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ダイナミックレンジ U

前半は主にSACDのダイナミックレンジや記録容量の話。後半はLPやテープ録音のイコライジングの話です。

質問 投稿者:HF 投稿日:2007年 5月11日(金)12時49分55秒

オーディオのクラス分けの、規準ってなんですが。AV全体の価格なんでしょうか?それとも1つのシステムなのでしょうか。1つのシステムのアンプとスピーカだけなら、ほとんどが自作なのもありBクラスですし(ソースがPCなのと、聴く音楽によりスピーカーを切り替えているので)AVの機材や編集用ソフトまで入れると結構高額になるので。

ダイナミックレンジについて24BitのSACDが120dBとなっていますが、16BitのCDが100dBのダイナミックレンジを得ることが可能なのでしょうか?うちのシステムでは70dB強位なので、検討の余地があるのか知りたいので。

Re 質問 投稿者:志賀 投稿日:2007年 5月11日(金)16時22分47秒
HF さん:

<オーディオのクラス分けの、規準ってなんですが。>AV全体の価格なんでしょうか?それとも1つのシステムなのでしょうか。1つのシステムのアンプとスピーカだけなら、ほとんどが自作なのもありBクラスですし(ソースがPCなのと、聴く音楽によりスピーカーを切り替えているので)AVの機材や編集用ソフトまで入れると結構高額になるので。>

以前(4月14日)オーディオシステムのクラス分けの話がでてきましたが、これはもちろん主観的な話で客観的な基準というわけではありません。DAさんの分類を便宜的に使わせてもらっただけです。おそらく、一般的な市販品をつかった標準的なシステム(CDP+アンプ+スピーカー)を念頭においてのことと思います。自作の場合は金額だけでは測れないでしょう。

<ダイナミックレンジについて24BitのSACDが120dBとなっていますが、16BitのCDが100dBのダイナミックレンジを得ることが可能なのでしょうか? >うちのシステムでは70dB強位なので、検討の余地があるのか知りたいので。>

SACDが24bit 120dB というのはどこから出てきた数値ですか? SACDは1bitなんですが? 確かに私のHPでもSACDのダイナミックレンジは120dB と書いてありますが、これはSonyのサイトからの引き写しで算出の根拠は定かでありません。周波数によってもかなり変わると思います。一方、CDのダイナミックレンジが96dBというのはフルビット対1ビットの比をdB単位で表したものであくまで理論的な値です。すなわち、dB(CD)」=20*log(2^16)=96.3 という計算です。実際はディサノイズを始めいろんなノイズのためこれより小さいでしょう。実際上は、

http://shigaarch.web.fc2.com/dynamicrange.html

にもあるように70dB あれば十分なんだと思います。

クラス分けについて 投稿者:DA 投稿日:2007年 5月11日(金)19時21分32秒
HF さん 志賀 さん

私の分類は、何か出典があるわけではなく、私の独断に近いものです。まずは、アンプの価格をベースに考えています。

D社やO社等の製品では、5万円程度で、100dB、100KHZ、100W程度の性能の製品があります。

これとバランスのとれたスピーカー、プレイヤー(専用ないしユニバーサル)の価格がそれぞれ5万円程度です。したがって、アンプ、スピーカー、プレイヤー3点で15万円となりますが、値引き等で、10万円程度で入手できます。

このあたりが、出発点かなと思います。アンプも30万円程度までは、種々の付加価値や、出力で価格が決まっていて、聴くコンテンツや、部屋の条件(あまり大きな音は出せないとか)によっては、必ずしも高価なものが良いとは限らない。組み合わせを工夫すると、安価なものでもむしろ優れていることが多々あると思います。

