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PCオーディオとクロックジッター

デジタルオーディオの世界は技術的に複雑で素人には分かりにくく、一見高度に技術的な議論がされています。しかし、ケーブルの議論がそうであるように定性的な議論に終わり、ほとんど定量的な解析がされておらず、音声圧縮技術を除いては、ブラインドテストによる客観的な評価も行なわれていません。そこで、いろんな説が飛び交い、多くの迷信が生まれています。ここで議論の中心となるクロックの精度やジッターの影響もその典型的な一例です。

USB接続のDAコンバータについて 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月23日(金)19時40分45秒  
 
最近、PCにCDをリッピングして取り込んだデータを再生する目的で、USB接続でPCに接続して使うDAコンバータが発売されていて、品切れになるほど人気があるようです。

その効果は、通常のCDプレーヤーの場合、CDの回転を制御するためのサーボ電流が、クロック回路に悪影響を与えてクロックが不安定になり、PLLにより取り込むビット列にゆらぎを生じて、いわゆるジッタの原因になっているのに対して、PCからUSB経由でビット列を取り込む場合は、クロック重畳伝送のSPDIFではなく、FIFO伝送のUSBでビット列を取り込んでDAコンバータ側のクロックでビット列を時間軸に並べることにより、理論上もジッタをCDプレーヤーよりも少なくすることができるというものです。USB伝送の場合、伝送が間に合い、受け側のクロック精度が高ければジッタは極少になるということです。

しかしながら、志賀さんのジッタ論を読むと、現状のCDプレイヤーのジッタのレベルは聴覚上は全く感知不能に近いレベルであり、上記のようなUSB接続のDAコンバータもあまり意味がないこととなるのですが、いかがでしょうか。

Re USB接続のDAコンバータについて 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月23日(金)22時17分51秒    
TB さん

>最近、PCにCDをリッピングして取り込んだデータを再生する目的で、USB接続でPCに接続して使うDAコンバータが発売されていて、品切れになるほど人気があるようです。

いわゆるオーディオプロセッサーのことですね。それなら私も使っています。パソコンのイアフォン出力などのアナログ音声出力は、機器にもよりますがあまりよくありません。パソコンでオーディオを楽しむにはオーディオプロセッサーは必需品でしょう。

>その効果は、・・・・・・・・・・・・USB伝送の場合、伝送が間に合い、受け側のクロック精度が高ければジッタは極少になるということです。

>しかしながら、志賀さんのジッタ論を読むと、現状のCDプレイヤーのジッタのレベルは聴覚上は全く感知不能に近いレベルであり、上記のようなUSB接続のDAコンバータもあまり意味がないこととなるのですが、いかがでしょうか。

そもそも、一体型のCDプレーヤであれば伝送に伴うジッターの問題も生じず安心です。ジッターについてはいろんなことが言われていますが、定量的な議論はほとんどありません。定量的にどう考えたらいいかというと、結局アナログに変換して音にするわけですからアナログ信号としての歪み率やSN比を見ればいいわけです。例えば、私の使っている古い中級プレーヤでも歪み率0.0018%、SN比118dBとなっています。人間が弁別出来るとされているレベルより2桁も小さく、これが少々変わろうと分かるはずがありません。

結論としては、PCでCDを楽しむには色々便利なところもあり面白いかもしれません。その場合はオーディオプロセッサーは必需品でしょう。しかし、これで専用のCDプレーヤーより音がよくなったという報告は思い込みによる心理効果に他なりません。

高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月24日(土)10時02分34秒    

.>いわゆるオーディオプロセッサーのことですね。

違います。具体的に言うと、インフラノイズ社のDAC−1という製品です。(申し訳ありません、USB伝送ではありませんでした)

>そもそも、一体型のCDプレーヤであれば伝送に伴うジッターの問題も生じず安心です。

すみません、話がよく伝わっていなかったようです。要するに、一体型のCDプレーヤであろうが分離型であろうが、現在の仕様では、CDの回転を制御するサーボ電流の影響でジッタの発生は避けられないという議論があります。そこで、ここではDAC側にクロックを持つ有利性を議論しています。
つまり分離型であっても、CDドライブの出力はクロック重畳伝送のSPDIFであり、CDドライブ側のクロックに乗っかったビット列が、DACに伝送されます。DAC側では、ジッタのあるビット列をそのままDA変換するのみなので、ジッタが残ってしまうという話です。本製品の場合は、DAC側で発生させたクロックに再度ビット列を乗せかえます。ここがミソで、このようなDACの場合、下記のような有利性があります。

(1)CDプレーヤー(ドライブ)側にクロックがある場合、CDの回転を制御するサーボ電流(激しく変化する)の影響を受けて、クロックそのものが不安定になる。
(2)その不安定なクロックにビット列を乗せるために、ジッタが発生する。
(3)DAC側のクロックに再度ビット列を乗せかえれば、そのような影響は受けない。
(4)DAC側は、サーボ電流のように激しく変化する電流が発生しないために、クロック精度を上げることが可能である。

