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音の良さとは? (大音量再生の是非)

議論のきっかけは最初の投稿「音の良さとは?」というタイトルで、投稿者はケーブルについての意見を言いたかったようですが、その後はNJさんの持論である大音量再生の話に移っていきました。この件については以前にも論じたことが有り、過去録のスピーカーあれこれにまとめられています。またこれに引き続きNHK-BS放送の音質について論じています。

音の良さとは? 投稿者:TKA 投稿日:2012年 2月12日(日)13時34分45秒

各メーカのオーディオに対する考えが科学的でないというのは、私もよく感じることがあります。

ただ、個人的には、「〜は音質には影響しない」と結論付けることには慎重であるべきと考えます(たとえばケーブルの線材など)。

というのも、人が感じる「音のよさ」が客観的に定義されておらず、明確な物理量と対応していない以上、電気のどのような特性が聴覚に影響を与えるかは定かではないからです。

たとえば、位相や周波数という概念自体、自由電子全体としての粗視的な振る舞いに過ぎず、ある意味、近似的なものと考えられます。本来であれば、電気の動きを完全に理解するには、自由電子一つ一つに量子力学的なアプローチを行う必要があるはずです。
実際にはそのようなことが不可能であるため、自由電子の粗視的な振る舞いが電気工学などによって定式化されているのだと思います。そうすると、工学的には無視されているような自由電子の特性が、聴覚上何らかの影響を与えている可能性は完全には否定できないと思います。

もちろん、以上のようなことは可能性としては低いですが、排除することはできないように思います。

Re: 音の良さとは? 投稿者:志賀 投稿日:2012年 2月14日(火)09時14分4秒
TKAさん

物事を科学の言葉で語るにはある程度数値的な裏付けが必要です。

例として挙げられた、電子の運動が位相や周波数に及ぼす影響を微視的観点から見積もると、純銅の室温での電子の緩和時間(電場を掛けてから電子流が定常速度に達する時間)は約10^(-14)sec 、周波数にすると 10^14 つまり100テラHz 程度でこれは光の領域です。 従って、せいぜい20kHz の可聴周波数帯では全く無視できる遅れしか生じません。これに対し、電子をマクロにとらえる古典電磁気学が教える数mの平行導線の自己インダクタンスによって生じる位相遅れは


http://www.ne.jp/asahi/shiga/home/MyRoom/Audio.htm#inductance

ここに書いたように超音波領域では無視できない値になります。すなわち、高周波領域も含め、通常の電気機器に使用するケーブルの特性は古典電磁気学で十分正確に理解出来るといういうことです。

言い換えれば、
「実際にはそのようなことが不可能であるため、自由電子の粗視的な振る舞いが電気工学などによって定式化されているのだと思います。」でなく「その必要がない」という数値的な裏付けがあるからです。


RE:TKAさん 投稿者:NJ 投稿日:2012年 2月12日(日)20時06分52秒

私は、音の良し悪しについて、一般的な評価は信用していないのです。不幸なことですね・・・・。と考えるのは、次の理由によるものです。

1.殆どのスピーカは信用出来ない。理由は色々ありますが、例えばタイムアラインメントがいい加減であります。同一のフロントパネルにウーファーからツイータまで平面に並んでいるようなものは論外です。それぞれのユニットから発生する音波の時間差は、電気回路では調整不能で、40年近く前にTECHNICSが発表したスピーカSB-7000のように、各ユニットを軸上少しづつ位置をずらしたような配置にする必要があり、現代のスピーカではB&Wほか少数のメーカーしかやっておりません。つまり造りやすさを優先して厳密な音の良さは忘却されております。このように、或るレベル以上に事柄を追求すると、途端に分厚い壁にぶち当たるのです。

 当方は自作のスピーカで、デジタルチャンデバ(各CHディレーとオートアラインメント機能が付いています)でチャネルアンプシステムとしてタイムアラインメントを整合していますが、整合の前と後では音の精緻さに格段の差があります。しかしこのような方法を採るのは大変で、電源からして大仕掛けになり、しかも大変時間と労力が必要です。しかしこの様な努力をしてシステムを組み上げても、後に述べるような事柄のためその苦労は報いられないのです。

2.室内音場処理の問題が有ります。私は既に5年以上この問題に取り組んでおりますが、未だにすっきりと致しません。犯人は絞られてきて、左右の壁間の定在波38.6Hzなのですが、このような低周波はなかなか退治できないのです。ましてや音場処理を行わない普通のリビングなどにポンとおいたままの状態で良い音を期待するのはナンセンス、オーナーがそれでも良い音と思っているとすれば、それは満足しているのではなく、これ以上は無理だ、と自分を納得させているに過ぎないと思います。