30万円の製品の場合、アンプとプレイヤーとスピカーがそれぞれ同価格とすると、30万円×3=90万円、切りよく100万円というところです。

アンプやスピーカーも30万円を超えると、部品の質もかなりよくなって、5万円の製品より明らかに優れているのは認めざるをえないと思います。

良心的な店員は、M社やB社の製品を相談すると、30万円以上でないと、あまり意味がないから、よく考えたほうがいいと言ってくれます。そのあたりに根拠がありそうです。

ざっとこんなものかなと思います。人によって色々でしょうから、ものによっては、3点セットで50万円でもSクラスに相当するものがあってもおかしくないと思いますが、相当、眼が(耳が)肥えていないと難しいのではないかと思います。

それ以外の編集ソフト等の価格はキリがないので算入していません。

ただ、Aクラスの下程度なら、PC以外はサウンドプロセッサやソフト合わせて5万円程度のもので十分ですし、フリーソフトもあります。PC内蔵のサウンドカードも評判は悪いようですが、全く使えないというほどのものでもない。16ビットー48KHzが上限だというだけです。

PCはオーディオ専用にする必要は特にないので、価格に含める必要はないでしょうし、Aクラスの上、Sクラスになれば無視できます。

RE2:クラス分けについて 投稿者:HF 投稿日:2007年 5月11日(金)22時05分29秒
志賀さん、アドバイスありがとうございます

http://web.archive.org/web/20070821115600/http://www.super-audiocd.com/aboutsacd/format.html

の説明で24Bitだと思ったのですが、1Bitは単にパラレル→シリアル変換と言う事でよろしいのですよね?16bitがダイナミックレンジだとするとピアニッシモ(最小音)はどうなるのでしょうか?

DA さん
アンプはクラッシック用に自作で特性は出力は純A級10W×2(最低歪率時)。スピーカ保護の為20Wrmsで出力電流をリミットしています。
電源容量300Wトロイダルコア、電解コンは0.1F
スピーカーはYAMAHAのスーパーウハー75W、ALTEC CF404、ソフトドームツイター。
イージーリスニングにはAURATNEのキューブ
POPやロックにはRAMSA(松下)(ジャンクを1万円で買って自分で修理)のPA(100W)にBOSSMANのスピーカー(箱は自作密閉型)
今検討中なのがバイブロトランスデューサーを中古のバイオリンに付けたのを視聴した所、実にいい感じなので、バイオリンが高価なのでひそかな野望ですが。

SACD のダイナミックレンジ 投稿者:志賀 投稿日:2007年 5月11日(金)23時24分14秒
HF さん:

http://web.archive.org/web/20070821115600/http://www.super-audiocd.com/aboutsacd/format.html

<の説明で24Bitだと思ったのですが、1Bitは単にパラレル→シリアル変換と言う事でよろしいのですよね?>

このサイトの説明はあくまでCDとの比較優位性を主張したいための説明のようです。

本来のSACDはあくまで図の上側、すなわち1bitで貫く方式です。

重要なのはサンプリング周波数が2822.4kHz ということです。これを24bitのPCM化すればダイナミックレンジは145dB 程度になりますが、これはあくまで計算上のものであって、実際にそうしているわけではありません。なぜなら、図の下側に書いてあるように、この場合サンプリング周波数fsはCDと同じ44.1kHz(44.1x64=2822.4)を採っており、最高周波数が100kHz という宣伝文句と矛盾します。ダイナミックレンジを120dB とすれば、これは20bitに相当し 周波数レンジは上がりますが何故100kHz までとなるのかちょっとわかりません。

いずれにせよ、SACDのダイナミックレンジがどうなるかは別の因子で決まるようです。それが何かはよくわかりません。


<16bitがダイナミックレンジだとするとピアニッシモ(最小音)はどうなるのでしょうか?>

16bit のダイナミックレンジは96dB なので110dBの大音響がfffとすれば、最小音は14dB となり、静かな住宅内のノイズレベルより15dB小さい、すなわち、約1/6 の小さな音ということになります。

Re: SACD のダイナミックレンジ 投稿者:HD 投稿日:2007年 5月12日(土)00時17分28秒
志賀さん, HF さん:

<重要なのはサンプリング周波数が2822.4kHz ということです。これを24bitのPCM化すればダイナミックレンジは145dB 程度になりますが、これはあくまで計算上のものであって、実際にそうしているわけではありません。なぜならこの場合サンプリング周波数はCDと同じ44.1kHz、つまり周波数リミットが22kHzとなり最高周波数が100kHz という宣伝文句と矛盾します。ダイナミックレンジを120dB とすれば、これは20bitに相当し 周波数レンジは 2822.4/20/2=70kHz となり100kHz まで及びません。100kH-120dB というのはちょっとさばを読んだ値ですね。>

<いずれにせよ、SACDのダイナミックレンジがどうなるかは別の因子で決まるようです。それが何かはよくわかりません。>


国産のある高級マルチププレーヤをアメリカのstereophile誌が特性を評価した記事によれば、

”Fig.5 shows spectral analyses, performed with a swept 1/3-octave bandpass filter, of the PLAYER's output while it decoded data representing a dithered 1kHz tone at -90dBFS from CD (16 bits, top below 6kHz), SACD (DSD, top above 6kHz), and DVD (24 bits, bottom). The increase in bit depth drops the noise floor by around 15dB, implying DAC resolution at around the 19-bit level, which is excellent. (Ignore the slight peak in the DVD traces around 16kHz, which is due to interference from the TV monitor I was using to navigate the Chesky test DVD's track menu.) The SACD traces overlay those of the 24-bit DVD below 1kHz, but above that frequency they start to be affected by the medium's rising noise floor. As a result, and as I've noted before, SACD actually has less dynamic range than CD in the audioband above 6kHz or so. As with other SACD players, the PLAYER's ultrasonic noise peaks at around -45dB between 80 and 120kHz

と言う事で十分可聴周波数内の6KHzより高い周波数のダイナミックレンジはCDより悪くなると書いてあります。また、解像度の実力は19bit程度だそうです。(但し低域はCDよりノイズレベルは低く24bit/96KHz PCMと同じ位の低域のダイナミックレンジがあると言うことです。

この雑誌は他にもいろいろな機種の評価・測定を掲載してますが良い機種でも10KHz以上でノイズレベルがCDより悪くなってます。

またSACD規格では、ハイレベルの高域ノイズから器機を保護する為60KHzで-3dBのローパスフィルターを使うように指定してあるそうですから、100KHzまで出るプレーヤは無いのでしょう。

<<16bitがダイナミックレンジだとするとピアニッシモ(最小音)はどうなるのでしょうか?>>

<16bit のダイナミックレンジは96dB なので110dBの大音響がfffとすれば、最小音は14dB となり、静かな住宅内のノイズレベルより15dB小さい、すなわち、約1/6 の小さな音ということになります。>

コンサートホール自体のバックグラウンドノイズは多分40dB位はあると思われますので14dBの音量の音は聞えないと思います。

チャイコフスキー6番(悲愴)の提示部の終わりはppppppと指定されてますので原曲のファゴットではこんなに小さい音は出せないのでバスクラリネットを使う事が多いのですがそれでも客席ではっきり聞えますから45dB以上出ていると思います。

Re2:SACDのダイナミックレンジ 投稿者:HF 投稿日:2007年 5月12日(土)12時56分58秒
HDさんどうもありがとうございます。

SACDのサンプリングクロックが2.8MHzっていうのがにわかに信じられませんが、サンプリングレートが約50倍で同じPCM方式でデータが16から24ですから1.5倍、75倍の情報量って事ですからCDが約70分とすると56秒しか記録出来ない事になります、DVDに入れても10分ちょっとって事ですよね何処かで圧縮するかデータを間引かないとつじつまが合わないような。

Re: Re2:SACDのダイナミックレンジ 投稿者:HD 投稿日:2007年 5月12日(土)13時43分1秒
HF さん:

<SACDのサンプリングクロックが2.8MHzっていうのがにわかに信じられませんが、サンプリングレートが約50倍で同じPCM方式でデータが16から24ですから1.5倍、75倍の情報量って事ですからCDが約70分とすると56秒しか記録出来ない事になります、DVDに入れても10分ちょっとって事ですよね何処かで圧縮するかデータを間引かないとつじつまが合わないような。>

SACDはDSD方式(いわばパルス密度変調)ですからPCMとは全く違うADコンバート方式です。 ノイズシェーピングによる高域へのノイズ掃き上げを96Khz/24bit PCM並みに少なくする為にはクロックを11.2MHzにしないと駄目という説もあります。こうするとSACDの特徴でもある5.1 チャンネルサラウンドがCDと同じ直径のディスクに入りきらないですね。で、2.8MHzで妥協したのではないでしょうか?

http://web.archive.org/web/20070821115600/http://www.super-audiocd.com/aboutsacd/format.html

Re3:SACDのダイナミックレンジ 投稿者:志賀 投稿日:2007年 5月12日(土)16時54分4秒
HF さん:

横から失礼します。


<SACDのサンプリングクロックが2.8MHzっていうのがにわかに信じられませんが、サンプリングレートが約50倍で同じPCM方式でデータが16から24ですから1.5倍、75倍の情報量って事ですからCDが約70分とすると56秒しか記録出来ない事になります、DVDに入れても10分ちょっとって事ですよね何処かで圧縮するかデータを間引かないとつじつまが合わないような。>

何か誤解しておられませんか? SACDはあくまで1bitですよ。

大雑把な計算をしますと、CDではディスク容量は約600MB=4.8E9 bits=M
1秒間の情報量は 44.2kHzx16bitx2ch=1.41E6 bits/s=m とすると、
M/m=3400sec 変調や誤り補正符号のためもう少し短くなります。

一方、SACDでは、ディスク容量 4.7GB=3.76E10 bit=M'
m'=2.8MHzx2ch=5.6E6 bits/s, M'/m'=6700sec とまだまだ余裕があります。従って5.1ch やハイブリッドも可能だということだと思いますが?

つまり、1秒当たりの情報量(m'/m)は約4倍でもディスク容量(M'/M)は約7倍あるのでSACDの方が余裕があるというわけです。

ついでに、24bitー96kHz のDVD-Aだと、m=4.6E6 bits/s、M/m=8000sec これまた十分余裕があります。


以下は、録音時に施されるプレ・エンファシスと再生時のデ・エンファシスの話です。

下記の書物の引用にあるように、LPレコードやテープ録音等のアナログ録音ではS/N比を上げダイナミックレンジを稼ぐため、かつ録音時間を出来るだけ長くするため、録音時には低音圧縮・高音伸張
(プレ・エンファシス)を施し、再生時に元へ戻します(デ・エンファシス)。これは、音圧が一定の場合、低音ほど振幅が大きくなり、LPの場合溝の横方向振幅が大きくなり溝間隔が広くなってしまうのを防ぐため、高音ではスクラッチノイズに打ち勝つために必要です。また、テープ録音の場合は低音では記録媒体の飽和磁束密度が不足するため、高音ではテープヒスノイズに打ち勝つためです。この時、圧縮・伸張の程度はLPの場合は初期のものを除いてRIAA規格に統一されています。デジタルの場合は基本的にはその必要はないのですが、初期のCDの場合再生時のフィルターがアナログだったため、量子化ノイズに打ち勝つため、プレ・エンファシスで高音を持ち上げた録音があったようです。この場合、プレ・エンファシスの有無はデジタル情報として埋め込まれ再生時にデ・エンファシスを掛けるかどうかは自動的に判断されるようです。

ダイナミックレンジの話 投稿者:OB 投稿日:2007年 5月16日(水)12時53分30秒

ジョンアーグルの本がようやく手に入りました。素晴らしい本だと思います。先日の話題に関係するかと思い、引用いたします。
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ジョン・アーグル、沢口真生・訳
「ハンドブック・オブ・レコーディング・エンジニアリング 第二版」、
ステレオサウンド社、2004
============================================================================
◆第30章 6. CD のマスタリング (p.448)