以上のような理由で、ジッタ極小論が議論され、上記製品の音質向上の大きな要因とされているようです。確かに、ここでは具体的なジッタの測定値などなく、仮説的な話が多いので定量的な議論になっていないですが、我々のようなシロートから見ると、つい納得しそうな話ではあります。もしそうであれば、そのような高価な製品でなくても、たとえばONKYOのSE-U33GXのようなUSB接続のDACでも同じ効果があるのではないか、と思った次第です。問題は、サーボ電流でどれほどクロックが揺さぶられるかですが、このあたり、志賀さんはどうお考えでしょうか。

Re 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月24日(土)20時02分1秒    
TB さん

具体的な商品名が出たところで、この件はノーコメントとします。

http://shigaarch.web.fc2.com/OldBBS/70samebinaryfiles.html

このまとめの最後の方をご覧下さい。

>問題は、サーボ電流でどれほどクロックが揺さぶられるかですが、このあたり、志賀さんはどうお考えでしょうか。

一般論として、この話はよく出てくる話ですね。しかし、全く定量的な話になっていません。それと、少なくとも中級機以上では、デジタル系とアナログ系の電源を別にするなど対策が取られているはずです。その必要があるのかどうかも定かでないですが。

実は、TBさんが紹介された製品のHPを覗くと、「電波時計の搬送波による補正」云々の話がでており、賢明な諸氏にはこの時点でどういうものかおわかりになると思います。

Re: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:KZM 投稿日:2009年 1月25日(日)01時32分56秒    
TBさん

>現在の仕様では、CDの回転を制御するサーボ電流の影響でジッタの発生は避けられないという議論があります。・・・

> 以上のような理由で、ジッタ極小論が議論され、上記製品の音質向上の大きな要因とされているようです。

この風評について、提示された最初の推測から一歩でも進んだ「議論」が為されているのを見たことがありません。どのような「議論」があるのでしょうか。

議論のルールとして、意見の主張者側に論拠を示す説明責任があります。今回ならば、論者はサーボ電流がアナログ信号に影響を与えているという実験結果を示す必要があります。(実験が困難なときは別ですが、今回はそうではない)

そうでない証拠がないではないか、というのは論拠になりません。説明責任の所在を履き違えています。

もしサーボ電流が影響しているとすると、わざと読み取りにくくした無音のCDを再生したときのノイズレベルという形で評価できます。ジッターが問題なら単音を再生したときに位相雑音が広がっていることを定量的実験で示してください。

Re: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月25日(日)10時29分19秒    
志賀様

>一般論として、この話はよく出てくる話ですね。少なくとも中級機以上では、デジタル系とアナログ系の電源を別にするなど対策が取られているはずです。。。

そうですね。私も定性的な議論が先行していて、定量的な(サーボ電流によってどの程度クロックが揺さぶられているかの)データが示されていないのは、非常に問題だと思います。恐らくそのデータが測定されていたとしても、人間の聴力の検知限以下なので公表しないのかもしれませんが。。。ただ、その反論として、人間の耳は現在のどの測定機器よりも高性能であり、わずかな時間軸のゆらぎも検知可能だという話もありまして、
(http://www.jaist.ac.jp/ricenter/tokkyo/miyahara2.html)
具体的にはジッタが大きいと音像のフォーカスが甘くなるようです。

KZM様

>今回ならば、論者はサーボ電流がアナログ信号に影響を与えているという実験結果を示す必要があります。

すみません。「サーボ電流がアナログ信号に影響を与えている」ではなくて、サーボ電流がクロック発生回路に影響を与えている、という話です。何度も書いて申し訳ないですが、クロック回路への影響によるジッタを議論しているということで、ご理解いただければ、と思います。


Re2: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月25日(日)11時07分2秒    
TB さん

>ただ、その反論として、人間の耳は現在のどの測定機器よりも高性能であり、わずかな時間軸のゆらぎも検知可能だという話もありまして、
http://www.jaist.ac.jp/ricenter/tokkyo/miyahara2.html

>具体的にはジッタが大きいと音像のフォーカスが甘くなるようです。

これは特許公報ですね。特許というのは新しいアイデアであれば、ちゃんとした学問的検証がなくても出せるし、通ることもしばしばありますよ。少なくともリンク先の報告を見る限り、どの程度のジッターだと検知可能か分からずお話の域を出ていません。

もう少し、ちゃんとしたデータなら


http://adlib.rsch.tuis.ac.jp/~akira/hit/papers/

このグループの研究報告にいろいろあります。この中には見あたらないですが、同じグループの

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/Jitter.pdf

この報告を見ると、プレーヤで生じるジッター程度では差がわからないようですよ。はっきり差がわかるという報告は見あたりません。

Re: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:KZM 投稿日:2009年 1月25日(日)16時54分12秒    

