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歪と聴感 アンプ・スピーカー編

今回はオーディオの基本に立ち返り、アンプとスピーカーの歪みと音質についての議論です。

デバイスとアンプ 投稿者:TR 投稿日:2009年 1月14日(水)23時19分10秒    

電子管アンプと半導体アンプでは明らかに音質に差があると思います。ところで、最近の10万円クラス、あるいは、それ以上の半導体アンプ製品による差は小さく、十分な性能があるとのことです。

そこで、知りたいのですが、半導体アンプの場合、パワーアンプの終段デバイスとして、接合トランジスタを使った場合、MOS−FETを使った場合がありますが、音質の差は小さいと思っていいでしょうか?

また、終段の構成として、ピュアコンプリメンタリのプッシュプル構成(接合トランジスタの場合、NPN型とPNP型の組み合わせ FETの場合、P-chとN-chの組合せ)と準コンプリメンタリのプッシュプル構成(接合トランジスタの場合、例えばNPN型のみでプッシュプル構成  FETの場合、例えばN-chのみでプッシュプルの組合せ)とでは、音質の差は小さいと考えていいでしょうか?

Re デバイスとアンプ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月15日(木)06時45分14秒    
TR さん

>電子管アンプと半導体アンプでは明らかに音質に差があると思います。

客観的には、差が聴き分けられる場合が多いといった程度だと思います。

>ところで、最近の10万円クラス、あるいは、それ以上の半導体アンプ製品による差は小さく、十分な性能があるとのことです。半導体アンプの場合、パワーアンプの終段デバイスとして、・・・・・・

>また、終段の構成としてピュアコンプリメンタリのプッシュプル構成・・・・・とでは、音質の差は小さいと考えていいでしょうか?

使っている素子や回路構成が何であれ、アンプをブラックボックスと考え、トータルとしての性能、すなわち、周波数特性、歪率(TDH)、S/N比、ダンピングファクター、・・等が、人間の聴覚で弁別可能なレベルを十分上回っておれば聴き分けられないということです。

実際に過去のブラインドテストの結果

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/ampblind.htm

を見るとその通りになっています。

アンプとスピーカ 投稿者:TR 投稿日:2009年 1月15日(木)22時53分14秒    

なるほど、半導体アンプはある程度の性能が確保できていれば、ほとんど差がわからないということですね。

MOS-FETの音がいいということで採用している例が多いと思っていたのですが、基本性能が確保できれば、接合トランジスタとの差も小さい(わからない)ということですね。

M社は、MOS−FETにこだわっていないようで、高級機にも接合トランジスタを用いており、D社は、MOS−FETにこだわっているようですが、10万円を超える高級機にもコンプリメンタリでないOTL構成の製品を出していて、これらのアンプがグランプリ受賞しているみたいです。

アンプによる音質の差は小さく、最後に音質を決めるのは、スピーカということになるのでしょうか?

ところで、スピーカでも歪みはあると思いますが、周波数特性だけでなく、歪み率、IM歪みなどアンプと同じような評価項目は適用できないものでしょうか?


A級アンプの優位性について 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月27日(火)21時00分43秒  
 
オーディオの科学では、この問題には言及されていないようですが、A級アンプはスイッチング歪みがない分、B級アンプよりも有利だと思いますが、どの程度の音質差があるものでしょうか。つまり、100W出力のB級アンプよりも、20W出力のA級アンプの方が音質がいいと言われてますが、いかがでしょうか。問題は、A級アンプの方が消費電力が大きいのと、発熱があることですが、その欠点を上回る音質が期待できるのでしょうか。

A級アンプ 投稿者:NJ 投稿日:2009年 1月28日(水)00時18分35秒  
 
TBさん。仰るとおり理屈ではA級が一番良いことになっていますね。しかし良くできたものは聴感上殆ど同じです。私は、パワーは要らないのですが(昔のスピーカー、アルテックやタンノイなどを使っているので能率が高い)TRアンプ(30年くらい前に求めたAccuphase p-400)はB級で使っています。このアンプは純A級にも切り替え可能で、切り替えて比較してみましたが差は分かりませんでした。音が少し丸くなったような気はしますが。タマアンプに至っては、回路方式より設計の良否と部品のスペックの方が影響すると思います。ご存知かも知れませんが、昨年MJ誌にKT88PPの代表的市販アンプの特性テスト結果が掲載されていましたが、酷いものは数ワットで高調波歪みが1%を超え、定格40Wでは殆どのものが無残な結果でした。ただ一つMcIntosh(MC275レプリカだったかな)は80Wでも1%を下回っていました。流石です。ただしお値段は中国製より約三倍しますが。McはAB2ですがむしろBに近いと思われます。実際、私がヒヤリングした結果でも、雨後の竹の子のように現れる某国製アンプなどは良い音とは思えませんでしたが、テスト結果を見てよく分かりました。回路方式とかよりご自分の耳を信用なさるのがよいと思います。