CDの特性は、フラットな特性をしている点にあります。そのため磁気テープやLPレコードで見られたようなプリ/デエンファシンスと言った加工は必要ありません。基本的にはオリジナルの特性が手を加えずにそのまま記録できるメディアであるといえます。しかし、ユーザーオプションで、10dbのプリエンファシスが選択できその場合は信号の中にその有無がフラグとして立ち、再生時には自動的にデ・エンファシスが働きます。現実には、これを使用しないというのがマスタリング・エンジニアの共通の考え方です。

マスタリングの段階では、アナログ・メディアで行っていたような処理工程を考える必要がないと述べましたがこれは、ある意味で落とし穴に入ることにもなりました。それは特にCDソフトの出始めた頃の状況で顕著でした。

レコードメーカは、本来LPレコードのマスタリングのために作ったマスターを、そのままCD化してしまったのです。これはLPメディアに当てはめるためのイコライジングやリミッター処理が行われておりCDで再生すると、とてもぎらぎらしてきつい音になります。これがオーディオ愛好家の間でアンチCD派を作る要因にもなり、今日そうしたマスタリングが行われなくなったにも関わらずそうした意見が聞かれる素地になったのです。

参考文献
[1] J. Eargle, "Do CDs Sound Different?" Audio Magazine (November 1987)
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◆第22章 5. 楽器が持つ音響特性 (p.329)

各楽器が持つダイナミックレンジは、(中略)弦楽四重奏を例にすると、30dB程度であり(中略)オーケストラになると(中略)70〜75dBに及びます。(中略)しかし残念なことに家庭における聴取条件は、こうした広いダイナミックレンジをそのまま再生できるほどの環境ではありません。

表22-1 各楽器の最大出力とレベル
------------------------------------------------------------
音源 最大出力(W) 3.3m地点でのレベル(dB) LP *1
------------------------------------------------------------
男性話声 0.004 73 dB
女性話声 0.002 70
クラリネット 0.05 83
ベース 0.16 89
ピアノ 0.27 91
トランペット 0.31 92
トロンボーン 0.6 95
ベースドラム 25 110
オーケストラ 70 105 *2
------------------------------------------------------------
<注> *1 DI=0 として測定
*2 10m地点での測定 (クヌードセン&ハリスによる)
* Acoustical Designning in Architecture,
American Institute of Physics, NY
============================================================================


DI というのは放射指数のことのようで、DI=0 というのは全指向性放射(反響版などは一切無し、の意?)ということのようです。この辺りは姉妹書の「ハンドブック・オブ・サウンドシステム・デザイン」にとても詳しく書かれているのですが、まだ読みこなせておりません。どちらも私には高度すぎるのですが、物理学・音響学ベースで書かれており、余計な形容詞("艶やかな"音など)が無く、是非ともきちんと理解したいと思っております。

項目欄の右端にあります (dB) LP の LP は、よく dBSPL と書かれる Sound Pressure Level の LP(Level of Pressure?) かと思ったのですが、いかがでしょうか。

Re: ダイナミックレンジの話 投稿者:HD 投稿日:2007年 5月16日(水)15時39分31秒
OB さん:

詳しいご説明有難う御座います。

<レコードメーカは、本来LPレコードのマスタリングのために作ったマスターを、そのままCD化してしまったのです。これはLPメディアに当てはめるためのイコライジングやリミッター処理が行われておりCDで再生すると、とてもぎらぎらしてきつい音になります。これがオーディオ愛好家の間でアンチCD派を作る要因にもなり、今日そうしたマスタリングが行われなくなったにも関わらずそうした意見が聞かれる素地になったのです。>

この箇所ですが、LPへのカッティング時のイコライジング以外にも録音マスター(テープ)作製時にF特等に何かの加工がされていたのでしょうか?1954に統一されたRIAAのLP再生時のイコライジングカーブは、

http://en.wikipedia.org/wiki/RIAA_equalization

ですから、この逆のカッティング時のイコライジングでCD化されたら聞けたものではないと思いますが。。。尤も、当時のレコーダのS/N等の能力に応じたコンプレッションやリミッターはかけられていると思います。