>ただ、その反論として、人間の耳は現在のどの測定機器よりも高性能であり、わずかな時間軸のゆらぎも検知可能だという話もありまして、
> (http://www.jaist.ac.jp/ricenter/tokkyo/miyahara2.html)
> 具体的にはジッタが大きいと音像のフォーカスが甘くなるようです。

この内容に「人間の耳は現在のどの測定機器よりも高性能」と書いてありますか?普通のプレーヤが十分かについては何も触れられていません。
書いてあるのは、わざとクロックを揺すった場合に想定よりもずっと弁別分解能が高かったということです。(人間の時間分解能を測るにはこの方法は適切です。)

以下敢えて厳しい書き方をします。

再度書くと、具体的にどのような「議論」があるのか未だにさっぱり見えてきません。クロックをひどく揺らせば音質変化を感じることは当然です。具体的にとは、ジッターが極めて大きくなったときにどうなるかではなく、通常のプレーヤのオーダーのジッターが人間の時間分解能とどのような定量的相関を表すかです。このあたりを理解しないと「塩が入っている料理は塩辛い」というようなことを正しいと考え始めます。どういうことかわかりますか?

ジッターの値を見ながら主観でああだこうだと言い合うのは議論とは言いません。感想文の発表会です。

Re: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月25日(日)18時08分18秒    
志賀様

>この報告を見ると、プレーヤで生じるジッター程度では差がわからないようですよ。

確かにそうですね。いずれにせよ、私が言いたかったのは、最近の方向性としてPCに音楽データを取り込んで、USB接続したDACを使って再生すれば、DAC内のクロック(高精度が条件ですが)でビット列を再度取り込むので、こういう問題は無くなって、少なくともジッタに関する問題はクリアーされるのではないかと考えました。ただ、最近の中級以上のCDプレーヤーであれば、前回のご回答にあったとおり、この問題も解決されているのかも知れませんね。

KZMさん

すみません、少し感情的なっておられるようですが、私は業界筋の人間でもなんでもなく、ごく普通のサラリーマンなので、誤解なきようお願いします。ご指摘の点ですが、【効果】のところで、「人間の聴覚は信号のレベル方向のみならず、「時間方向の伸び縮み歪み」に従来の常識を越えたけた違いに高い感度を有することが明らかになった。」と書いてあったのを引用したのですが、古い論文なので今では見解が変わっているかも知れません。

Re: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:KZM 投稿日:2009年 1月25日(日)19時11分16秒       
TBさん

この手の話はろくな議論になっていないのに結論ありきで話が進む(内容は一歩も進まない)ことが多いのです。むしろ、ある程度はっきりした位相雑音の臨界値が出てきてくれることを期待しています。

文章表現はよくなかったと思いますけど、僕は別に怒っているわけでもなんでもないので誤解のなきように。TBさんが論理思考を失っていない方であることはわかりましたのでその点は安心しました。

Re3: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月25日(日)19時50分6秒       
TB さん

>・・・こういう問題は無くなって、少なくともジッタに関する問題はクリアーされるのではないかと考えました。

本当に問題なのかどうかさえあやしいですよ。普通の水晶発振器で十分かもしれません。少なくともそれを否定する客観的データはないと思います。

この件についてはKZMさんがいわれる通り、理屈が先行し、そのの理屈でバイアスがかかった主観的な聴感で検証したつもりになっている報告ばかりのような気がします


Re3: 高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:TB 投稿日:2009年 1月26日(月)20時10分1秒       
志賀さん、KZMさん

議論にお付き合いいただき、ありがとうございました。(お二人からすれば、議論と言えるものではなかったかも知れませんが。。。)
最近、団塊の世代をターゲットにしてオーディオ業界がまた盛り上がってきているように思います。なけなしの退職金を使って、かってあこがれだったブランドの製品を揃え、昔集めたLPレコードを聴くために、高価なレコードプレーヤーも買ってシステムを固めたものの、思い描いていた音にならず、オーディオ雑誌にある「使いこなしが重要」とばかり、高価なケーブルなどを買い込んで、出費地獄に陥る人が出てきているようです。

私自身も、後期の団塊の世代に入りますが、お金を使わずに工夫次第で、いくらでも良い音にできると思っています。やはりそれに必要なのは、「オーディオの科学」にあるような科学的に正しい知識がベースとなると思います。

Re4:高精度クロック搭載のDAコンバータについて 投稿者:志賀 投稿日:2009年 1月26日(月)22時07分49秒    
TB さん

とかくオーディオ界の「常識」なるものは科学の目から見ると、とんでもない知識が蔓延しています。この掲示板は一旦これらの「常識」をリセットし考え直すことを旨としており、少し戸惑われたかもしれません。これに懲りず、またどしどし投稿して下さい。


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