実用上ハッキリと認められる効果があれば、より好ましいわけですが・・・・。

メタルコーンスピーカー

メタルコーンスピーカー 投稿者:ST 投稿日:2009年 5月 8日(金)00時15分1秒  

最近ひょんなことからメタルコーンのスピーカーを所有しました.メタルコーンスピーカーには以前から興味は無くて音を出す前はいかにもキンキンなりそうな予感というか先入観念を持っていました.その日立の12センチフルレンジ?でしたが鳴らしてみてやはり他(紙や樹脂のコーン)と比べて異質なものを感じましたがしばらく聴いているうちに他では得られない独特のサウンドがあるように感じ始めました.音なので説明しずらいのですがスピード感というかいろんな音の持つアタック感というか.そのようなものを感じました.従来のスピーカーで感じていたスピーカーの前に布があるような感じが無く音が生生しいのです.周波数特性だけでは説明できない何かがあるように思えます.その後色々なCDを聴いて見ましたが金属だから堅い音がするという先入観念なども間違っていたようです.そうこうするうちに.ネットでたまたま購入したこの安いスピーカーが今まで聞いた最高のものに思えてきました。

そこで質問ですが.いわゆるスピーカーには内部損失が必要だと言われますがその内部損失のために色々な音のもつ特質までもマスキングしてしまうのではないかと思えるのです。ボイスコイルが振動をボビンに伝えボビンはコーン紙の絞り口に伝え.そこからコーンの周辺に伝播されて行く.そこには当然時間差が生じるでしょう。内部損失はイコール時間損失なのではないでしょうか。コーンの固有振動は悪影響があるというのは良く分かるのですがやわらかい材質を使ってそのつじつま合わせのような技法による現在の技法に疑問を持ち初めています.

スピーカーの理想は振動板全体が全く同じ動きをしてしかも限りなく制動が利いているというのが理想と思われますがメタルコーンは固有振動の弊害はあるがこの理想に1歩近ずいていて紙コーンや樹脂コーンはそれより遅れていると思うわけでありますがそれについてのご意見などお聞かせ頂ければと思います.

Re: メタルコーンスピーカー 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月 8日(金)17時33分12秒ST さん
ST さん

>・・・そこで質問ですが.いわゆるスピーカーには内部損失が必要だと言われますがその内部損失のために色々な音のもつ特質までもマスキングしてしまうのではないかと思えるのです.

これは色々大きな問題を含んでいるので簡単には答えにくいですね。ただ最初に指摘しておきたいのは、上述のご意見はあくまでST さんの個人的主観によるものであり,これを根拠に議論はしないことにしましょう。あるいは、固有振動で色づけされた音を好ましい音と感じておられる可能性もあるわけですから。あくまで、物理的に見て高忠実度を得るには何がいいかということに限ります。なお、最近スピーカーの物理学を論ずべく新しいページを立ち上げました。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/9416transient_impedance.pdf

こちらです。ちょっと難しいですがこれを基に議論を進めます。

>ボイスコイルが振動をボビンに伝えボビンはコーン紙の絞り口に伝え.そこからコーンの周辺に伝播されて行く.そこには当然時間差が生じるでしょう。

はい。それはその通りです。

>内部損失はイコール時間損失なのではないでしょうか。

「時間損失」とは何を指しておられるのかわかりませんが、恐らくコンプライアンス(剛性率の逆)のことだと思います。それだと、ちょっと違います。リンクページにも書いてあるように、振動系の運動は電気回路のL-C-R等価回路で記述できます。内部損失はRに相当し、コンプライアンスはC相当し、物理的には独立した量です。


>コーンの固有振動は悪影響があるというのは良く分かるのですがやわらかい材質を使ってそのつじつま合わせのような技法による現在の技法に疑問を持ち初めています.

上に書いたように内部損失が大きいことが即剛性が小さいとはいえません。ただ実際問題としては損失の大きい材料は剛性率が小さくなりがちです。剛性率を損ねないで、内部損失が大きい材料を見つけるのが技術者の腕の見せ所でしょう。例に挙げられた製品のことはよく分かりませんが、プロの技術者が作ったのなら、メタルからだといってキンキンした音に聴こえルようなものは作らないでしょう。

>スピーカーの理想は振動板全体が全く同じ動きをして

これはそうの通りです。

>しかも限りなく制動が利いているというのが理想と思われますが

いえ、必ずしもそうとはいえません。適度な制動、すなわち臨界制動条件を実現すれば十分だと思います。それ以上制動が強くても能率が下がるだけで固有振動の抑制にはあまり効果はないと思います。メタルの場合は一般に臨界制動に達しないものが多いように思いますが、内部損失は材料固有の性質だけでなく、いわゆる材料組織が大きく係わるので特殊な作り方をすると適当な材料が見つかる可能性はあります。

>メタルコーンは固有振動の弊害はあるがこの理想に1歩近ずいていて紙コーンや樹脂コーンはそれより遅れていると思うわけでありますがそれについてのご意見などお聞かせ頂ければと思います.

