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量子化歪みは検知出来る?

CDなどで音声データをデジタル化すると本来なめらかであった原波形が、いわばギザギザの波形として記録される。そのようすを右図に示すが、原波形とデジタル信号の差を量子化誤差とよび、これがデジタル音は悪いといわれる一因である。しかしこの図は説明のため極端化して書いたものであり、実際に使われているCDなどでは

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/aliasingnois.htm

ここにも書いた通り聴いてわかるような音質劣化を招くかはなはだ疑問である。以下は、これに関する議論のまとめであるが、本筋を外れた議論は省略し、要点のみを再録している。また、量子化ノイズが体験出来る音源を含むページも用意しました。

Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:NS 投稿日:2013年 9月30日(月)10時30分5秒    
RS さん

>> 量子化歪みはザーというホワイトノイズのようなノイズであり、サンプリング周波数やビット数、ΔΣの次数によって変わります。CDフォーマットなら、ハイレゾ音源より量子化歪が多いのでザーというノイズの付加量が多い為に・・・

> 高調波歪とホワイトノイズでは性質が異なるように思いますので、トランスの高調波歪と量子化歪を同一視することはできないのではないかと思います。

ホワイトノイズとは書いていません。トランスの高調波歪は信号があれば生じる変調でもあり、量子化歪も信号と相関がある変調であり、動的歪という大きな括りの中に入ります。量子化歪みは高調波歪みが入っています。アナログのテープヒスノイズはいかなるときも一定であるので異なりますし、AD、DA変換時にディザ付加やノイズシェーピングの手法を取るのは、量子化歪と信号との相関性をなくすというのが目的という事を思い出してください。

相関性を減少させた故、量子化によってできた高調波は減少しているグラフは読んだことがあります(下記p6)。

http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja257/jaja257.pdf



(DAの非直線性改善のため)

Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:志賀 投稿日:2013年10月 1日(火)06時00分22秒    
NSさん

横からですが、ちょっと気になるところがあるので。


> 相関性を減少させた故、量子化によってできた高調波は減少しているグラフは読んだことがあります(下記p6)。

>http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja257/jaja257.pdf

量子化歪みに関するこの資料、データもあり参考になりますね。ただ、定性的にはよくわかるんですが、量的に考えてみるとこれは最下位ビットで生ずる歪みですよね。CDの16bitでも −90dB 程度。ディザを加えることによりさらに小さく出来ますね(p.5 Fig.11)。通常の音量で聴いているとき、こんなに小さい歪みが人間に検知出来ますかね??

人間の歪み検知能力は耳のいい人でもせいぜい1%(−40dB)といわれているんですが。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/distortion.htm#feeling

主観に関することなので断言出来ませんが余りに差が大きすぎます。

あと、量子化歪みとして、折り返し歪みもありますね。こちらの寄与はどうなんでしょう? 私はこちらの方が問題だと思うんですが。

これに関しては、

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/aliasingnois.htm

に書いています。

Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:RS  投稿日:2013年10月 4日(金)08時36分56秒  
NSさん

NS> ホワイトノイズとは書いていません。

量子化歪みはザーというホワイトノイズのようなノイズでありと書かれています。「ホワイトノイズである」とは書かれていませんが、量子化歪は本当にホワイトノイズのように「ザー」と聴こえるのでしょうか?

NS> トランスの高調波歪は信号があれば生じる変調でもあり、量子化歪も信号と相関がある変調であり、動的歪という大きな括りの中に入ります。

なるほどそうですね。しかし、トランスによる高調波歪が「ザー」と聴こえたという話は聞いたことがありません。もし、量子化歪が「ザー」と聴こえるとしたら、性質の違う歪と考えた方が良いのではありませんか?