Re A級アンプの優位性について 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月28日(水)05時48分45秒    
TB さん

>・・・A級アンプはスイッチング歪みがない分、B級アンプよりも有利だと思いますが、どの程度の音質差があるものでしょうか。つまり、100W出力のB級アンプよりも、20W出力のA級アンプの方が音質がいいと言われてますが、いかがでしょうか。

「A級アンプB級動作では生じる恐れのあるクロスオーバー歪みを避けることが出来るので高音質である」という理屈ですね。これも定性的説明であり、そう思って聴くとそう聴こえるだけであって客観的に証明されているわけではありません。実際にはB級アンプといってもAB級動作で使用しており、適正に設計されたアンプであれば、歪み率や過渡特性は検知可能な大きさより遙かに小さく押さえられています。また、ブラインドテストの結果も有り

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/ampblind.htm

この中で、B&K ST140、Sumo Andromeda というアンプはA級アンプですが通常の(多分AB級)アンプと比べて有意差無しということです。

>問題は、A級アンプの方が消費電力が大きいのと、発熱があることですが、その欠点を上回る音質が期待できるのでしょうか。

環境問題を持ち出すまでもありませんが上でいった理由で、あえてA級アンプをえらぶ必要はありません。エネルギー効率を考えるなら、むしろD級アンプ(デジタルアンプ)がいいかもしれませんね。

D級アンプ 投稿者:BM 投稿日:2009年 1月28日(水)11時06分49秒    

確かにフルデジタルアンプの宣伝文句にはクロスオーバー歪みが無いと書いてます。消費電力も効率がボリュームに関係無く90%以上ですし・・・

Re A級アンプの優位性について 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月28日(水)20時10分8秒    
NJさん、志賀さん

ただ、原理的に言うと、圧倒的にA級の方が歪が少ないのではないでしょうか。アンプに使われる増幅素子の直線性はあまり良くないと言われ、さらにB級で使うとなると組み合わせる2つの素子の特性を全く同じに合わせる必要があり、これはほぼ不可能であると、どこかで読んだ覚えがあります。しかも特性の良い増幅素子は大量生産されたもののほんのわずかであり、この辺は割り切ってその中から特に特性の優れたものを選び取ってアンプに使うそうです。

この図(↓)を用いて説明すると、

http://www.phileweb.com/magazine/audio-course/archives/2007/11/29.html

A級の場合は、直線性の良いところの中間点をバイアス点に選ぶので、歪はほとんどないのに比べ、B級などでは、0V点近くの非直線性の高いところにバイアス点を取るので、信号が+/−反転時のクロスオーバー歪がかなりある上に、+側と−側を増幅する素子の特性が違えば、さらに歪が増えます。特に小信号の場合は、高歪率になると思われるのですが、いかがでしょうか。

Re2 A級アンプの優位性について 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月28日(水)21時39分38秒       
TB さん

>ただ、原理的に言うと、圧倒的にA級の方が歪が少ないのではないでしょうか。

無帰還アンプだとそうかもしれません。しかし、そんなものは実在しないのと違いますか? いずれにせよ、こういうことはデータを探せばすぐ分かることです。ちょっとステレオファイル誌を覗いてみると、

http://stereophile.com/solidpoweramps/1108lux/index4.html

こちらはA級アンプのようです。そして、

http://stereophile.com/solidpoweramps/508mar11s1/index4.html

こちらは、AB級アンプです。

出力vs.THD の図
(下図参照)を見て下さい。むしろ逆になってますね。つまり、歪み率などは回路設計により何とでもなると言うことです。いずれにせよ両者ともTDHは0.1% 以下です。とても差を聴き分けることは不可能だと思いますよ。



参考図 左A級アンプ        右AB級アンプ


Re: Re A級アンプの優位性について 投稿者:NJ 投稿日:2009年 1月28日(水)22時56分24秒    
TBさん

> A級の場合は、直線性の良いところの中間点をバイアス点に選ぶので、歪はほとんどないのに比べ、B級などでは、0V点近くの非直線性の高いところにバイアス点を取るので、信号が+/−反転時のクロスオーバー歪がかなりある上に、+側と−側を増幅する素子の特性が違えば、さらに歪が増えます。特に小信号の場合は、高歪率になると思われるのですが、いかがでしょうか。