<項目欄の右端にあります (dB) LP の LP は、よく dBSPL と書かれる Sound Pressure Level の LP(Level of Pressure?) かと思ったのですが、いかがでしょうか。>

LPとは、

『強さI 〔W/u〕,音圧P 〔Pa〕の音について,次のLI を音の 強さのレベル(sound intensity level),LP を音圧レベル(sound pressure level)と呼ぶ。同じ音では同じ数字である。
LI =10log10 I/10−12〔dB〕
LP =10log10(P/2×10−5)2
   =20 log10 P/2×10−5〔dB〕』

だそうですから仰せの通りと思います。

Re: ダイナミックレンジの話 投稿者:OB 投稿日:2007年 5月16日(水)19時04分53秒
HDさん:

<この箇所ですが、LPへのカッティング時のイコライジング以外にも録音マスター(テープ)にF特に何かの加工がされていたのでしょうか?>

全く同感です。
先日の話題に関係ありそう!と思い投稿したのですが、理解はできておりません。既知の RIAA 加工を正さずにCD化するなどあり得ない(=別の加工がなされていた)と思ったのですが・・・。「特にCDソフトの出始めた頃の状況で顕著」だったそうなので、あるいはアナログレコード同様にCD作成してしてしまった時期があったと言うことでしょうか?

教えて頂いた Wiki サイトに
 Prior to that time - mainly between 1940 and 1954 - each record company applied its own equalization; there were over 100 combinations of turnover and rolloff frequencies in use, the main ones being AES, LP, NAB and FFRR.

とあり、主要レーベルの補正ならともかく、100種以上全てについて正しく補正できなかった(記録特性の資料が残っていなかった?)・・・とかなのでしょうか?

p.421 にコロンビア、HMV, AES, NAB 等の記録特性グラフもあったのですがどれもバラバラです。CAPITOL, HMV (78回転)は 200Hz以上フラットでしたが、NAB・コロンビアは1kHz以上、AESは2kHz以上から高音ブースト記録だったそうです。

ひょっとすると、数十年前のマスターを利用したCDで、ノイズが多いとかではなく、どうも音がおかしいように聞こえる物は、なんらかの RIAA 風イコライジングを加えてあげれば、何とかなったりする可能性があるのでしょうか?

<LP =10log10(P/2×10−5)2=20 log10 P/2×10−5〔dB〕>

ありがとうございます。納得いたしました。

(無題) 投稿者:NS 投稿日:2007年 5月16日(水)22時36分13秒
RIAAが策定された場合でも、そのままレコード会社独自のイコライザーを使っていたという例はたくさん有ります。

Re: ダイナミックレンジの話 投稿者:DA 投稿日:2007年 5月20日(日)05時28分25秒
OB さん

<ひょっとすると、数十年前のマスターを利用したCDで、ノイズが多いとかではなく、どうも音がおかしいように聞こえる物は、なんらかの RIAA 風イコライジングを加えてあげれば、何とかなったりする可能性があるのでしょうか?>

ピッチが明らかに狂っていれば、それも可能でしょうが、本の音が分からない限り、自分の好みに合わせて再編集するのと変わらないのではないでしょうか。むしろ、そう割り切った方がよいと思います。

ところで、ソースの件ですが、以前、私が指摘した

グラモフォンのベートーベン交響曲集(カラヤン+BPO ADD POCG-3674/9)、などは、RIAAの補正をやりすぎたような感じがあります。低音域(100HZから数百Hz)が若干強調されすぎの感じがするのです。したがって、ウーハーだけで音を出しているかのように聴こえます。

その結果か、ストリングが遠くに聞こえ、まるでストリングの前面に管楽器や打楽器を配置しているように聞こえます。特に、フィデリオ序曲が顕著です。

ホールの後ろから聴けば、こう聴こえるかもしれませんが、そこまでする必要があるか?