http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja257/jaja257.pdf

図11(a)などでは明確に高調波が出ています。しかし出方は調和的高調波のようです。調和的高調波は音色を変化させますが、「ザー」とは聴こえないように思うのですが。

NS> 相関性を減少させた故、量子化によってできた高調波は減少しているグラフは読んだことがあります(下記p6)。

ランダムノイズを加えることにより、高調波歪(規則的)をランダム化して、高調波歪を目立たなくしたということですね。

NS>また、基本周波数が低い分、量子化歪みによって生じた高調波歪み成分は、高い周波数の基本周波数に比べて可聴帯域内に数次の高調波が生じる可能性があります。

なるほど。高い周波数の高調波歪は可聴域の外に出てしまう、ということですね。解りました。

Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:NS 投稿日:2013年10月 4日(金)10時41分1秒  
RS さん

RS> 「ホワイトノイズである」とは書かれていませんが、量子化歪は本当にホワイトノイズのように「ザー」と聴こえるのでしょうか?

楽音をCDやDATのフォーマットで最大ピーク-60dB以下にして録音をし、ボリュームを上げて聞いてみてください。

量子化誤差 投稿者:志賀 投稿日:2013年10月 6日(日)22時05分45秒    
NSさん、RS さん、皆さん

以前の投稿

Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:志賀 投稿日:2013年10月 1日(火)06時00分22秒

を少し補足します。量子化誤差によるホワイトノイズと高調波歪みについてです。

http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja257/jaja257.pdf

この資料を読むと大振幅の音声信号(といっても通常の大きさ)で生じる量子化誤差はホワイトノイズとして現れ、その大きさは、フルビットの信号に対して、S/N比で表すと2ページめ右上の式

S/N=1.26+6.02n (nはビット数)(単位は dB)

で与えられるようです。ここで計算しているのは10bitADCなので62 dB と無視出来ないかもしれませんが、16bitだと97.6 dB となります。これではとてもノイズとしては聴こえないと思います。

ちなみに、皆さんお気づきだと思いますが、この式の第2項は 20Log(2^n) です。第一項はランダムネスを考慮した補正項のようです。

それから、LBS相当の超微小振幅のサイン波の場合は、矩形波として記録されるので、単純にDA変換すると、矩形波のフーリエ成分である奇数次の倍音が高調波として出力されます。


http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/groupdelay.htm

実際には完全な矩形波でないので偶数成分も混ざっていますね。ただその振幅はLSB相当なので16bit の場合フルビット信号に対して -96dB にすぎないので実際には通常の音楽信号に対して量子化誤差による高調波歪みはディザを入れなくとも無視出来る大きさといってもいいんではないでしょうか?

ちなみに、この資料でなぜ10bitADCを使っているかというと、16bitのLSB相当の信号は弱すぎて測定出来ないからだと思います。

最後に、NSさんがRS さんに対して提案された-60dB の微小信号を録音しボリュームを上げて聴いたらホワイトノイズが聴こえるはずだという実験、かなりやばいのではないですか? おそらくフルボリュームにしないと通常の音量では聴けないと思いますが、当然何らかのノイズは聴こえるでしょう。 しかし、うっかりして通常の信号が紛れ込むとスピーカーが飛んでしまいませんかね?


量子化誤差 投稿者:WT 投稿日:2013年10月 7日(月)10時13分24秒  
志賀さん

>-60dB の微小信号を録音しボリュームを上げて聴いたらホワイトノイズが聴こえるはずだという実験、かなりやばいのではないですか? 〜(中略)〜しかし、うっかりして通常の信号が紛れ込むとスピーカーが飛んでしまいませんかね?

確かにうっかりミスでスピーカーや鼓膜をぶっ飛ばす危険性はありますね。でもaudacityのような波形編集ソフトで、一度録音した音データを-60dBにレベルダウンして保存、ソフトウエア内で再び60dB増幅させれば通常のボリューム位置で-60dBの音を聞くことは出来ます。

Re: 量子化誤差 投稿者:志賀 投稿日:2013年10月 7日(月)20時11分19秒    
WTさん

なるほど、この手が使えますね。

この場合、16bitマシンだと、-60dB 以下の信号であれば上位10bit が使用されず、下位6bitのみに信号が入っているので、実質6bitマシンとして働くわけです。とするとS/N比は
S/N=20Log(2^6) ≒ 36dB

