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電気信号の伝わる速さ

電気信号が伝わる早さ(Re: 銅線の純度について再考) 投稿者:NB 投稿日:2012年 9月 6日(木)22時30分49秒

いま一つ疑問がわいてきました。すでに当ホームページのどこかで解説済みかも知れませんが。導線中を電気信号が伝わる早さです。

細い中空の管の中を、空気によって音が伝わるような、注射器を押すようなイメージで考えますと、電池が1個入った回路のを閉じた際、導線の一番遠い位置(導線の長手方向の中間)の電子が一番最後に移動し始めると思いますが、

1)電気抵抗の大きい物質の電子は動きにくい。
2)導線の端の電子が、電圧をかけた事により移動して、そのことで、次の電子がマイナス同士で反発しあって移動する。

このように考えると、電気抵抗の大きな材質の物は電気信号の伝わる早さが遅い、という結論になります。同じ材質で太さが違ったり、不純物があって云々、と言うことではありません。

さらに、かける電圧の大小で信号の伝わる早さが変わる、若しくは伝わらない。こういったことは起こらないのでしょうか?

半導体では、あたりまえに起こりますね。

具体的には、Ag,Cu,Au,Al このクラスは変わらない、変わってもオーデイオ帯域では問題なし。

Sn、Ni、Fe、Pb、Pt このクラスは、微小電圧になると影響あり。

こういった、結論にならないのでしょうか?

Re 電気信号が伝わる早さ 投稿者:志賀 投稿日:2012年 9月 7日(金)05時58分11秒
NB さん

> いま一つ疑問がわいてきました。すでに当ホームページのどこかで解説済みかも知れませんが。導線中を電気信号が伝わる早さです。

電気の伝わる速さについては

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/velocity.htm

ここで解説しています。だいぶ誤解されているようですよ。

半導体の場合も基本的に同じですが、粒子速度は金属の場合はフェルミ速度できわめて高速ですが、半導体の場合はドリフト速度でかなり遅くなります。

ただし、解説に書いたように、粒子速度そのものは電気の伝わる速さではありません。あくまで電場の伝わる速さが電気の伝わる速さです。

また、ケーブルを伝わる信号の速さとなると、少し別のことを考える必要があります。すなわち、ケーブルの電気抵抗、インダクタンス、線間の静電容量が電流の変化率、すなわち信号伝搬の周波数特性に影響します。これはあくまで電磁気学に従うわけで抵抗値を除いて材質には関係ありません。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/Audio.htm#Cable

ここに書いた通りです。

それから、半導体デバイスのスルーレート(周波数特性)はそれ以外にキャリア濃度の変化が関係するので少し複雑です。結果的には、アンプの周波数特性を決める要因になりますがオーディオ周波数では十分高速だと思います。

電気信号の伝わり方? 投稿者:NB 投稿日:2012年 9月 8日(土)18時40分18秒 こんばんは、
志賀様、

また書き込ませてもらいました。

最初に、小生は、電磁気学、量子力学などの専門家ではありませんし、学生時代に、この手の専門の講義も受けてません、仕事で金属を扱っていますが、時々書店で雑誌Newtonなどを買って読んでいる、科学、音楽好きです。

さて、電位の変化が伝わる早さ、-----光速。

電位(電場)の変化→電磁波によって伝わる。 光速で伝わるのは、真空中での早さだと考えます。

たとえば、光ケーブル中を伝わる光信号の早さは?

光速ではありませんね。屈折率の分だけ遅くなります。(高校のころ、遅くなるから屈折すると習いました)(ケーブル内で反射を繰り返し行路が長くなることは無視してます)

この場合、ケーブル内に入射した光(可視光)が中性子や硬X−線のように、そのままケーブル内を通過してるのでしょうか? X-線なら光速で通過するのでしょう。

入射→最初のSiO2の結合電子?と影響しあう→2つ目の結合電子と影響...→.....→光ケーブルから出る。こういった経路で光速が減速している、若しくは、そのままケーブル中で光波が伝わっているのではない、ケーブル中では入射した光は別物になって、ケーブル中を伝わっている。ケーブルからでる際に元の光に戻る。

こんな風に考えたのです。

導線中を電位が伝わる場合、微弱な音声信号の場合、電位の変化による自由電子の平均移動量が原子間隔以内の場合、この場合ケーブル末端で音声信号は電位の変化で届いているが電力としては取り出せない小さなレベル。この場合、光速の60〜100%ぐらいで伝わる。上記の光とよく似た考えです。