録音は、1960年代から70年代にかけてなされたもので、ものとしては超一流です。2004年か2005年に5枚組み1万円で買いました。これは、CDが出始めたころにマスタリングされた記念すべき製品の可能性もあります。

ここからは、私の推測(妄想)になるので、適当に聞き流していただいて結構です。

CDが製品化されたあたりに、量子化ノイズ等に付随するノイズ対策で、高音域を押さえる必要があったのではないか。CDプレイヤーのリリースにマスタリンングが間に合わず、仕方なく高音域を押さえたものにせざるをえなかった。カラヤンほどの権威がOKを出せば、編集者もためらうこともなかった。

実は、CDプレイヤーが出始めの頃、正確な時期は忘れましたが、私の知り合いの田舎の楽器屋さんが、CDプレイヤーを見せてくれたことがあります。「これはすばらしい音だ。」と悦にいっているが、やけにノイズが多い。「ちょっとアンプの調子が悪くてね。」と一生懸命釈明していました。「おじさん、せっかくの珍しいものだから、アンプをけちりなさんな。」と大笑いしたことを覚えています。

CDとレコードを比較して誰でもわかる利点は、針飛びが無い、クラックルやスクラッチノイズが無いことです。それが、何かプチプチ音をたてれば、CDって何なのということになります。

そういう混乱もあり、その時のマスタリング手法が、出回ってしまった可能性があるのではないか。

ちなみに、私は、カラヤンのレガート奏法が嫌いなので、そのせいもあるかもしれません。

カラヤンの名誉のために付け加えますが、1979年録音のマーラーの9番は傑作です。カラヤンのレガート奏法が完璧に活かされています。

当時は、マーラーを聞くには自分のシステムがボロすぎてマーラーは雑音でしかなかった。2枚組みLPなんか、簡単には買えなかったことから、食わず嫌いになっていたようです。

Re: ダイナミックレンジの話 投稿者:OT 投稿日:2007年 5月20日(日)09時55分31秒
はじめまして。いつも参考になるお話ありがとうございます。

さて、LP時代に逆RIAA補正以外の加工があったかですが、五味康介のいくつかの著書に、氏が一度カッティングをさせてもらったときの話がありました。それによると、マスターテープそのままカッティングした五味氏の音は、本人も不満な結果に終わりました。対して、その場にいたエンジニアには中高域をわずか持ち上げ、15kHz以上は減衰させるというノウハウがあったそうです。このエンジニア氏の操作は逆RIAAとは異なるので、カッティングにはさらに逆RIAA補正されているのでしょう。録音エンジニアの腕について五味氏も認めていました。

同様な操作がされた、いわばリマスターテープが残っており、それをそのままもちろん逆RIAA補正せず、初期CDには使われたのではないでしょうか?その後初期CDプレーヤーの量子化ノイズ対策からレガートリンク、倍速サンプリング等の進歩とともにリマスターのノウハウも変化していったと思われます。かつての演奏が再発売されるごとにリマスターされるのもその辺りの試行錯誤の表れだと思われます。それが進歩であればいいのですが、CDラジカセのような安い装置でも聴き映えする音にしている場合もあるようですね。

マスターテープのエンファシス特性 投稿者:志賀 投稿日:2007年 5月20日(日)22時49分48秒
============================================================================
ジョン・アーグル、沢口真生・訳
「ハンドブック・オブ・レコーディング・エンジニアリング 第二版」、
ステレオサウンド社、2004
============================================================================

この本の内容正確だと思うんですが、その後の展開を見ているとちょっとその解釈に疑問の点があります。

<<レコードメーカは、本来LPレコードのマスタリングのために作ったマスターを、そのままCD化してしまったのです。これはLPメディアに当てはめるためのイコライジングやリミッター処理が行われておりCDで再生すると、とてもぎらぎらしてきつい音になります。これがオーディオ愛好家の間でアンチCD派を作る要因にもなり、今日そうしたマスタリングが行われなくなったにも関わらずそうした意見が聞かれる
素地になったのです。>>