3.耳のラウドネス特性があります。嘗てはプリにラウドネスコントロールが付いていましたが、今のアンプには見あたりません、どころかトーンコントロールさえ無いものが多い。ラウドネスコントロールでも不十分で、結局実演大の音量で聴くしかない。我が家は遮音工事を施して実演大の音量で聴いております。聴取位置で最大110dB、これを発生させるためのスピーカ最大音圧をベラネックの式で計算したら、スピーカ前1mのところで何と120dB、こんな音量が可能なスピーカは殆ど無く、あっても最低1,000万円近いです。よって私はスピーカを自作しました。

.最後に一番の問題は、ソフトに良いものがないと言うこと。家庭で普通の音量で聴いている分には問題ないとは思いますが、実演大で聞くといっぱいボロが見え、何百枚かあるCD,SACD,DVD,Blu-Rayのうち、まあまあなのは僅かです。市販のソフトよりNHKBSのオーケストラライヴなどの放送の方がまともですが、それでも次のような問題が有ります。

@.最大音量がコンプレッサーで圧縮されているらしく、実演に比べインパクトが弱い。
A.ソロの音量が概してオケよりクロズアップされており、小音量で聴く分には良いのだろうが、実演大音量で聴くと極めて不自然。

5.結局、如何に自分の装置を良くしても、社会認識として実演大音量で聴く(これをしないかぎり高忠実度再生とは言い難いと私は思っています)のは例外的で、一般的な小音量聴取向けのソフトしかないから、本当の「良い音」ないし「高忠実度再生」は為しがたい、と考え、オーディオからは遠ざかる傾向にあり、もっぱらサントリーホールとか、みなとみらいに通っております。

Re: RE:TKAさん 投稿者:TTB 投稿日:2012年 2月13日(月)15時28分55秒
NJさん

その人の最適と思える音量はまちまちと思います。私は、オーケストラものをよく聞きますが、測ったことはありませんが、たいした音量ではないと思います。

> 聴取位置で最大110dB

実際のオーケストラの最大音量はそのくらいあるらしいですね。ただ、どんなオケのどんな会場のどこで測ったのでしょうか? 私の経験した最大音量は(勿論測ってはいませんが)、ムーティ指揮のフィアデルフィア管でした。会場は横浜の県民ホールの2階、曲は幻想交響曲、4,5楽章で頭の中が真っ白になりました。。。たぶん私のSPではいくら頑張っても、そんな音量は出ないと思います。

でも、ほんとにそんな音量で聴いたら楽音といえども確実に難聴になると思いますが、、、、 大丈夫ですか??

Re: RE:TKAさん 投稿者:NS 投稿日:2012年 2月13日(月)15時56分23秒
TTBさん

> でも、ほんとにそんな音量で聴いたら楽音といえども確実に難聴になると思いますが、、、、  大丈夫ですか??

非圧縮音源ならば問題はないと思います。ただし、オケの団員や指揮者は?です。

NJ様。

BSのクラッシックの音声は圧縮しまくりです。ピークはつぶしまくっています。理由は放送法のため、ダイナミックレンジは大きくできないようです。

Re:音の良し悪
し 投稿者:NJ 投稿日:2012年 2月13日(月)16時52分37秒
TTBさん

>実際のオーケストラの最大音量はそのくらいあるらしいですね。ただ、どんなオケのどんな会場のどこで測ったのでしょうか?

>私の経験した最大音量は(勿論測ってはいませんが)、ムーティ指揮のフィアデルフィア管でした。会場は横浜の県民ホールの2階、曲は幻想交響曲、4,5楽章で頭の中が真っ白になりました。。。たぶん私のSPではいくら頑張っても、そんな音量は出ないと思います。


Ans

元NHK技研、NJ平太郎氏著「ハイファイスピーカ=昭和43年日本放送出版協会」に、音源の分析として色々データがあり、指揮者後方2m、頭上3.9mの位置にあるマイクの音圧が最大112dB(チャイコウスキ交響曲第六番=岩城宏之&N響)とあり、客席では数dB下がるでしょう(加銅鉄平著、書名は何だったっけ?)から、余裕を見て110dBとしました。会場については記載がありません。

測定時点がかなり昔なので、その後同様の測定を行ったかNHKに問い合わせたところ、デジタルになってからはそのようなデータは必要なくなったのでそれ以降は測定していない、ということでした。他に文献もなく、旧いデータですがこれを使っています。

我が家の実測では、聴取位置で108dB(DVD=ワグナー、楽劇パルジファル第二幕冒頭の魔王クリングゾルの城の場面)です。まあ、このDVDで実演大の音量はこんなものかとボリウムを回して最大音量らしきところを測った結果です。ストラビンスキやR.シュトラウスなどはもっと大きいでしょう。

>でも、ほんとにそんな音量で聴いたら楽音といえども確実に難聴になると思いますが、、、、
大丈夫ですか??