次に、通常の音声信号の場合、電流値は1Aとします(8V×1A=8W)、

この場合、断面 1mm2の銅線の場合、1kHzの信号の場合、75μm/1000Hz/2=32.5nm、原子100個分ぐらいの範囲で、(ざっとした計算ですみません)自由電子が往復移動するかと思います。この場合電位の変化が伝わったというより、電力が伝わったことになりますね。この電力の伝わる速度が興味の対象になります。

導線中(自由電子がいっぱい在る固体金属の固まり)を電位が(電磁波、音波程度の振動数)が通過する際、自由電子を無視して(すり抜けて)通過することはあるのでしょうか。最初の自由電子に電位の変化が吸収される、とすれば、
まず最初の自由電子に電位が伝わる→1つ目の電子が移動→2つ目の電子が1つ目の電子のマイナスの反発を受けて移動→.......→導線の末端の電子が移動して電位(電力)が伝わる、と単純に考えました。

電力が伝わる場合に、導線の末端で信号を電力として取り出す場合、上記の場合原子100個分ぐらいの厚みに含まれる自由電子が、往復移動する必要があるかと思います。10kHzでは10個分です。10kHzで電流値が0.1A(0.8V×0.1A=0.06w)(夜間静かに聴いている音量)の場合、1個分に。

一方、自由電子はフェルミ速度(1600km/秒)で動き回っているということですが、1本の長い銅線(たとえば東京ー九州間の電話線は、800kmとして)を1秒間に1回往復しているわけではありませんね。せいぜいミクロン〜ナノ レベルの範囲(原子1000〜10000個)で高速で往復してるというより、回転してると考えます。

導体の材質が良導体(Cu)の場合、この自由に動き回れる範囲が、ミクロンレベルでも、不良導体 Pb、Sn、Niなどの場合この範囲が狭くなっていると考えました。一方、絶縁体では、ナノメーター以下(結合電子軌道)で高速回転してると。

ここで、仮に不良導体の、電子が動き回れる範囲が50nmだった場合、音量、高音低音、によって、音声電気信号により電子が移動する距離と、自由電子が通常動き回っている範囲とが、シンクロする事態が発生するのではないかと考えました。今ある、自由行動範囲から、明らかに外の部分に電子が移動する際には、特別にエネルギーが必要になり、遅れる、伝わりにくいなど。

長々と書いてしまいましたが、根本的に、私の思考方法に無理があるのかも。仮定と、私の空論ばかりが先行してますが、正直なところ、論より証拠で、導線の材質と電圧周波数を変えて、信号の伝わる早さと電力を測定した、実験結果があれば知りたいです。こんな疑問は、電磁気学などの専門領域では、ばかばかしくて誰も実験してないのでしょうか?

リスニングテストがあればなお楽しいですが。

Re: 電気信号の伝わり方? 投稿者:KZM 投稿日:2012年 9月 8日(土)20時08分35秒NB さん

> こんな風に考えたのです。・・・

金属中の電磁相互作用を本質的に捉えるには、通常の量子力学を超えた場の理論という考え方が最低限必要です。
それでも近似解しか得られません。

しかし、電磁相互作用の振舞が厳密に書き下せていないことと、電圧や電流というマクロな量で記述するエレクトロニクスの正当性にはあまり関係がなく、電子回路やケーブルの議論で大切なのは後者です。銅線の構造云々で信号が変わるかは電圧や電流の振舞で評価すればよいし、電磁相互作用について考えたければ場の量子論を学んでみてはいかがでしょうか。

Re: 電気信号の伝わり方? 投稿者:NB 投稿日:2012年 9月 8日(土)21時13分7秒
KZM さん、書き込んでくださった皆さん。

ありがとうございます。一息ついて考えて見ます。

Re: 電気信号の伝わり方? 投稿者:志賀 投稿日:2012年 9月 9日(日)06時11分42秒
NB さん

こういう基本的な問題を掲示板で説明するのはちょっと難しいですね。 NB さんの独自な解釈はいろいろ無理があります。

まず、電線を伝わる信号の速さなどはマクロ理論であるマクスウエルの方程式で正確に求めることができます。これをミクロのイメージで説明しようとすればかえって混乱を招きます。

最初に音波の例を出されましたが音波の伝搬は気体を弾性体と考えニュートン方程式から求めれば簡単に音速が導けます。これを気体分子がぶつかりながら圧力が伝わっていくとして計算しないですね。音波の波長が平均粒子間距離より長ければこれで十分です。全ての現象をミクロのレベルまでさかのぼって説明する必要は無いと言うことです。やれないことはないでしょうが問題を難しくするだけです。そもそも、マクスウエルが電磁気学の基礎を築いたとき電気が電子で伝わるということは分っていませんでした。