上に書いたようにそう単純ではありません。いずれにせよ観測できるような固有振動があればスピーカーの振動板としては失格でしょう。

Re: メタルコーンスピーカー 投稿者:ST 投稿日:2009年 5月10日(日)01時00分9秒
志賀さん

スピーカーはオーデイオ製品の中で遅れていると言われますが.それだけいろんな意見と考え方があって興味深いものです.以前オルソン博士が来日しての講演で質問者が〔スピーカーはやはり遅れているのでしょうか?〕の問いかけに〔自分はそうは思わない.現に録音の良し悪しなどが聞き分けられるではないか〕と答えたとか...本当にいろんな考えがあるものです。

構造も圧電式.静電式.リボン式.などいろいろありますがやはり電磁式が圧倒的ですがこの状態はもう半世紀も変わらず続いているようです.そういえば影山式というのもありましたが景山氏の努力と研究心には頭が下がりました。そろそろ画期的な新方式で質量のほとんど無い.丈夫で固有振動の無い.振幅の大きくとれるスピーカーでも発明されるといいですね.

話変わりますがオーデイオの世界はいまやとんでも無い話が実にまことしやかに蔓延しています.音の良くなる電気回路エージング用のCD?音の良くなるコンセント.音の良くなるスピーカーコード.など数えたら切りがありません.真に受けて使う人の気が知れません。そのような中でこちらのサイトが良きオーデイオの指針になることを願っております.

ついでといっては申し訳ありませんがもうひとつご意見お聞かせ下さい。コンデンサで音が変わるといわれます。コンデンサの用途としては大別して信号伝達用.電源平滑用.半導体素子の交流電位差の調整用など思いつきますが私としては信号伝達用としての話ならともかく十分に内部抵抗を低くした電源用などならばコンデンサの銘柄では音が変わらないと思いますがいかがなものでしょうか? 信号伝達用としても絶縁が良好でしかも電極が振動しないもの同士の比較なら音が変わるはずはないとおもいますし音が変わるどうのこうのというのは真空管時代の日本のペーパーコンデンサの絶縁の悪さが出力管の動作点に影響を与えていたころの話を今も引きずっているようにも思えるのです.

Re2: メタルコーンスピーカー 投稿者:志賀 投稿日:2009年 5月10日(日)22時27分19秒    
ST さん

>そろそろ画期的な新方式で質量のほとんど無い.丈夫で固有振動の無い.振幅の大きくとれるスピーカーでも発明されるといいですね.

フルデジタルスピーカーとうのはちょっと面白いかなと思っています。

>・・・コンデンサで音が変わるといわれます.コンデンサの用途としては大別して信号伝達用.電源平滑用.半導体素子の交流電位差の調整用など思いつきますが私としては信号伝達用としての話ならともかく十分に内部抵抗を低くした電源用などならばコンデンサの銘柄では音が変わらないと思いますがいかがなものでしょうか?

以前にもこの話題が出たことがあります。その時の回答が

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/capasound.html

これです。

ただ、コンデンサーの場合、注意する必要があるのは、品質検査もパスした新品を適材適所に使い、かつ新品の内は銘柄による音の違いなどあり得ないと思いますが、アンプなどのトラブルの原因の多くがコンデンサー、特に電解コンデンサーにあるんではないでしょうか?

実は私自身も経験があり、電源電圧の不安定化が原因と思われるノイズが生じたことがあり、製造元へ送り修理を依頼したのですが、そこでは症状は現れず原因不明だったのですが、ともかくコンデンサーを交換してほしいといって交換してもらったところその後その症状は起こらなくなりました。ノイズのない時の音質変化は感じなかったのですが、あるいは耳のいい人なら感じたかもしれません。

ということで、コンデンサーは経時変化を受けやすいので、古いのを使っている場合、何が起こるかわからないということがあるのではないでしょうか?


>・・・音が変わるどうのこうのというのは真空管時代の日本のペーパーコンデンサの絶縁の悪さが出力管の動作点に影響を与えていたころの話を今も引きずっているようにも思えるのです.

コンデンサーはいざ知らず、オーディオの大家といわれるような人の中には、アナログレコードと真空管アンプ時代の感覚から抜けきらず、ディジタルオーディオの本質が全くわかっていない人が多いようですね。高級?CDトランスポートなど典型的な例ではないでしょうか?

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