Ans
最大110dBといっても時間的には極僅かで(時間率1%以下)、平均音圧(実効値)は85dB前後です。ご心配には及びません。

NSさん

>BSのクラッシックの音声は圧縮しまくりです。ピークはつぶしまくっています。

Ans
私がNHKに照会した返答もそうでした。但し、圧縮を始めるレベル及び圧縮の度合いはミキサーの判断に委ねられているようで、ミキサーの感性に支配されているようです。不自然感が大きくないのは、ミキサーが楽曲をよく勉強しているからだと思います。

Re: RE:TKAさん 投稿者:TTB 投稿日:2012年 2月13日(月)19時47分14秒
NSさん

> 非圧縮音源ならば問題はないと思います。

NJさんも書かれているように、瞬時のピークで110dBだから問題ないということですね。なるほど。

> ただし、オケの団員や指揮者は?です。

私はその昔、アマオケでクラリネットを吹いていました。背後の金管や打楽器のffの轟音はすごかった。特にシンバルの一撃は、耳の芯が痛くなりました。だから、未だに大音量は苦手なのかなぁ。。。

以前、ベルリンフィルの元ティンパニ奏者の本を読んだことがあります。カラヤンが大音量をいつも要求するので、ついには耳鳴りが消えなくなった、とありました。たとえば、カラヤンの第九の一楽章中ほどのティンパニの連打はすごいで。不確かな記憶ですが、実演ではこの箇所、ティンパニを二台使ったこともあるとか。

うろ覚えですが。オケなどの最大音量 投稿者:NS 投稿日:2012年 2月13日(月)20時55分3秒
TTBさん

> NJさんも書かれているように、瞬時のピークで110dBだから問題ないということですね。なるほど。

わたしは騒音計を持ち出して測定した事があります。ただし、70人くらいの規模のブラスバンドです。ホールの大きさは約2000人規模です。測定場所は吊りマイクの直下。最前列の席から5番目。

チューニング時に一番大きなピーク値は約85dBSPL。そのときのレコーダーのピーク値は約-24dB。この時の演奏会のレコーダーの最大ピーク値は-2dBだったと思います。

最大音量は約110dBSPLと思って良いでしょう。

とにかくめいめいが勝手に楽器練習している時、知り合いにわたしの携帯電話を舞台で呼び鈴をならしてもらったら、盛んにティンパニーとバスドラムを鳴らしていたので聞こえませんでした。そのときの騒音計の値は90dBSPLを越えていました。

ここまで書いて思い出しましたが、リハ時にチェロの独奏を2mの距離で音量をはかった事がありましたが、80dBは越えていましたなあ。このチェロの独奏者はS記念オケのトップ奏者ですから、これぐらいの音量を出さねばなるまいて。と思いました。

Re:TTBさん 投稿者:NJ 投稿日:2012年 2月13日(月)23時02分47秒

>たとえば、カラヤンの第九の一楽章中ほどのティンパニの連打はすごい。

話しは飛びますが、クラシックの(画像付き)ソフトにロクなものがないという私の考え、こういう訳です。つまり新録音が少なく、嘗てのカラヤン、ベームなど旧いスタイルばかり。もう、うんざりです。

何故旧いスタイルが嫌か。実は5年ほど前、ハイティンク&ドレスデンが来て、サントリーホールでブラームスの交響曲第1番を聴きました。冒頭の導入部で、ティンパニの連打が凄かった。嘗てこんなの聴いたことがない。極めて新鮮、納得。その後来日したヤルヴィ&フランクフルト(オケはこれだったと思う?)もそうでした。成る程、当今本場ではこうなんだ。それに引き替え、ベームなどの古色蒼然さは・・・。

第二点。Bru-Rayでケント・ナガノのローエングリン。音は別として、コスチュームが・・・・。まるで帝政ドイツ・プロイセンの軍服で、感興をそぐこと著しい。あれはワグナー自らが台本を書き、実に巧妙に時代設定がなされている作品です。即ち時代が10世紀前半と限定され、話の筋もそれを外しては成立しない。10C当時、フリーセンは未だキリスト教化されておらず、だからオルトルートのような異教徒が居たのが話しのミソなのですが、19C風のコスチュウムで全てブチ壊し。

大体今のドイツの歌劇演出は奇を衒ったイカサマみたいなものばかり。大概NUDEが舞台上を走り回り、しかもそうする必然性はない。去年のバイロイトの「名歌手」、第三幕の懸賞の歌の場面でベックメッサーの歌の時に男女のNUDE登場。どう考えても必然性が無く、単にNUDEを登場させるために舞台に上げたに過ぎない。全くナンセンスと思いました。

経費節減のためかコスチウムも安っぽいし、昨今のドイツにはあきれ果てております。まともなのはメトロポリタンとロシアだけか。
 
そういうなかで、オケ作品について言えば、オザワ&サイトウキネンだけは敢闘してますねえ。どう思われます?