となり、最大振幅音を通常の音量に戻して聴けば量子化誤差はノイズとして聴こえるでしょうね。なにしろ、ノイズレベルだけを相対的に約1000倍にして聴くわけですから。


Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:RS  投稿日:2013年10月 8日(火)23時21分25秒  
NSさん

NS> 楽音をCDやDATのフォーマットで最大ピーク-60dB以下にして録音をし、ボリュームを上げて聞いてみてください

その実験をする環境にないのですが、仮にそうしてノイズが聴こえたとして、それが量子化雑音だということはどうやったら判るでしょうか?

Re: ハイレゾ音源に意味はないか 投稿者:RS  投稿日:2013年10月 8日(火)23時39分14秒  
NSさん

私が「量子化ノイズはザーと聴こえるか?」と疑問に思ったのは、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B6

の下の方にある6ビット量子化の音の量子化ノイズがホワイトノイズのようなブロードなスペクトルでなく線スペクトルに聴こえることからです。これはどう考えられますか?

Re: 量子化誤差 投稿者:RS  投稿日:2013年10月 9日(水)09時56分31秒  
志賀さん

> 16bitだと97.6 dB となります。これではとてもノイズとしては聴こえないと思います。

私もそう思います。

量子化ノイズはザーと聴こえるか 投稿者:WT 投稿日:2013年10月 9日(水)13時37分10秒    
RS さん、NSさん、志賀さん

>> 16bitだと97.6 dB となります。これではとてもノイズとしては聴こえないと思います。

 音楽信号がある中では、聴こえないと思います。

RS>量子化ノイズがホワイトノイズのようなブロードなスペクトルでなく線スペクトルに聴こえることからです。これはどう考えられますか?

正弦波で聴くと仰る通りだと思います。-80dBで作成した100Hzを60dB増幅させてFFTで見てみました。やはり2次と3次のノイズが観測できます。

ただし、音楽信号ですと当然周波数がアトランダムになりますから、量子化ノイズもその影響でアトランダムになり、連続スペクトル化するということではないでしょうか。実際に聞いてもホワイトノイズに近い音色です。


Re: 量子化ノイズはザーと聴こえるか 投稿者:RS  投稿日:2013年10月 9日(水)15時13分26秒  
WTさん

> 正弦波で聴くと仰る通りだと思います。ただし、音楽信号ですと当然周波数がアトランダムになりますから、量子化ノイズもその影響でアトランダムになり、連続スペクトル化するということではないでしょうか。

楽器の合奏も似たような状況なのですが、ホワイトノイズには聴こえません。なぜでしょう。

> 実際に聞いてもホワイトノイズに近い音色です。

そうなのですか。

Re: ハイレゾ音源に意味はないか
投稿者:志賀 投稿日:2013年10月 9日(水)17時04分34秒  
RS さん、WTさん

> 私が「量子化ノイズはザーと聴こえるか?」と疑問に思ったのは、

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%B6

> の下の方にある6ビット量子化の音の量子化ノイズがホワイトノイズのようなブロードなスペクトルでなく線スペクトルに聴こえることからです。これはどう考えられますか?

私も、RS さんが紹介されたWikipedia のサイン波を 6bit PCMで録音した音源を聴き、ダウンロードしてFFTにかけてみました。聴いた感じは基音とは別に、小さな音が聴こえますね。FFTで解析すると基音が500Hz で、-50dB 前後の奇数倍音がたくさん出ています。どうも、サイン波をヒストグラム化した波形の高調波も奇数倍音のようですね。


音楽信号の場合はホワイトノイズのように聴こえるというのは、以前紹介された資料

http://www.tij.co.jp/jp/lit/an/jaja257/jaja257.pdf

の最後の部分の付録に理由が書いてあり、WTさんも実体験されたようなのでさもありなんと思ったのですが? つまり、元々楽器の音は多くの高調波を含み、その高調波一つ一つがさらに量子化誤差による奇数倍音を伴うので、結果としてホワイトノイズのように聴こえると理解しました。ただし、完全なランダム信号ではないかもしれませんね。RS さんは実際に6bitにダウンコンバートした音源を聴いてみられたんでしょうか?