TBさんはアンプを自作されるのですか。その場合に限り「A級が断然良い」と申し上げます。昔に比べると今はNFB技術や計測技術が格段に進みましたので、メーカー品をお求めの場合はA級に拘る必要は全くなく、ヒヤリングの結果を尊重して選ばれるのがよいと思います。

実は、私は若い頃に、一度だけタマアンプを自作したことがあります。家には測定器らしきものはテスターのみ。ハンダ鏝だけで作りました。最後の調整は勤務先のオッシロとか発振器をこっそり借用して何とか完成しました。6GB8三結PP勿論A級アンプです。A級とした理由は、ドライブ電圧さえ合わせれば、調整しやすく、NFBもそこそこで歪みが抑えられ、アマチュアが測定器なしに組むには手頃だと何となく思ったからです。大きなタマを使ったのは、A級でもそこそこパワーが欲しかったから。事前に色々考え、プランを練りました。作りやすさを徹底し、バイアスは自己バイアス、ドライブはムラード型でした。アンプを自作されるのでしたら三結A級がベストでしょう。パワーは控えてフィードバック量もそこそことし、発信の虞が全くないくらいの定数を与えるのが良いと思います。それでも歪みはおそらく1%以下でしょう。アマチュアは確実性が第一、マッキンなんかは真似しない方が良いです。ただし、私の6GB8A級PPは、ULで使えば70W位のところ、プレート電源を400V程度に抑えて三結で15W程度だったと思います。電熱器みたいに成っちゃいました。今では環境省あたりから叱られそうです。それより、何方かが奨めて居られたデジタルアンプ、今後は他の方式のアンプより期待できると思います。あれはA級とかB級とかの概念の枠にはまらないものです。私は70歳を超えた年寄りなので、30kgとか50kgなどという重量級アンプはもてあまします。

Re: Re A級アンプの優位性について 投稿者:KZM 投稿日:2009年 1月29日(木)01時29分42秒    
TBさん
>
> A級の場合は、直線性の良いところの中間点をバイアス点に選ぶので、歪はほとんどないのに比べ、B級などでは、0V点近くの非直線性の高いところにバイアス点を取るので、信号が+/−反転時のクロスオーバー歪がかなりある上に、+側と−側を増幅する素子の特性が違えば、さらに歪が増えます。特に小信号の場合は、高歪率になると思われるのですが、いかがでしょうか。

そういう危惧を回避するためにも、ほとんどの家庭用アンプではAB級が採用されておりクロスオーバー歪みは問題ない程度にまで落とされています。

B級はバイアス電流による発熱がバカにならない業務用大出力アンプで採用される方式です。この場合、ほぼ常に大振幅で使うことになるためにクロスオーバー歪みは問題とされません。最近は業務用アンプでも省エネで低発熱なデジタルアンプへの置き換えが進んでいます。

わずかな歪みも嫌うマイクプリアンプ等では未だにA級がよいという意見もありますが、これは消費電力の絶対値が小さいから生き残っている話で、パワーアンプでA級でないと困ることは実際問題としてないと思います。

Re3:A級アンプの優位性について 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月29日(木)20時03分43秒    

アンプについては、皆さんのご回答を総合すると、中級以上のアンプを選べば、A級、AB級などを意識することなく、かなり完成度が高くなっていると見て良いということですね。(中級って、いくら位?というのは問題ですが。。。)

また、前回議論したCDプレイヤーの完成度も十分であることを考えると、残る課題を持っているのはSP(スピーカー)のみであり、今日のオーディオ機器を選択する際の大きな要素としては、いかに良いSPを選ぶかに尽きる、ということになりますね。

Re4:A級アンプの優位性について 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月30日(金)06時25分53秒    
TB さん

>・・・・、残る課題を持っているのはSP(スピーカー)のみであり、今日のオーディオ機器を選択する際の大きな要素としては、いかに良いSPを選ぶかに尽きる、ということになりますね。

オーディオ装置としてはそうですね。しかし、最後の決め手は部屋だと思っています。あまり大きな音が出せない環境(部屋)で大きなスピーカーを使うのは問題だし、そうするとアンプの出力もほどほどでよく(確かに中級という表現は曖昧ですね。正しく設計された適正な出力のアンプといった方がいいかもしれません)、定在波や反射も音質を大きく左右する要素ですから。そうはいっても簡単に変えることが出来ないのが難点ですが。

ここからはスピーカーの歪みについてです。


Re アンプとスピーカ
投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月16日(金)22時44分44秒    
TR さん

>アンプによる音質の差は小さく、最後に音質を決めるのは、スピーカということになるのでしょうか?