Re: TTBさん 投稿者:TTB 投稿日:2012年 2月14日(火)11時49分45秒
NJ さん

>ハイティンク&ドレスデンが来て、サントリーホールでブラームスの交響曲第1番を聴きました。

前にも書いたんですが、私が初めて生のオケを聴いたのは、はるか昔、高校生の時、森正指揮、東京都交響楽団によるブラームスの一番でした。そのとき、第一楽章序奏部で圧倒されました。今まで聞いていたのは、LPレコードを安物のプレーヤーで聞いていたわけですけど、歪っぽいスカスカな音、ところが実際の高弦の音はしっとり濡れていて、ffでも実に潤いのある音。「ああ、本物はこういう音なんだ、いつか僕もこういう音を再生装置から出してみたい。」これが私のオーディオの原点になりました。。。ホルンがとちりまくるのは参りましたが(笑)、今のオケはそんなことはないですよね。

私は映像ソフトはほとんど見ません、もっぱらCDです。しかし、やはり演奏仕様の変化は感じますね。もっともわかりやすいのがベートーヴェンの交響曲でしょうか。
以前はワーグナーに発した重厚長大が流行っていましたが、今は古楽器の影響でしょうか、テンポはスコアの指定に近く(つまり速い)、編成を小さくして、各声部の見通しをよくしている演奏が多いですね。スコア自体も最新の研究成果による最新版(ベーレンライター版)をうたっているものが増えています。

最近のCDでは、まずシャイ、ゲバントハスのもの、古いドイツのオケからは想像しにくい、速い「今様」なテンポで、ぐいぐい行きます。同じ、イタリアのトスカニーニ流のカンタービレに古楽器風テンポ。エネルギッシュでいいと思います。

そして、ワーグナー以来のドイツの流れに沿った最新のものといえばティーレマン、ウィーンフィルでしょうか。ゆったりとしたテンポで伝統の味か、ときおり独自の味付けを見せますが、どうなんでしょう、ドイツでは人気だそうです。思えば、ベートーヴェンの古楽器系アプローチって私の知る限り全部非ドイツ系ですよね(ガーディナー、ノリントン、クリヴィヌ、マッケラス、ジンマン等)。ドイツ人はやっぱりワーグナーの血か。

NHKBSの音質
投稿者:NJ 投稿日:2012年 2月14日(火)19時13分13秒
TTBさん、皆さん

NHK-BSの音質について、私なりのコメントをしたいと思います。その前に・・・・。

現在手持ちのソフト、アナログディスク、LD、CD、SACD、DVD(VやらAやら)、Blu-Rayなど数多くありますが、その中で「これはよい」と言えるのはほんの僅かです。僅か2枚。

1.EXTONのダイレクトカットSACD、「春の祭典」。友人から拝借して実演大の音量で再生しました。非常に良かったですが、驚いたことに第二トラック2分10秒あたりでバスドラムのffのとき、フロントウーファー用アンプ(A社製200W)がクリップするのです。試しに私のもの(ダイレクトカットでなく普通のSACD)でやってみても同じ。同曲はそのあと数回バスドラムのffでクリップしました。
 実は私はデジタルグライコを使っており、それにはオートGEQという機能があって、同じメーカーのマイクからピンクノイズを出してSPの特性を測定し、GEQ内蔵のマイクロプロセッサーで補正カーヴを演算して自動補正するもので、これによってf特をフラットにしております。その結果、100Hz以下で可成りの量の補正がなされ、それに引っ掛かってクリップしたのです。犯人はすぐ分かり、32Hzの補正を6dB下げてクリップしなくなりました。

念のため、EXTONに聞いたところ、弊社ではそのSACDに限らず、コンプレッサーの類は一切使用していないとの回答でした。兎も角実演大の音量で聴ける数少ないディスクです。

.NHKエンタープライズのBlu-Ray オザワ&サイトウキネンOrch ブラームス交響曲第二番ほか
 ブラームスですからアンプがクリップするような珍事は出来しませんが、ブラームスだけにオーケストレーションが極めて精緻で、各楽器群が色んな事をやっています。例えばオーケストラがfで全奏のとき、1stVが普通の弓遣いで弾き、2ndVがスタッカート、コントラバスがピッチカートと跳ね弓奏法、フルートがトリル、なんてのが随所に出てきます。これを聞き分け得る録音に出会ったことがなかった。私は録音テストをするときは総譜を見ながら複雑な構成の楽器群の音を聞き分けられるかチェックするのですが、このディスクは概ねOKでした。

今の所、実演大の音量での鑑賞に耐えるのはこの2枚のみ。

話題は以後「NHK-BSの音質について」に移っていきます引き続きご覧下さい。

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