ちなみに、たまたまハイレゾ録音とCDに差が有るかという本来の話題について面白い報告を見つけました。これです。

http://drewdaniels.com/audible.pdf

上の論文、英文でもあるのでアブストラクトを意訳すると、

SACDおよびDVD Audio(24bit 192kHz) 、いわゆるハイレゾ再生装置のアナログ出力をCD規格である 16bit 44.1kHzに変換する電子回路を通した音と、元のハイレゾプレーヤーの出力音とをABX法によるブラインドテストで比較し有意差の有無を調べた。被験者は、プロの録音技術者、学生、オーディオマニアなどを含む。再生装置としては、コンデンサースピーカーを含むいわゆるハイエンドシステムを使った。テストは一年以上に渡って行なった。

その結果、通常の音量(85dB SPL)で聴く限り、どのような被験者に対しても、どのようなシステムを使っても、CD音質とハイレゾ音の差は検出されなかった。ただし、CD規格では非常に音量を上げた(+20dB)ときのみノイズが聴こえる場合がある。 


Re: 量子化ノイズはザーと聴こえるか
投稿者:RS  投稿日:2013年10月 9日(水)18時59分54秒  
WTさん

> 補足です。ホワイトノイズっぽく聞こえたと申したのは、 <中略> NSさんのご紹介の方法ですね。

解りました。ちょっと混乱していました。NSさんの方法での量子化ノイズと通常の聴取レベルでの量子化ノイズをごっちゃにしていました。

Re: 量子化ノイズはザーと聴こえるか
投稿者:WT 投稿日:2013年10月 9日(水)22時07分49秒  
RS さん

了解しました。たぶんそうだろうなァとは思っておりました。

>普通の楽器の合奏もNSさんの方法でやれば量子化ノイズが「ザー」と聴こえる、ということですね。

実際に聴いて頂くのが一番なんですが、楽曲によってノイズの質が変わるのも面白いところです。私が試した曲では、「ザー」というよりも「サー」もしくは「シー」に近く、カセットテープのヒスノイズを少し荒くしたような印象でした。

Re: 量子化ノイズはザーと聴こえるか 投稿者:RS  投稿日:2013年10月10日(木)14時02分36秒  
WTさん

> 楽曲によってノイズの質が変わるのも面白いところです。

細かい所に拘って済みませんが、これは、「楽曲によって」ですか?一つの楽曲にも複雑に楽器が重なった所やソロに近いところなどあると思いますが、そのようなソースの違いの影響はどうなのでしょう。

Re: 量子化ノイズはザーと聴こえるか
投稿者:WT 投稿日:2013年10月10日(木)19時13分18秒  
RS さん

ちょっと説明不足でした。察しておられると思いますが、厳密には曲中の楽器の数や音程によって、です。

ピアノソロなどは、静かな所では線スペクトルのノイズの感じに近く、早いパッセージのところではテープヒスノイズに近い感じに変化しました。ポップスのように曲中で楽器があまり変わらないような物はノイズの質もあまり変化しませんでした。

 音を言葉で表現するのは難しいですし、言葉から音を想像するのも難しいです。

audacityというフリーの波形編集ソフトがあればNSさんご提案の実験は簡単にできます。私も何度か使ってみましたが、安心して使えるソフトウエアです。

この波形編集ソフトとwavespectraというフリーのFFTソフトがあると、いろいろな音の実験が簡単に出来て面白いですよ。

http://audacity.sourceforge.net/?lang=ja

http://www.ne.jp/asahi/fa/efu/soft/ws/ws.html

ということで、やはり実際に聴くのが早いので、これらのソフトを使って音源を作ってみました。その周波数スペクトルと共に別ページにアップしました。ご覧下さい。

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