はい。おっしゃる通りです。ただし、部屋の影響も大きいですがこれは別枠と考えましょう。

>ところで、スピーカでも歪みはあると思いますが、

それどころか、スピーカーはいわばあらゆる種類の歪みの巣窟といってもいいでしょう。通常、半導体アンプの場合、高調波歪み率は少なくとも0.1% 以下、0.01% というのもざらにあります。

それに対して、スピーカーの場合、コンデンサー型などの例外を除けばよくて1% 程度、周波数域によっては数%にもなります。

参考のため一部のハイエンドスピーカーの測定例を示しておきます。


http://shigaarch.web.fc2.com/electrostaticSP.html

>周波数特性だけでなく、歪み率、IM歪みなどアンプと同じような評価項目は適用できないものでしょうか?

基本的には適用できます。上に挙げたデータは2次と3次の高調波歪みですが、スピーカーの場合、アンプではそれほど問題にならない過渡特性が重要な評価項目となると思います。

Re: Re アンプとスピーカ 投稿者:TR 投稿日:2009年 1月17日(土)08時39分16秒  
志賀さん

スピーカシステム、ユニットで、歪み率を仕様に記載した例は、ほとんど見かけません。出力音圧レベル対歪み率のカーブを取ると、右上がりの曲線で、アンプと同じような特性曲線になるのでしょうか? できれば、基本波(500Hz〜3kHz)付近の特性は、入手可能な一般のスピーカの仕様として一度、みてみたいとものです。

ふだん聴いている音圧レベルは数Wもあれば十分すぎると思うので、歪みは比較的小さいように思いますが、それでもアンプの歪みよりはかなり大きいということでしょうか。

> >周波数特性だけでなく、歪み率、IM歪みなどアンプと同じような評価項目は適用できないものでしょうか?
>
> 基本的には適用できます。上に挙げたデータは2次と3次の高調波歪みですが、スピーカーの場合、アンプではそれほど問題にならない過渡特性が重要な評価項目となると思います。

過渡特性を考慮して、コーン型のスピーカと、ホーン型のスピーカを比べると、ホーン型の方が有利と思いますが、どうでしょうか?

Re2: アンプとスピーカ 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月17日(土)18時56分49秒    
TR さん

>スピーカシステム、ユニットで、歪み率を仕様に記載した例は、ほとんど見かけません。出力音圧レベル対歪み率のカーブを取ると、右上がりの曲線で、アンプと同じような特性曲線になるのでしょうか?

少なくとも、ある出力以上で急に大きくなるという傾向はあるはずです。

>できれば、基本波(500Hz〜3kHz)付近の特性は、入手可能な一般のスピーカの仕様として一度、みてみたいとものです。

確かにあまり見かけませんね。アンプと異なり周波数によってもかなり異なるでしょうから難しいかもしれません。

>ふだん聴いている音圧レベルは数Wもあれば十分すぎると思うので、歪みは比較的小さいように思いますが、それでもアンプの歪みよりはかなり大きいということでしょうか。

http://shigaarch.web.fc2.com/electrostaticSP.html

はい。ここを見てもらえばわかりますが、1Wでも歪率は1% 以上あるのが多く、周波数によっては数%になるものさえあります。当然アンプの歪みより1桁以上大きく、さらに人間の弁別能力約1%を超えるのでブラインドでも差がわかることになります。

>過渡特性を考慮して、コーン型のスピーカと、ホーン型のスピーカを比べると、ホーン型の方が有利と思いますが、どうでしょうか?

そうですね。振動系が軽いので過渡特性に関しては有利ですね。ただ、上にリンクしたサイトのデータを見るとホーン型が最も高調波歪みが大きいですね。原因はよく分かりません。また、これがホーン型特有の性質なのかどうかもわかりません。

RE:スピーカ の歪み率
投稿者:TB 投稿日:2009年 1月18日(日)21時11分59秒    
志賀様、TR様

>1Wでも歪率は1% 以上あるのが多く、周波数によっては数%になるものさえあります。

数%というと、我々はスピーカーでかなり歪みの多い音楽を聴いている、ということになりますね。この歪みは具体的には、音楽成分以外の余計な付属音として聞こえているイメージでしょうか。また、スピーカーによる長時間の音楽鑑賞は、あまり聴覚あるいは脳によくない影響を与えることになるのでしょうか。

Re2:スピーカ の歪み率
投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月20日(火)05時33分3秒       
TB さん

>>1Wでも歪率は1% 以上あるのが多く、周波数によっては数%になるものさえあります。

>数%というと、我々はスピーカーでかなり歪みの多い音楽を聴いている、ということになりますね。この歪みは具体的には、音楽成分以外の余計な付属音として聞こえているイメージでしょうか。