とりあえず、マクスウエルの方程式からは電磁波の伝搬する速度は v=1/√(εμ)となります。真空中では真空の誘電率と透磁率を使えばいわゆる光速になります。物質中では誘電率が真空中より大きいので伝搬速度が遅くなります。

2本の平行導線を交流電流が伝わる速さは、


http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/coaxialcable.htm

ここで説明している分布定数回路理論を使えば、上の電磁波の伝わる速さと同じになります。当然、平行線が誘電体で覆われおれば光速より遅くなります。ただし、これを説明すのはな簡単ではありません。なお、電磁波の速度は真空中では波長に依存しませんが物質中では誘電率が周波数に依存するので変化します。これには導体の種類は関係ありません。全て平行2線のL,C,R で決まります。

ただ、物質の抵抗率を求める場合は

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/velocity.htm

ここにも書いたようにミクロな視点が必要です。このとき、個々の電子の速度はフェルミ速度と考えていいですが、方向はばらばらです。(NB さんは電子の平均移動速度と個々の電子の速度を混同しておられます)

結果を示すと、金属の抵抗率は、ρ=m/ne^2τ で与えられます。nは電子密度、τは平均衝突時間です。平均自由行程(電子が不純物などに衝突しないで飛翔する距離。銅の場合、室温では電流の大小や周波数に関係なく約40 nm となります。)で表せば、l=v×τとなるので、lとvでも求められます。ただし、信号伝搬速度はやはりマクスウエル理論で説明すべきで抵抗率さえ分ればその原因にさかのぼる必要はありません。

それと、物質中の電子の運動については当然量子力学でないと記述できません。失礼ながら、NB さんの書いておられることを見るとちゃんと理解しておられるとは思えないですね。

ということで、NB さん独自の見解について、これ以上のお付き合いするのはご容赦願います。あとはご自分で勉強して下さい。ちなみに、「材料科学者のための電磁気学」という本もあります。


Re: 電気信号の伝わり方? 投稿者:NB 投稿日:2012年 9月 9日(日)11時26分14秒
志賀様へ

私の、独自の間違いだらけの、無理のある見解に対して、丁寧に返答していただき、
本当にありがとうございました。

長いケーブルの過渡特性 投稿者:志賀 投稿日:2012年 9月17日(月)16時17分19秒
NBさん、皆さん

電気の伝わる速さの話題をまとめるに当たって、少し別の観点から説明を加えておきます。

http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/velocity.htm

このページの2つ目の図の(a)直流回路を考えます。手元に電源とスイッチが有り、長いケーブルを隔てて先端に負荷抵抗(R 例えばスピーカーのボイスコイル)がある場合スイッチを入れた瞬間から負荷抵抗の両端にどのように電圧が発生するかという問題です。

ケーブルには抵抗(r)、自己インダクタンス(L)、線間容量(C)があるので、これを簡単な等価回路で表すと添付図の(a)となります。(正確には、これらの成分はケーブルの全長にわたって分布するので分布定数回路のモデル


http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/coaxialcable.htm

の方がより正確ですが、ここでは集中定数回路で考えます)

下図(a)のV1は電源に近い場所の電圧変化です。スイッチを入れた瞬間に電池の電圧V0となります。 一方、V2が先端の負荷抵抗の両端の電圧です。

下図(b)はV1,V2の時間変化を示します。V2は冲後に立ち上がり始め、τ時間後にほぼV0の半分の電圧まで上昇します。

凾狽ェ電気(正確には電場の)伝わる時間で、光速で伝わります。従って、100m先で約0.3μ秒の遅れです。一方、τの方は、Cの影響を無視しても、100mのケーブルでは30μ秒、程度の立ち上がり時間となり約2桁大きな値となります。

電源が交流だと、V2の電圧が十分成長しない前に電源電圧が下がるので、先端での交流電圧の振幅が減少します。これが、ケーブルの自己インダクタンスによる高域減衰のメカニズムです。上の例では、周波数にすると約30kHz なのでこの辺りから減衰が強くなります。これは、


http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/cableexp.htm

ここで示した実測値ともほぼ合っています。

ということで、せいぜい10m程度のオーディオケーブルでは信号の遅れや可聴周波数帯での減衰は問題になりません。


なお、高域減衰の原因としてはこのほか表皮効果がありますが、これが顕著になるのはやはり可聴周波数帶より高い周波数であり、かつケーブルの長さによらないのでここでは取り上げません。




Re: 長いケーブルの過渡特性 投稿者:NB 投稿日:2012年 9月17日(月)19時38分43秒

志賀様、説明ありがとうございました。

まさしく、最後のグラフの意味するところが、小生の知りたかったところでした。

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