ここの解釈ですが、LPレコードのマスタリングのために作ったマスターテープもレコーダー出力は周波数特性に関してはイコライジング済みでフラットなんではないでしょうか? ここで言っているのはS/N 比の周波数依存性がLP向けに作ってあるので(つまりテープ録音の際のプリ/デ・エンファシスの仕様がLP向けになっている)そのままCD化するとまずいということではないでしょうか?

どうも、イコライジングしていない出力をそのままCD化したと解釈された発言があるようなんですが?

Re: マスターテープのエンファシス特性 投稿者:HD 投稿日:2007年 5月21日(月)15時57分16秒
志賀さん, 皆さん:

『◆第30章 6. CD のマスタリング (p.448)

<<CDの特性は、フラットな特性をしている点にあります。そのため磁気テープやLPレコードで見られたようなプリ/デエンファシンスと言った加工は必要ありません。基本的にはオリジナルの特性が手を加えずにそのまま記録できるメディアであるといえます。しかし、ユーザーオプションで、10dbのプリエンファシスが選択できその場合は信号の中にその有無がフラグとして立ち、再生時には自動的にデ・エンファシスが働きます。現実には、これを使用しないというのがマスタリング・エンジニアの共通の考え方です。』>>

の記述(用語の使い方)と、

<<レコードメーカは、本来LPレコードのマスタリングのために作ったマスターを、そのままCD化してしまったのです。これはLPメディアに当てはめるためのイコライジングやリミッター処理が行われておりCDで再生すると、とてもぎらぎらしてきつい音になります。これがオーディオ愛好家の間でアンチCD派を作る要因にもなり、今日そうしたマスタリングが行われなくなったにも関わらずそうした意見が聞かれる素地になったのです。>>

が、解釈に混乱を生じているのではないでしょうか? 尤もプリ・エンファシスもイコライジングの内に入るかもしれませんが。

再度読んで見ると「ユーザーオプション」とはリスナーではなくCD製作側のオプションと思われます。初期のCDにはプリ・エンファシスのかかったのが多かったようですが、CDのTOCにエンファシスの有無を特定するコードが入っており、再生時にはプレーヤがこれを検出して自動的にデ・エンファシスをやる、やらないを選択すると言う事です。

ですから、LPカッティングのために低域を下げ、高域をあげるというイコライジングをやる前の所謂マスターテープにもいろいろあるかと思いますが、志賀さんが言われるように,

<ここで言っているのはS/N 比の周波数依存性がLP向けに作ってあるので(つまりテープ録音の際のプリ/デ・エンファシスの仕様がLP向けになっている)そのままCD化するとまずいということではないでしょうか?>

だと思います。 LPカッティングの為のイコライジングでCDを作ったら低域は出ない、高域強調で聞けたものでは無いはずですね。

Re2: マスターテープのエンファシス特性 投稿者:志賀 投稿日:2007年 5月21日(月)21時15分58秒
HD さん、皆さん:

<・・・・・・・・ 尤もプリ・エンファシスもイコライジングの内に入るかもしれませんが。>

そのようですね。実は先のレスで「イコライズ済」という言葉を、デ・エンファシスで元のフラットのf特に戻した状態という意味で使っていましたが、業界用語ではもっと広く、f特を変化させることを一般に「イコライズ」すると言うようですね。誤解を与えたかもしれません。

<<ここで言っているのはS/N 比の周波数依存性がLP向けに作ってあるので(つまりテープ録音の際のプリ/デ・エンファシスの仕様がLP向けになっている)そのままCD化するとまずいということではないでしょうか?>>

<だと思います。 LPカッティングの為のイコライジングでCDを作ったら低域は出ない、高域強調で聞けたものでは無いはずですね。>

はい。そのことを言いたかったわけです。

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