歪みがあることを「音楽成分以外の余計な付属音」を聴いていると解釈するのは少し単純すぎます。歪みについては

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/distortion.htm

で代表的な歪成分である「高調波歪」について説明していますが、ご存じのように、実際の音そのものが高調波成分を含んでいます。楽器にいろんな音色があるのは、音色が高調波成分の分布により決まるからです。従って、これを録音・再生することにより高調波成分の分布が少し変わったからと言って必ずしも不快な音になるとは限りません。それどころか、

http://shigaarch.web.fc2.com/electrostaticSP.html

で紹介した、T社のビンテージスピーカーは結構高歪みですが、昔から多くのファンがいることで有名です。また、さらに歪率の高いA社のホーン型SPを絶賛する評論家もいるようです。つまり、適度の高調波歪みを含んでいる方がいい音と感じる人もたくさんいると言うことです。ただ、上のリンクページで解説しているように、高調波歪みが大きいと必然的に混変調(相互変調)歪みも大きくなり、こちらは、自然の音にはない成分が加わったわけで、これが音を濁す原因だと言われています。

従って、「オーディオの科学」では歪みの少ない「高忠実度再生」をプラスイメージで捉えていますが、これには異論のある人もいると思います。

これは、私の経験から来る意見ですが、ソースに不愉快な歪み成分が多く含まれているような録音を高忠実度再生すると、その欠点が耳につき、かえって不快感が増すということもあるのではないかと感じています。


>また、スピーカーによる長時間の音楽鑑賞は、あまり聴覚あるいは脳によくない影響を与えることになるのでしょうか。

これはどういう意味でしょうか? 例えば、歪みの少ない、イヤースピーカーなどで聴いた方がいいと言うことですか?

一般論として、歪みの多い音を長時間聴くと健康によくないと言う話は寡聞にして知りません。ヘッドホンで長時間「大音量」で聴くと耳を悪くするという話はよく聞く話ですが?


Re3:スピーカ の歪み率
投稿者:TB 投稿日:2009年 1月20日(火)20時22分25秒    
志賀さん

正直言って、ここで紹介されている歪みに関するコンテンツは、初めて読みました。これも、大変わかりやすく良く理解できました。また、スピーカー(以下SPと略)による長時間の音楽鑑賞は・・・については、愚問でしたので、撤回します。考えて見れば、SPで音楽を聴く以前に、現在の世は、自然音よりもシンセサイザー等による合成音に満ち溢れており、聴覚や脳に影響があれば、とんでもないことになりますね。

さて、そうなると真空管アンプと半導体アンプの差など、歪み率と言う観点から見ると、問題にならない程で、本当に好みの問題と言えるようですね。問題は、どのようなSPが歪み率が少ないかですが、基本的に1WAYよりも、2WAY、3WAYというように帯域を分割して、それぞれ適正なSPに割り振る方が、歪みは少ないと言えるのでしょうか。その場合、帯域分割するためのネットワークがまた歪みを生み出す原因ともなるのでしょうか。


スピーカ の歪み率 投稿者:BM 投稿日:2009年 1月22日(木)17時49分24秒    

スピーカーはフルレンジだと一枚のコーンで、色々な周波数を同時で再生するので、一つの周波数を鳴らし、まったく歪みの出ない様なコーンだとして、それらの音楽を再生できるのでしょうか?

NJさん宜しく・・・


志賀注:そもそもそのような理想的振動板が得られないから苦労するわけです。これはちょっと愚問ですね。

Re4:スピーカ の歪み率 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月22日(木)20時37分16秒    
TB さん

>問題は、どのようなSPが歪み率が少ないかですが、基本的に1WAYよりも、2WAY、3WAYというように帯域を分割して、それぞれ適正なSPに割り振る方が、歪みは少ないと言えるのでしょうか。

はい、おっしゃる通りです。ただし、可聴周波数範囲全域をカバーするとしての話ですよ。周波数特性を犠牲にしてよいのであればフルレンジの方がいいでしょう。


>その場合、帯域分割するためのネットワークがまた歪みを生み出す原因ともなるのでしょうか。

理屈の上ではそうですが、実は客観的なデータがあるわけではなさそうですよ。ネットワークによる歪みは主に位相歪みなので検知できるのかどうか疑問です。皆さん、主観による判断でいろんなことを言われていますが決定打があるわけではなさそうです

次に問題となるのは部屋の特性ですが、これについては次のテーマとして取り上げます。

nj1
anpdistortion

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